見つけもの @ そこかしこ

ちょっと見つけて嬉しい事、そこら辺にあって感動したもの、大好きなもの、沢山あるよね。

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もう何年も前からずっと観たかったPunchdrunkというプロダクションチーム
彼等はいわゆるImmersive Theatre(イマーシヴ・シアター)と呼ばれる体験型の演劇を提供しているグループで、そのレベルの高さは定評があり、いつもチケットは即日完売状態で私も過去数回に渡って行きたくても行かれなかった。その演目もなかなか好奇心をそそる物ばかりで、私が最初に彼等の事を知って行きそびれた公演が「ファウスト」(ゲーテ)、その他にも「マルフィ公爵夫人」(ジョン・ウェブスター)「赤死病の仮面」(エドガー・アラン ポー)等、ちょっとソソラレル題材を持って来る。

体験型演劇は、いわゆる市街劇プロムナード劇と呼ばれるもので、劇場という舞台空間ではなくもっとオープンなスペース=役者と観客の仕切りラインの無い場所でおこなわれる演劇だ。パンチドランクのプロダクションは市街ではなく、いつもあるスペース/建物を使ってのプロムナード劇だ。昔のドックランドの造船所の倉庫とか、取り壊し予定のビルとか・・・今回使われたのはパディントン駅の隣にある元ロイヤルメールの集配所だった建物で、ここをなんと、ハリウッドの映画スタジオに変身させた。その名も「Temple Studio」。このロケーションはチケット購入時には明かされておらず、最近になって発表された。

毎公演の入場は10分ずらしで一時間かけて全員が入り、入場時間はチケットを取る時に自分で選ぶ事ができる。この日は日曜で5時からの一回公演。入場時間は最終が6時になっていた。私は初めてだし時間をかけて体験しないとコツがつかめないかもしれないと思ったのもあって最初の5時入場のチケットを取っていた。

観劇の前日にメールがきて、歩き回り易い靴で来る事、足場には留意しているものの、暗がりやスモーク等の効果演出もあり充分注意するようにとの注意書き、バッグ等の荷物は一切持って入れないので入り口でクロークに預ける事、観客は全員仮面を付ける事になるのでできればメガネよりコンタクトレンズが便利な事,、、等の注意事項が送られて来た。期待度一気に上昇

時間にベニューに着くと言われた通りまずバッグを預ける。普通の劇場のように開演前にバーが開いてるという事はなくて、そのかわり中にキャッシュバーがあるというのでとりあえず£10札を一枚ポケットに押し込んで列に並ぶ。簡単なプロットが書かれた紙切れとチケット以外は手ぶら。そして全員に仮面が渡される。この仮面、かなり不気味。でも目の部分は大きく開いていて、鼻の上部までなので息もできるし口も自由だ。30度級の暑い日だったので中にはペットボトルの水を持って入ってる人もいた。(これはOK)

仮面を付けた私達はabsolute silence(徹底した沈黙)を命じられる。そしていよいよ「ハリウッド、テンプルスタジオ」に送り込まれるのだが、この時点でゾロゾロとエレベーターを降りるうちに不意にドアが閉まってしまい、最初に降りた半分の人達は地下へ、そして私達は再び2階まで連れて行かれて解放された。この時連れと離ればなれにされてしまった人達もいて、ここからは本当に完全に個人での体験という事になる。

全体はかなり暗いので、注意してのろのろと進むうちにもう少し先が見える、、といった感じでこのスリルがなんとも言えない。どっちへ行くか、、、誰かに付いて行くも良し、一人で皆と違うほうへ行くも良し。そして薄暗い先に見えるドア・・・全体が映画スタジオになっているので、林の中に俳優達の休憩するキャラバンがあったり、ドアを空けると次のスタジオだったり、誰かの楽屋、宿泊部屋、衣装やカツラ、縫製室やスタッフの事務室・・・ありとあらゆる映画関係の小部屋が至る所にあり、とにかく目についたドアを開けてみないと何にでくわすか解らない

ほとんどの部屋は無人でこれもとっても不気味なのだけれど、時々仮面をつけていない俳優達があちこちでシーンを演じている。観客は仮面をつけているのでこの区別はすぐに付く。各シーンは5分程で、その場に居合わせた観客が見守る中、台詞はなく、ダンスでシーンを演じている。シーンの後、役者を追っかけていけば次があるのかというとそうでもなく、続きがある場合もあれば、いつのまにか鍵のかかるドアの向こうに逃げられてしまってまた取り残されたりする

目につく限りのドアを開けては、役者に出くわしたら付いて行く・・・を繰り返すうち、かるく1時間以上経過してしまった。全部で3フロアーだという事もこの頃には解って、非常階段に出ると階を移動してみる。するとまた別のスタジオという事で、本筋とは関係ない「映画の撮影中」のシーンが展開していたりする。最初はカップルやグループも多かったのに、気が付くと殆どの人は一人で歩き回っていた。おそるおそるドアを開けて反対側に仮面を被った人がたっていた時には思わずぎょっとしてしまう
そろそろ歩き疲れた頃、こわごわと開けたドアの向こうに丸いテーブルが並んでステージらしきものが目に入った時、不意に横から声がして、「どうぞ、ここがバーです。ここでは仮面を取ってくつろいでください」といわれた。運良くキャッシュバーに出くわしたらしい

テーブルで冷たいミネラルをウォーターを飲んでいると、ステージでは手品をやったりクラブ風のバンドとシンガーが演奏したりしてこれもまた50年代風のハリウッドスタイル。ここで離ればなれになっていた連れと再会している人達も・・・始めは少なかったけれど、しばらくすると次々にバーに辿り着いた人達がやってきて結構な賑わいに

