昨日、レイフ(Ralph Fiennes)の映画を観た後考えた。

芝居を観に行く時はいつも先にプログラムを買う。でも開演前には開けない。
1幕を観て「あの人は・・?」と思った役者を幕間にプログラムでチェックする。
私が「上手いな、」「良いな」「凄いな」と思った役者さんの経歴にRADAの文字がある場合が多い。

Royal Academy of Dramatic Art という王立の演劇養成所は創立して100年以上経つ、イギリス屈指のエリート演劇養成所だ。 他にも、LAMDA、CSSD、Guildhall等、有名な養成所はいくつもあるし、West Endで活躍する人達は、皆一様にそういった場所でプロの俳優修行を積んできている。ただ、どうやら私が個人的に「良いな」と思う俳優達がRADA出身者である事が多いみたい。

じゃ、何がどうで「この人、、、?」って思うのかというと、はっきりと定義がある訳じゃないんです。 ミュージカルを観てピンときた人達もいれば、普通の現代もののプレイだったり、あるいはシェイクスピアみたいな古典劇だったり、思う人はいろいろです。

ビビアン・リー、ケネス・ブラナー、アントニー・ホプキンズ(彼の名前はアンニーです。アンニーではありません!)マイケル・ケイン、ロバート・リンゼイ、ピーター・オトウール,フィオナ・ショウ、ショーン・ビーン、ジョナサン・プライス、ジュリエット・スティーヴンソン、アラン・リックマン、etc,,,etc,,,,   こうやって並べてみると、クラシックに強い人が多いのかな・・・と気付く。

古典劇を、ちゃんと演じきる技術をしっかり持っている人が多い。 だから卒業後、RSCで名前を観たり、映画やテレビでもクラシックな芝居を演じて、光る事ができる人達。
例えば半分うとうとして眠りかけたような状態で観ていても、台詞がストーンと耳に入ってくる。一言一句がその場で書き取れる程はっきりと子音のひとつひとつまで解る。 そんな台詞の技術をちゃんと見せてくれる人達。

呼吸の使い方や声のコントロールがきちんとできない人が古典劇をやると、ひどい目にあう。 いくつかそういう悲惨な舞台も観た。膨大な台詞に溺れてしまってアップアップしながら台詞を言ってると、今度は身体がガチガチになって、棒立ち、酸欠のまま延々3時間もわめき続ける事になる。

まあ、そこまでひどくはないけど、、、と言いたい所だけれど、それを楽にこなして見せるのが役者の仕事なのだから。 舞台で役者が苦しんでるのがわかってしまうと、こっちも息苦しい数時間を過ごさなくちゃならない。

シェイクスピアなんかは、演出的にはかなり古典の域を脱してしまっている物も多く、台詞がちゃんと出てくれば、現代に近い感覚で演じられるパターンが増えてきているので、本来の古典的な芝居をきちっとやってくれる俳優を観るとホッとする。「ああ、この人できるな」と思うと安心して観ていられる。

2ヶ月位前だったかな、今までのいろんな「ハムレット」を集めて特集した番組があった。沢山の俳優達による様々なハムレット。「くずし過ぎだよ〜」と思うものから、正統派まで本当にさまざま。 年齢も23才から60近い俳優達が演じたハムレットを比べる番組。

チャーミングだったのがレイフ・ファインズ。王妃とのシーンは繊細で素敵だった。観たかったなあ〜彼のハムレット・・・!(戯れ言ですが、彼は王妃役をやった20才も年上の女優さんと9年間同棲してたのですよ・・・)

昔は、RADAはそのクラスの内容を全く外部に見せないと言われていた。入るだけでも競争率は60倍とも70倍とも言われ、入学が許されるまでに何度もオーディションと面接が行われる。 入れただけで、イギリス演劇界のエリート切符を手にしたようなものだ。ただ、その内容についてはほとんど知られていなかったのだけれど、最近は少し変ってきたのかもしれない。日本でも昨年、東京と金沢でRADAの講師によるワークショップがあったようだし。

何といってもびっくりしたのは、10年くらい前に始めた、「日本人のプロの俳優達のためのワークショップ」だ。何で? なんで日本なの・・・

ただでさえ入るのは狭き門なのに、英語がネイティヴに話せなかったらおはなしにならないのが当然なのに。わざわざ日本人のためのショートコースをRADAがやってくれるなんて??  それだけ日本には、基本的な訓練法を教えてくれる所が無いという事か・・・?それにしても、どうしてそんな事が実現したんだろう・・・?

何年か前に無くなってしまった、この日本人俳優の為のショートコースが今年から復活するみたい。 思うのは、藤原竜也君なんてマジでこういう所に参加すればいいのにな。秋にまたシェイクスピアを演るのだし。 プロの俳優対象っていう事で、オーディションが無い代わりに、本人を知る演出家からの推薦が応募条件という事なので、蜷川さんの推薦なら間違いないんじゃないのかなあ〜〜 滅多にないよね、こんな機会は。普通のRADAのコースには逆立ちしたって入れないんだから・・・・・

藤原竜也、24才、舞台経歴、「エレファントマン」「ハムレット」「ロミオとジュリエット」「オレステス」と並んでて、蜷川幸雄推薦だったら、まずOKなんじゃない? 1ヶ月で50万だし・・・? なんて、、、、

やっぱり俳優になる為の職業訓練システムが、日本には無さ過ぎるのが悲しい。 スタニスラフスキーシステムアレキサンダーテクニックといった、身体を演じるための媒体として訓練するっていう方式がもっと浸透して、プロの技術を持った名優がどんどん出て来て欲しいよね〜〜



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