すっごく面白い芝居を観た!
これは良かったよ〜〜!大当たりじゃない?
トーマス・ミドルトンWomen Beware Women
とにかくスタイリッシュな演出だ。舞台もワードローヴも。現代とまではいかない雰囲気で、それでいて中世宮廷の匂いをだしている。音楽もジャズ風。重厚でお洒落

余程イギリス文学や中世の演劇に通じてる人でない限りはほとんど聞いた事がないだろう、Thomas Middleton。私も実はイギリスに来てから初めて知った。シェイクスピアと同時期に活躍していた劇作家は他にもいる。クリストファー・マーロウ、ベン・ジョンソンン、ジョン・フォード、etc,,そう、シェイクスピアだけじゃないのだ

ミドルトンの芝居を初めて観たのは「The Changeling」だった。ジャコビアン悲劇の代表作という事だけど、なんだかドロドロの血みどろの凄い結末。この時代の作品、シェイクスピもそうだけどプロットとしては、恋愛(これは純愛と恋愛ゲームの2種類ある)、心変わり、裏切り、レイプ、復讐、近親相姦、権力、殺害、といったものが必ず出て来る。そして今回のWomen Beware Womenにも、これがぜ〜んぶ揃ってる

プロットの一つは実際に16世紀のトスカーナ大公の愛人になった女性がモデルになっている。(こちら身分の高い家に生まれたビアンカは平民の銀行家と恋におち、駆け落ちして結婚してしまう。夫の実家で義母と一緒に、仕事で出張に出る夫の留守を過ごす事になる。ところが夫が出張中に土地の権力者である大公にみそめられ、巧みな策におびき出されて無理矢理手込めにされてしまう。

もう一つのプロットは宮廷貴族の娘イザベラ。彼女は父親の命令で、どんな女の子でもこんな男は絶対にいや!と思うような頭の弱いおバカ青年と結婚させられる事になってしまう。自分の運命に嘆く彼女を慰める叔父のヒッポリトは、実は密かに彼女を女として想っているのだ。悲嘆に暮れる彼女を慰めるうち、とうとう胸の思いを告白してしまう。叔父の事を幼い時から慕い、心をゆるしてきたイザベラはショックで打ちのめされる。

この2つのプロットを繋ぐのが、ヒッポリトの姉で2度の結婚でどちらも夫に先立たれたリヴィア。リヴィアは無教養で不器用なビアンカの義母を巧みに自分の屋敷に呼び寄せ、密かに大公とビアンカを逢わせるべく策を講じる。手引きされてリヴィアの屋敷に連れて来られたビアンカは、リヴィアと義母がチェスに興じている間に大公に無理矢理奪われてしまう。

また弟であるヒッポリトが姪のイザベラを愛していると知ったリヴィアは、バカ息子との結婚話とヒッポリトの激白のショックで嘆くイザベラに、実は彼女は母親が不義をして生まれてしまった子で、ヒッポリトとは血のつながりはないのだと嘘をつく。そして表向きはバカ息子との結婚を承諾して、ヒッポリトを愛し合って良いのだと説得する。

無理矢理大公に囲われる事になったビアンカは、平民である夫との惨めな生活よりも大公との豪華な暮らしが自分にふさわしいと思い始める。そして次第に権力と財力のある大公を愛するようになっていく。一方父のいいつけに背く事もできなかったイザベラは、バカ息子との結婚を割り切って受け入れ、同時に叔父との禁断の関係も深まっていく。そして恋愛ゲームの糸を引いていた筈のリヴィアは、大公の元で働くようになったビアンカの夫を愛人にしてしまう。

ここまでの中での女達の描き方の見事さ。これが本によるものなのか、演出なのか・・・きっと両方のバランスが見事に噛み合っての出来なのだろう。長台詞もちっともくどくないし、ウィットに富んでいる。一場一場にユーモアがあり、それがとてもスタイリッシュな演出でセクシーだ

途中から、この芝居は今目の前にあるセットや衣装をすべて取り払ったテキストの状態で読んでみたいと思った。ラストは惨劇になる。大公の命令でビアンカの夫が殺され、その翌日は大公と彼女の結婚式となる。その宴の最中、すべての人物がそれぞれの思惑で復讐するべく相手の命を奪って行く。今回の舞台ではダンスのような振り付けで、回る舞台のそこここで殺害シーンが演じられる。これも見事な流れでドロドロ感なく見せている

どうやらかなり本を削った部分もあるらしい。ダラダラと無駄がなくリズム良く進んで行くのはそのためかもしれない。そういった削った部分も含めて素晴らしい演出だ。ハムレットより面白いわこれ!
是非台本として読みたい芝居だ。多分最期の幕は本来ならまた血みどろのドロドロになるはずなんだろうな。でもこの舞台にはこれが「お見事!」という仕上がりだった。

う〜ん、久しぶりに5つ星をあげる!
長台詞が退屈だったら寝ちゃうかも、、なん思ってた自分が嘘のよう。これは今年の作品の中でも上位にいくかも・・・