最終シーンは最期の15分くらいと最初に聞かされていた。どうやって、どこで行われるのか解らないけれど、最期の1時間をまた歩き回る。役者を見つけてついていくと、さっき観たのと同じシーンだったりして・・・
そしてしばらくすると、開かないドアにぶつかる事が増えて来る。あるいは黒いマスクのスタッフがさりげなく無言のまま手招きで「こっちはダメ」と合図する、、、そして開いてるドアを抜けて進んで行くと、いつの間にか沢山の人が集まっている林の中に出て、中央の舞台でメインストーリーのダンスシーンが繰り広げられていた。最終シーンだ。さりげなくこの場所に誘導されてきた観客達がほぼ全員集まった頃、クライマックスのシーンが演じられ、そのまま前キャストも登場してフィナーレとなる

劇団プロデューサーのインタビューによると、「おそらく殆どの観客は全体の約3分の1位を観る事になるでしょう」との事だった。確かにフィナーレに出てた役者のうち、半分は「こんな人いたっけ??」だった・・・・観客全員が違う3分の1を観て、成立する芝居。それで良しとするか、「もったいない!!」と思ってしまうかなのだが、それで成功している所が凄い。私は手当たり次第にドアを開ける事に夢中になって、ちょっと役者を追っかける(遭遇する)時間が少なかったかもしれないな〜〜。でもバーで休んだ時間以外、2時間半を歩き回った結果なのだから、あれが私の観た芝居だったのだ

こういう芝居はあくまでも参加型なので、自分の足で見つけて行かないとお金を払った分が観られない。イマーシヴ演劇が日本ではイマイチなのは国民性なのかもしれないね。教室で黒板に向って机に座り、先生の話を聞くように躾けられた日本人は、どうしても自主参加精神に欠ける。でも与えられたものに対する受け手になるだけじゃなくて、何が得られるのか探るという楽しみこそが醍醐味なのだ

いつもは数週間の公演でチケットが取れずにいたPumchdrunkの公演、今回はNTとの共同企画だからか、12月まで決定しているようだ。(最初はもっと短かったと思ったから、伸びたのかな)なんだかもう一度行って違う角度から観てみたくなる。パンチドランクの公演を見慣れている人達は、多分コツが解っているのだろう。私も次回は役者を見たら走って追いかけるか・・・入場時間を遅らせて途中休憩を短くしてもいいし。う〜〜ん、考えちゃうな、しばらく開けてから秋頃にまた行ってみようか・・・・暗闇とスモーキーなパウダーの匂いと、役者を取り巻く仮面の観客達、、、すごく怪しい別世界の空気に魅せられてしまう・・・・アブナいわ〜〜〜





うわ〜〜ビックリ!!
今日10時から発売だった芝居のチケット。仕事中は到底無理なので夕方帰宅してからチケットを取ろうと思ったら、なんと既にSOLD OUT!!

こんなのロンドンでは本当に無いよ〜〜! というのも、普通のウェストエンドの芝居はロングラン制だから、最初にチケットが発売になる時は半年くらい先の席まで選べる。でもこの芝居はわずか11日間の限定公演なのだ

Punchdrunkというちょと変わった名前のこの演劇集団の事を最初に知ったのは数年前。なんでも凄く面白い=実験的な演劇を試みている集団なのだそうだ。会場は普通の劇場ではなく、下町ロンドンの倉庫が立ち並ぶような場所になる建物。座席はいっさいなく、演じられている芝居を建物のいろんな場所から好きに動き回って観られるという事らしい

こういうのって、昔寺山修司さんが試みた市街劇みたいなカンジなのかな、と思っていた。2年程前に「ファウスト」をやっぱり東ロンドンの倉庫のような所でやっていたので観たかったんだけど、チケット取りに苦労して諦めた。今回の演目はジャコビアン悲劇(ミドルトンに続いてまたも、、?)のThe Duchess of Malfiということで、ENO(English National Opera)とのコラボだからすごく観たかったのに〜〜!

と、ここまで昨日書いてそのまま中断してしまった。

全く話変わってBGT=Britain's Got talentのグランドファイナルが行われた。今年は始めの段階でダンスチームがあまりに多くて驚いたけど、さすがにファイナルに残った人達はみんな違った個性があってレベル高かったね。今年は歌、ダンス、コメディー、ドラマー、動物、とバラエティーに富んでいて、観ていて楽しかった。皆さん本当に素敵だったけど、優勝したのはジムナスティックチームのSpelbound ダンスともちょっと違うチームプレーが素晴らしい!こちらは昨日のセミファイナルの演技。


彼等の優勝にはなんのクレームも無い。本当に素晴らしかった。ただ私なりの意見としては、このBGTでは、あくまでも隠れた才能=素人なのにびっくりという人達をRoyal Variety showに送って、ロイヤルファミリーの前で演技させてあげたい。X−Factorみたいに即プロになる歌手を育てるんじゃなくて、もっとHome Grown(家庭栽培)的な人達が勝ってくれるような番組になるといいなと・・・

セミファイナルに残った人達の中にはそういう人達も何人もいた。お母さんがキッチンでご飯を作ってる間に兄弟でリビングで踊ってた、みたいな・・・ ファイナルに残った犬のダンスも本当に素敵だった。でもやっぱり最終的にはどうしても完成度=レベルの高いものに評がいっちゃうよね。まあ仕方ないけど・・・

という事で、今回本当に微笑ましかった犬と飼い主のダンス。「Tina&Chandi」なんと犬のチャンディーは12歳。人間だったら100歳近いのよ・・・


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