良い映画を観た。うん、これは良いね。Into The Wild(原作題=「荒野へ」)

これが公開されたのは去年の終わり頃。見つけたのは彼で、映画館の近日公開リストを観て「これきっと良いから観よう」と言ってきた。 監督はショーン・ペン。うちの彼は結構良いものを嗅ぎ分ける嗅覚がある。この良いものというのは必ずしも褒められてるものという意味でなく、私たち、とりわけ私がきっと気に入るだろうという種類の嗅覚だ。 彼が選んで奨めるもので期待はずれだった事はほとんどない。「旅をしながらアラスカの荒野に一人で生活・・・」という作品紹介は必ずしも私にはピンとこなかったのだけど、彼が乗り気になる事は滅多にないので「じゃあ観ようか」という事になった。

ところが直前になって上映時間が2時間半と知って彼が尻込みしてしまった。うちの彼は、2時間以上の映画と字幕付きの外国語映画を観る辛抱が無い、というちょっとした根性無しなのだ。 結局その時は観ないで終わってしまったのを、やっとDVDで観た。DVDならうちでゆっくり観られるから、一度に2時間半頑張らなくても良いしね。で、結局最期まで二人して一気に観てしまった。彼は珍しく途中で寝てしまう事もなく、トイレにだって行かなかったくらい。

実話を再現映画化したもので、クリス・マカンドレスという青年が、恵まれた家庭環境や学歴を放棄して一人旅に出ていろんな人たちと交流し、自身の夢だったアラスカの荒野での一人サバイバル生活に入っていった足跡を追っていく。原作本はこちら.

この映画は批評家から高い評価を得た反面、あまりポピュラーなヒットにならなかった。 映画館での上映も限られていたし、アカデミーでもいくつかノミネートされたけれど当たらず、、という感じだった。 でもこれはとても良い映画だと思う。 自然を撮ったスクリーンも奇麗だし、登場する人たちみんなにそれぞれクリス(アレックス)の人生に関わる意味があり、自分の目と耳と感触で生きるという事を知っていく青年の旅は、夢があり冒険であり、そして無知で残酷だ。

こういう映画を若者達に観てほしいと思う。ババ臭い意味じゃなくて
最近のイギリスでは毎日のようにナイフ殺人事件がおこって、先日も2日間で8人の若者がナイフによる喧嘩で命を落とした。 日本の秋葉原での事件にしてもそうだし、毎日バスの中で周りの迷惑を考えずに大きな音で携帯音楽をかけてる連中、ちょっとの事でつっかかって脅しをかける連中、そういった若い人たちに「この映画を2時間半観てみなよ」と言いたい。 観る辛抱もできないんじゃあ仕方ないけどね、、、救いようがないよ。

日本での公開が9月に決まったと聞いたので、一足先にお奨めします。けっして派手ではないけれど、この青年が見つけたかったものを、私たちは見つける事ができるのだろうか・・・?と考えてしまう。最期は本当に残念だ。この青年のストーリーにはもっと続きがあって欲しかった。 もっと何かを悟り、そしていつか自分から荒野を出て社会に戻り、その後の人生をどうやって生きていくのか・・・その続きこそが知りたかったのに・・・・

感動するというのとも少し違う。でも「良い映画を観たな」と思える一作 邦題はカタカナでイントゥ・ザ・ワイルドになるみたい。この秋機会があったら観に行ってみては、、?