去年、カセットテープを全部しまい込んでしまったので、いわゆる古い音楽は最近全く聞いていなかった。で、ホントに久々に映画「戦場のメリークリスマス」のメインテーマソングForbidden coloursのオリジナルヴァージョンを聞いた。この曲は坂本龍一氏の代表作であり、今までにもコンサートやCDでいろんなヴァージョンで演奏されている。でも私は今でも、このForbidden Coloursは最初の映画サントラ版に入っていたデヴィッド・シルビアンのボーカルによるヴァージョンが一番好きだ。っていうか、あの歌詞無くしてForbidden Coloursというタイトルはあり得ない。

大島渚監督がDavid Bowie、坂本龍一、たけしといったメンバーを揃えて映画を撮ったという話は、なによりも出演した当事者達の口からあちこちで撮影秘話などがこぼれていた。 丁度YMOが全盛期で坂本教授個人の音楽も大ファンだったところへ、私の永遠の別格中の別格アーチスト、デヴィッド・ボウイーが大島監督の映画に出るというので、これはもう噂を小耳にはさんだ瞬間からどきどきしていた。 普通は映画化が決まったからといってわざわざ原作本を読むなんて事はしないのに、当時暇ができると寄っていた渋谷東急プラザの紀伊国屋で、「影の獄にて」という本にでくわしたのだ。戦場のメリークリスマス原作本」というポップが付いていたから、多分映画公開の数ヶ月前だったんじゃないかな。

作者のヴァン・デル・ポストという人は全く聞いた事がなかった。 題名の「影の獄にて」も、評判になっていた戦場のメリークリスマスという映画のタイトルとはかなり違った印象だった。で、やっぱり好奇心には勝てず、いったいボウイー先生が今度はどんな役をやるのか・・・と思わず買ってしまった。 文庫じゃなかったので、固い表紙で持ち歩くにはちょっとかさばる単行本だ。私が単行本を買ったなんてほんとに数少ないのに・・・そして読み始めた私はそれから読み終えるまで本を手放せなくなってしまった。

3部構成の話は、ひとつひとつの違うエピソードが語り手役のローレンスによって繋がっている。最初の短編が映画でのハラとローレンスの話。二つ目が一番長く、この本の核になっているジャック・セリエズの物語。そして私はここまでの話に心が震えて震えて、最後の3つ目の話を最後まで読む事ができなかった。 ちなみにこの2つ目のジャックの話はThe Seed and The Sower=種と蒔く者というタイトルで、実はこれが本当のオリジナルの英語題なのだ。 そして映画ではほとんどはしょられてしまているこの本の中核は、キリスト教でいうこの「種を捲くもの」にある。「涙と共に種を捲くものは喜びと共に刈り取る」という意味だ。

せむしで生まれた弟をいつも可愛がり、成績も素行も優秀で、自分の容姿が充分に人を惑わす魅力を持っている事を知っているジャック。誰よりも愛していたはずの弟を、誰にもそれとは気づかれないように心裏切った彼は、そのたった一つの罪の許しを求めて生きてきた。人からすれば罪だの裏切りだのとはとうてい言えないようなたわいもない事が、彼にとって生涯の心に傷となっているのは、自分がかぶった偽善者の仮面を誰からも責められないばかりに許してももらえないからだった。 映画では寄宿学校でのエピソードしかなかったけれど、それ以前の、片輪の鹿をせむしの弟の目の前で撃ち殺すあたりのジャックの心情の描写は心が悲鳴をあげそうになった。

自分と神だけが知っている罪の許しを求めて、ジャックは高熱の夢の中で弟に会いに行く。やっと許された罪。そして彼は今度は自分が収容所で仲間の捕虜達の代表のように処刑される事で、新たな種をヨノイ達の胸に捲いていく。 この穴埋めでジリジリと死んでいく場面はキリストが人々の罪を背負って十字架で死んで行く姿のようだ・・・・ 映画でもこのシーンは奇麗に撮られていた。バックには捕虜達の歌う「詩編23編」。大島監督が映画からキリスト教っぽい要素をはしょったのは、日本VS西洋の構図を解りやすくしたかったからだろうか・・・?

