とうとうイギリスはロックダウン。仕事も「臨時解雇」状態で、政府が保証した給料の80%でこれからやっていかなくては、、、とはいってもどこへ出かけるわけではないので、切り詰めればギリギリ何とかなるかな〜、、、??

多少のお金を払ってダウンロードした日本のテレビだけれど、普段はなかなか元が取れるほど観られない。今回の3週間(多分もっと伸びるとは思うけれど)は観まくる良い機会だ。

映画チャンネルなんかもあるので連日チェックするとして、昨日はアマゾンのプライムで気になっていた映画を見つけた。「Love Hotelに於ける情事とPlanの涯て」(私は日本とイギリス両方のアマゾンに登録している)

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この映画は三上博史さんの本当に久しぶりの映画だ。チラッと予告編を観た以外に聞いていたのは、長回しで撮影した、という事だけで、監督の事も私は知らなかった。

まず、すぐに「舞台劇のようだ」と思った。なるほど長回しで撮っているし、場面は1室内なので、十分舞台でも成り立つ。芝居のテンポにも緩急があって、話の転換がそのまま場面の転換のように進んでいく。然もありなん、監督の宅間孝行さんは劇団主催者で、本も書き、自身も役者だという。納得!映画監督は初だそうだ。

主な登場人物は4人(プラス二人)。昼間からデリヘル嬢とホテルにしけ込んでいるクズ刑事の間宮。彼は本気なんだということを言って聞かせるが、逆にデリヘル嬢からはゆすり同然にせびられている。そこへ間宮の妻で同じく警官のしおりが踏み込んでる。すったもんだでパニックになった間宮はデリヘル愛人を銃で売ってしまい、死体処理にヤクの売人で中国から逃げてきた男を呼び出す。死体を始末しようとしたところに、デリヘルのマネージャーが「うちの子が仕事終了時間になっても連絡がない」とやってきて、、、

間宮を中心に全員に弱みがあり、その弱みに付け込む強弱の関係がコロコロと変わる。さっきまで勝気に脅していたキャラが一変して許しを乞う側に、、、そして思いもかけない展開。興奮と静寂、ダラダラと緊迫感、ちょっとエロチックでコメディーなおしゃれな本だ。

さすがは長回し、役者達の集中が本当に舞台劇のようだ。三上さんのこんなキャラも結構珍しいかもしれない。大袈裟ではなく、それでいて相変わらずちょっとエキセントリック、やっぱり脚本を書いてもらうというのは役者にとって一番の強みだ。(「渦が森団地」でも思ったこと)バッグの中にカメラが仕込まれていて、バッグを別の位置に置くことで視点を変え、密室の中で場面転換をつける、というのも面白い。意図してか、ずれたのか、途中の緊迫したやり取りで二人の顔が画面から切れていて見えない、という場面があった。でもちょっと下から体や手を写すことで、緊迫感が伝わってくる。演じている役者の台詞のテンポも息遣いが見えるようだ。

全員クズのようなキャラクター、でも最後にはそれが穏やかな幸せを求めての事だったのか、、、と思った矢先のラストはまさに「え、、、??!!」だった!因果応報というのか、全員が報いを受けている、という本の構成が面白い。

これ、舞台でも観てみたいなあ〜〜。でも逆にこの手法で撮ったからこその面白さなのかな。途中で、立ち位置が見えなくても姿が鏡に映っていたり、カメラの位置もかなり計算されている。

そしてやっぱり私の大好きな三上さん。舞台らしい役者としての三上さんを観られる機会は本当に少ないので、嬉しい限り。 アクが強すぎてもしらけるし、ちょっと崩れた刑事役(いや、クズ野郎か、、)の三上さんは今回は彼としてはナチュラルだ。一発撮りの中にどれだけのこだわりがあるのだろうか。クズ女の酒井若菜さんも私には新鮮だった。酒井さんのこんな役は見たことがなかったので。デリヘル嬢もヤクの売人も何ていうか、身体張って演技してるのが伝わってきて、チームワークの強さが支えている。

監督の宅間さんはむしろ役者としての方が知られているそうだけれど、 役者だからこそわかる、という部分を十分に使っている作りだと思う。ブロックバスターな映画ではないけれど、私はこういう作品が大好きだ。後から考えて、「ああ、伏線があったのか」と気がついたりする。舞台劇だったらもう一度見直すという事はできないので、いつも一発感想を大事にしているのだけれど、これはしばらくしてからもう一度見てみるとまた発見があるのかもしれない。

クズにはクズの結末が、、、という感じで、優位と劣勢がコロコロと入れ替わってのラストの0.1秒が本当に効いている。宅間孝行さん、面白い作品を作る人が日本にも出てきたな、と「渦が森団地、、、」の時にも思ったのだけれど、機会があったら舞台も見てみたい。