見つけもの @ そこかしこ

ちょっと見つけて嬉しい事、そこら辺にあって感動したもの、大好きなもの、沢山あるよね。

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最近はめっきりテレビを観る事も少なくなった。こちらのテレビで面白いドラマに巡り会える事はとても少ない。まず、日本のテレビ番組のように、時間枠で決まっていないからだ。いつ放映なのかを把握するのが難しくて、気付いたら見逃してしまったといった具合・・・

だからもっぱらDiscoveryとかNational Geographicとか、History Channnelを観る事が多くなってしまう。あ、あとFood Channnelもね。「事実は小説よりも奇なり」というのは本当で、犯罪の検証とか飛行機事故の原因解明とかといった番組が面白い

ただ、そのドキュメンタリーと呼ばれる番組の信憑性はどう判断すれば良いのだろうか、、?知らなかった事を知るというのは楽しいしエキサイティングだ。でも知らなかった事がどこまで正しく真実なのかは、元々知らなかった側としては知る由もない

何故こんな事を考えたかというと、先日テレビ放映された「The Cove」を観たからだ。The cove=入り江において秘密裏にイルカの大量殺戮が行われているという日本の小さな町を取り上げた去年のアカデミー賞受賞作だ。日本ではアカデミー授賞式のテレビ中継からドキュメンタリー部門がカットされ、インタビューされた科学者は「聞いていた趣旨と違う」と出演シーンのカットを要求し、何度が予定された映画公開は次々と延期/キャンセルになり、ようやく今月から順次に公開されはじめているらしい。(それでも全国一斉ロードショー!とはほど遠いとか)

この映画の内容の賛否両論を言い始めたらきりがない。こっちの普通とあっちの普通の違いは簡単には埋まらないからだ。年間に2万3千頭ものイルカが太地で殺されている、、、彼等がスパイ大作戦よろしく撮影したものだから、これは事実なのだろう。そしてその事をほとんどの日本人が知らないというのも事実。ただこの映画、そこから先が無いのだ。

のっけから「これがバレたら俺たちはマジで殺される」と言いながら大きなマスクと帽子で顔を隠して車で移動している極秘撮影隊。映画の作りが「秘密暴き」に傾いていて、深い問いかけが見えて来ない。「可愛い可愛いイルカ達をこんなに残酷に殺している」という事をやたら同情的に見せている。水銀の含有量の多いイルカ肉を食品として売っている、というのを水俣病と合わせて紹介しているけれど、同じ水銀でもイルカ肉と工場廃棄物ではなんだか比較するのがちぐはぐだ。

この事実をどこにどうぶつけて、どう対処しろと言いたいのかがはっきりしない映画で、正直期待していたよりも映画としても面白く無かった。「日本政府はこの事実を隠蔽している、日本国民も騙されている」と言いたいのか、だとしたら誰にそれを言いたいのか?日本の人に事実を知って欲しいというなら、日本で上映がされないような映画じゃ意味が無い。それとも世界で公開して話題にする事で、捕鯨業と合わせて「日本叩き」のプロパガンダにしたかったのか、、、?

そして日本側の対応もはっきりしない。真正面から映画を見せて、「これは違う!」と討論する構えがない。フタをして公開を先延ばし/限定にすればいいというわけじゃない。警察ぐるみで撮影隊を追い出そうとするシーンがサスペンスタッチで描かれていたけれど、太地町/日本側として理にかなう言い分があるならきちんと映画に対して抗議するべきだ。「臭い物にはフタをする」という日本御得意の逃げなのか・・・?

「こんなに残酷な事をして、その事実を隠蔽しているなんて酷すぎる、、可愛いイルカ達が可哀想、、、、」と涙して、胸を痛める人もいるのだろう。でも私はそれすらも感じなかった。確かに現実にカメラに収められた映像は衝撃的で一瞬言葉を無くす。でも次に思ったのは、映画制作側/日本側両方に対しての「だから、、何?」だった。いったいどうしろって言いたいの?