デヴィッド・シルビアンの歌詞は映画よりも、原作の本を読んで書いたのだろう事はすぐに解った。タイトルのForbidden Coloursがこの歌では「禁じられた色彩」になっていたけれど、実は他に有名なのが三島由紀夫氏の「禁色」も同じ英訳だ。そのせいか、やたらとホモセクシャルな色合いが取りざたされていたけれど、これはキリストに向かって祈っているような気がしてならない。 この歌詞の中のYouはキリストの事だと思って読むとすごくよく解る。出だしのWounds on your hands never seem to heal、この「あなたの手(複数)の傷」というのは、十字架にかけられて釘で打たれたキリストの両手の穴の事だとすぐに思った。この歌は、苦しんでもがいている中での祈りの歌だ。

デヴィッドの詞の感性は本当に素敵。JAPAN時代の歌にも、彼の心につきささるような歌詞が沢山ある。 そういえば、一般非売品の彼の歌詞集を2冊もっているけれど、これは私の宝物。映画の「戦場のメリークリスマス」はあれでうまくまとめてはあるけれど、本を読んでそれまでにないくらい心打たれた私としてはちょっと消化不良だった。でもあれはあれで一般的に高い評価で受け入れられたわけだから、まあ成功といっていいのでしょうね。なんといってもDavid(ボウイー)は一番かっこ良くノッテル時でしたしね〜〜。 あれをきっかけに、たけしさんも坂本さんも後々世界に認められるようになる訳だし・・・

でもひとつだけ、ちょっと残念だったのは、実はあのラストカットのたけしさんの笑顔の後には続きがあったのだという事。 あの最後の笑顔を見てローレンスは、ハラをしっかり抱きしめ、額にさようならのキスをして、戦争中の数々の不幸なでき事は個人のせいではないのだと言ってやりたい衝動にかられる。でもどうしてもそうしてやる事ができずにローレンスはそのまま長い道のりを帰っていく。けれど途中でどうしても、どうしても何かを言わなければならない気がして、夜明け前の道をまた刑務所まで猛スピードで取って返すのだ。でも戻った時には既にハラは処刑されてしまっていた。ローレンスはつぶやく「僕たちはいつも遅すぎなければいけないのだろうか・・・?

この最後のくだりが私はあって欲しかった気もするのだが、もしかしたらあのたけしさんアップの顔を撮った監督が、それ以後には何もいらないと決めたのかもしれない。


Forbidden colours=禁じられた色彩    David Sylvian


The wounds on your hands never seem to heal
             あなたの手のひらの傷は永遠に癒えることがない
I thought all I needed was to believe
      私は信じてさえいればいいのだと思っていた 
Here am I, a lifetime away from you
      いまここに、あなたから生涯を隔てて私はいる
The blood of christ, or the beat of my heart
      キリストの血、それとも心臓の鼓動か
My love wears forbidden colours
      私の愛は、罪の色を帯びてしまっている
My life believes
      この命が信じている
   
Senseless years thunder by
                         無意味な年月が矢のように過ぎ
Millions are willing to give their lives for you
      あなたの為に何百万もの人々が命をさしだす
Does nothing live on?
      永遠なるものは何も無いのか?

Learning to cope with feelings aroused in me
      自分の中にわき上がる感情を押さえようと
My hands in the soil, buried inside of myself
      土くれに両手をつっこんで胸の内を葬り去る 
My love wears forbidden colours
      この愛は禁じられた色を帯びる
My life believes in you once again
      この命はもう一度あなたを信じます

Ill go walking in circles
      自分のすぐ足下の地面すら確かめられずに
While doubting the very ground beneath me
      同じ場所をぐるぐると歩き回る
Trying to show unquestioning faith in everything
      すべてに偽りのない信仰を示そうとして

Here am i, a lifetime away from you
      生涯の距離を隔てて私はここにいる
The blood of christ, or a change of heart
      キリストの血なのか、改心なのか

My love wears forbidden colours
      私の愛は罪の色に染まる
My life believes
      この命が信じてる
My love wears forbidden colours
      この愛は禁じられた色を帯びる
My life believes in you once again
      私の命がもう一度あなたを信じるのです


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