日本のテレビを見られるアプリを入れて一番嬉しいのは、地上波でないチャンネルも入っていること。昔からWOWOWで収録・放映される舞台作品は「ああ、観たい!」と思うものがいくつもあった。もちろん舞台は舞台で観るのが一番で、それは私の中でも絶対なのだけれど、観に行かれない時には最近増えてきたTheatre Liveが頼りだ。 

「渦が森団地の眠れない子たち」の公演に関して聞いていたのは、藤原竜也さんと鈴木亮平さんのダブル主演で小学生を演じる、という事だけだった。
実は鈴木亮平さんの事は私は「精霊の守り人」で観るまで知らなかった。日本にいない身なので勘弁していただきたいのだが、「精霊」でのヒューゴ役を見てすぐに、「この人、誰!?」と思って調べた人だ。ドラマ経歴も長く、年齢ももう30半ば、主にテレビドラマの仕事で出てきた人のようだけれど、元々は学生時代から芝居をやっていたという。体格も所作も舞台向きだし、 声も滑舌も良い役者というのは私はすぐに目が行く。藤原くんとは「安針」で共演したという事だけれど、ロンドン公演にはいなかったと思う、、、、

「渦が森団地の眠れない子たち」がオリジナル作品だというのは今回の放映に際して初めて知った。なるほど、当て書き台本ほど心強いものはない。本と演出の 蓬莱竜太さんはご自身の劇団で本を書き、演出も手がけてきている、でも舞台を観る機会はなかったので、こちらも私は初めてだ。ただ、経歴を見ていて「あ!」と思ったのが、以前にネットで観たテレビドラマの「平成細雪」の脚本を書いたのが蓬莱さんだった。とても独特の空気感のある本だったので覚えている。

さて、小学生だ、、、、地震があったエリアから渦が森団地へと引っ越してきた一家。啓一郎はこのとき初めて、母には(双子の)姉がおり、叔母と従兄弟が同じ団地のどこかに住んでいるらしいと告げられる。 でも関わり合いにはなってはいけない、お母さんによく似た人に会っても無視しなさい、と。
出逢ってしまった従兄弟の鉄志は団地の小学生軍団のキング。ガキ大将で、強くて、強引で、でも親戚がいたことを喜んでくれたので、二人は親友の誓いを交わす。そこから数年、子供たちの目から見た団地という世界の力関係、素直だったり、嘘をついたり、友達の見方になったり喧嘩をしたり、、、その中で、本当は嫌いなのに、本当は好きなのに、勝ちたいのに、やっつけたいのに、悪いと思っているのに、謝りたいのに、、、、と様々な心の葛藤が子供の目を通して描かれる。もちろん子供を見守り、また振り回される大人達の姿も。

メインのキャラクターはほとんどが小学生役で、大人役は鉄志と敬一郎の母親を二役で演じる奥貫薫さんと団地の自治会長の木場勝己さんだ。このお二人がガッチリ支えている。
やっぱり当て書きされた本は役者を十分に生かしていて、藤原竜也と鈴木亮平という全く違うタイプの役者をそれぞれの多面性を引き出していて見応えがある。

鈴木さんはどちらかというと正統派な演技をする人だ。声も滑舌も良いし、演技もなんだろう、、しっかりと構成されている、と言えばいいのだろうか。演技が「きちんとしている」のだ。それに対して藤原竜也という役者はやっぱり技術よりも感性が滲み出て来る演技をする人だ。 竜也くんはう〜ん、掠れ声で叫んじゃうのがやっぱり気になるなあ〜。大人になったら息の使い方も上手くなるかなと思ったんだけど、蜷川さんはあんまりそういうことには拘らなかったんだね。もちろん演技力というか、なんだろう、竜也くんの芝居にはオーラがあって、今回のような当て書き本だとそれが本当に生きて来る。

良い本だ。素直に「良い芝居だな」と思って観た。大人だから判る子供時代の微妙でデリケートな心境、それが子供の目で描かれ、それを大人の役者が演じる、、、、「小学生を演じる」と一言で言うにはあまりにも複雑なのだ。蓬莱隆太さんは素敵な芝居を書くなあ〜。

考えてみたら、今の子供達って、こんなふうに外に出て、戦争ごっことかもうしないんだろうな、とふと思った。今の子供達は家でゲームしたりネットしたり、ガキ大将がキングって呼ばれてるなんて事、今となってはもう架空の世界の事なんじゃないだろうか、、、?それとも、まだ地方にいけばこう言う子供達の姿も少しは残っているのだろうか?

後半は涙が出てしまった。芝居で泣くのって久しぶりだ。そして、芝居の最後に大人になった啓一郎が鉄志の事を懐かしく懐かしく、たまらなく会いたくなる気持ちが判る、、、、

子供達は眠れないのだ。考え、苦しみ、喜び、傷つき、後悔し、わけが分からなくて眠れない、、、、とてもリアルなようでいて、それでいて空想の中の話のような、不思議な空気感のある芝居だ。この感じって、前にドラマで見た「平成細雪」でもちょっと感じた。蓬莱さんの本、良いね。