イルカを殺すのを止めろと言われたら、日本側(というよりこの場合は太地町のみなんだけどね、他の日本人は知らないんだから)は何故イルカを殺さなければならないのかを、きちんと納得出来るように説明できなければいけない。できないなら、殺さなくて良い方法を提示して理解を求めるべきだ。本当に人体に害が出る程の水銀入りの肉が市場に出回っているのか、消費者団体は徹底的に調査して、この映画の裏付けを取るべきだ。もしそれが誇張ならばきちんと反論して映画を訴えればいい

「なんだかここから何処へも向かって行かないような作りの映画だなあ〜」というのが正直な感想。これがアカデミーだけでなくいろんな映画祭で賞を獲ったというのもなんだか腑に落ちない。他にドキュメンタリー映画は創られなかったのか、、? 

しっくりしない映画。日本公開での反応はいかかでしょう??


良い映画を観た。うん、これは良いね。Into The Wild(原作題=「荒野へ」)

これが公開されたのは去年の終わり頃。見つけたのは彼で、映画館の近日公開リストを観て「これきっと良いから観よう」と言ってきた。 監督はショーン・ペン。うちの彼は結構良いものを嗅ぎ分ける嗅覚がある。この良いものというのは必ずしも褒められてるものという意味でなく、私たち、とりわけ私がきっと気に入るだろうという種類の嗅覚だ。 彼が選んで奨めるもので期待はずれだった事はほとんどない。「旅をしながらアラスカの荒野に一人で生活・・・」という作品紹介は必ずしも私にはピンとこなかったのだけど、彼が乗り気になる事は滅多にないので「じゃあ観ようか」という事になった。

ところが直前になって上映時間が2時間半と知って彼が尻込みしてしまった。うちの彼は、2時間以上の映画と字幕付きの外国語映画を観る辛抱が無い、というちょっとした根性無しなのだ。 結局その時は観ないで終わってしまったのを、やっとDVDで観た。DVDならうちでゆっくり観られるから、一度に2時間半頑張らなくても良いしね。で、結局最期まで二人して一気に観てしまった。彼は珍しく途中で寝てしまう事もなく、トイレにだって行かなかったくらい。

実話を再現映画化したもので、クリス・マカンドレスという青年が、恵まれた家庭環境や学歴を放棄して一人旅に出ていろんな人たちと交流し、自身の夢だったアラスカの荒野での一人サバイバル生活に入っていった足跡を追っていく。原作本はこちら.

この映画は批評家から高い評価を得た反面、あまりポピュラーなヒットにならなかった。 映画館での上映も限られていたし、アカデミーでもいくつかノミネートされたけれど当たらず、、という感じだった。 でもこれはとても良い映画だと思う。 自然を撮ったスクリーンも奇麗だし、登場する人たちみんなにそれぞれクリス(アレックス)の人生に関わる意味があり、自分の目と耳と感触で生きるという事を知っていく青年の旅は、夢があり冒険であり、そして無知で残酷だ。

こういう映画を若者達に観てほしいと思う。ババ臭い意味じゃなくて
最近のイギリスでは毎日のようにナイフ殺人事件がおこって、先日も2日間で8人の若者がナイフによる喧嘩で命を落とした。 日本の秋葉原での事件にしてもそうだし、毎日バスの中で周りの迷惑を考えずに大きな音で携帯音楽をかけてる連中、ちょっとの事でつっかかって脅しをかける連中、そういった若い人たちに「この映画を2時間半観てみなよ」と言いたい。 観る辛抱もできないんじゃあ仕方ないけどね、、、救いようがないよ。

日本での公開が9月に決まったと聞いたので、一足先にお奨めします。けっして派手ではないけれど、この青年が見つけたかったものを、私たちは見つける事ができるのだろうか・・・?と考えてしまう。最期は本当に残念だ。この青年のストーリーにはもっと続きがあって欲しかった。 もっと何かを悟り、そしていつか自分から荒野を出て社会に戻り、その後の人生をどうやって生きていくのか・・・その続きこそが知りたかったのに・・・・

感動するというのとも少し違う。でも「良い映画を観たな」と思える一作 邦題はカタカナでイントゥ・ザ・ワイルドになるみたい。この秋機会があったら観に行ってみては、、?

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