見つけもの @ そこかしこ

ちょっと見つけて嬉しい事、そこら辺にあって感動したもの、大好きなもの、沢山あるよね。

タグ:ミュージカル


何と!!ロックダウンで1日家にいるというのに、テレビが突然死んだ!!
夜、普通に観ていていきなりフッと真っ暗になってしまってそれっきり、、、、、うちの彼はエレクトリシャンで、ホテルのメンテナンスも20年近くやっていたからテレビのチェックも慣れている、が、!どうやら単にケーブルやヒューズではなくてトランスミッターに原因がありそうだと言う。「それって直せるの?って言うより、直す価値あるの?」と聞くと、「あんまりないかも」とのことなので、ここは仕方がない、、、新調するしかなさそうだ。

この休職時に何でこうなるかなあ〜〜!!??お給料8割分しか出ないんだよ〜〜!! 


まあ我が家のテレビはほとんどうちの彼用で、私はマックでネットしたりする方多いのだけれど。日本のテレビで今まで見られなかった舞台中継の様な番組が沢山観られるのが嬉しい。昨日観たのは三谷幸喜氏の「日本の歴史」、オリジナルミュージカル。

自分が劇団で芝居をやっていた当時は、「毎日がミュージカル!!」だった。実際に上演していたし、毎日が歌って踊っての日々で、そもそもロンドンに来たのだって、当時の劇場・ミュージカルといえばもうロンドンが世界最高の地だったからだ。 でも不思議なことに、最近はミュージカルをほとんど観なくなった。もちろん好きなのだけれど、「ミュージカル=歌って踊る」という手法を使わないストレートな芝居の方が面白くて、もう何年も観る作品はミュージカルではなく芝居が中心だ。なぜなんだろう、、、歳をとったと言うことか、、、??

何より日本語での翻訳ミュージカルにものすごく違和感を覚える様になった。やっぱり原語で観たものを、何かで日本語訳されてるのを聞くとすごく変に聞こえる。「日本の歴史」がミュージカルと知って「うまく入っていかれるかな」とも思ったけれど、以前観た「オケピ!」は素晴らしく面白かったし、三谷さんなのでそこは間違い無いかな、と期待しつつ観た。

でも心配は無用だった。やっぱりオリジナルはしっくり来るのだね。翻訳して音ハメしようとするから変に聞こえるので、初めから本に合わせて書かれた音楽と歌詞は心配しなくても生き生きと聞こえてきた。

いや〜〜、驚いた!まあ三谷さんだからつまらないものは書かないと思ったけれど、「日本の歴史」とタイトルしてあんな構成にするとは!
まず、これは絶対にミュージカルでなくてはできない。本が成り立たない芝居だ。ミュージカルだからこそ、3−4分の歌と踊りで何十年間を表せる。

何と言ってもたった7人の役者たちが持ち回りで全62役を演じている面白さ。中井貴一さんが今まで見たことのない姿で歌い踊っている!場面場面が寸劇の様で、7人の役者たちの芸達者ぶりに笑いが止まらない。皆さん、本当に楽しそうに生き生きと演じているのがよく判る。

数曲のメロディーが何度も何度も繰り返して使われ、それが歴史の繰り返しの象徴の様に耳に残る。そして何と言っても三谷さんの筆の妙は、歴史に合わせて一家族の物語が並行して綴られていくことだ。歴史の流れの中で、普通に人間が持つ様々な感情、迷いや喜び、悲しみや夢、争いや権力、それらは実は私たちの人生に全て凝縮されている。そして
すっとびの歴史でかいつまんである部分も、よく知られた史実と共に、全く聞いたことのなかった様な人物にまで焦点を当てているのが三谷幸喜さんらしい。

綿密に作られているので唸ってしまう。ミュージカルでなければ作れないストーリーを、日本の歴史とテキサス開拓時代の一家という二重構成で長い歴史を人生の繰り返しに見事に重ね合わせている。

芝居はエンターテイメント、小難しくなくて良いのだ。私は結構重いテーマの芝居も個人としては好きなのだが、やっぱり三谷さんの舞台は、「面白い!」の感想一言でスッキリする。キャスティングが素晴らしいね。歌唱力では女性陣が男性陣を少し上回っていたと思うけれど、芝居、歌、ちょっと踊り、と7人の役者たちのバランスが良くてさすがは当て書き。やっぱりあて書きに勝る本はない。「それをこの人にやらせるか?!」と思う様な事を書いてしまうのが三谷幸喜の魅力。そしてそれに挑戦した役者がまた一味違う顔を持つことに成功するのも。この芝居は一人6-7役をこなしているので、役者の芸の広さに思わず拍手を送りたくなる。

元々ミュージカルは海外からの輸入物から始まった様なもので、私の劇団時代もオリジナルのミュージカルをやっている劇団は本当に少なかったし、「東京キッドブラザーズ」とかが人気があったけれど、どうしても小劇団の「一部マイナー」な粋を出ていない時代だった。だから日本語のセリフのリズム、テンポにちゃんとハマる音楽での一流クオリティーなオリジナルミュージカルが欲しいと思っていた。

日本のオリジナルだって面白いミュージカルになるじゃないの!!

三谷さんは再来年のNHK大河の本を手がける事が既に決まっているそうだ。小栗旬さんの北条義時で、鎌倉幕府時代の話だとか。大河の本ももう3本目、凄いなあ〜。

日本のオリジナルの良い芝居がどんどん出てくる時代になったんだなあ〜と思わずにいられない。私ももう少し頻繁に日本に行かれれば色々と見たいなと思うものもあるんだけれど、、、、まあこればっかりは仕方ない。仕事をリタイヤするまでは我慢して頑張るしかないよね。

現在はロンドンの劇場は全て閉まっている。もちろん映画館やレストラン、カフェでさえ、、、、中には映像でネット配信してくれる芝居も結構あり、普段よりももっとたくさんいろんな芝居を観られる様だ。もちろん舞台は舞台・劇場で見たいけれど、とにかくこのコロナ騒ぎが何とかなってくれるまでは致し方ない。それでもネットとテレビ(新しいのがきたら)があれば、少なくとも退屈はしなくて済みそうだ。



 


30年・・・、そう、このミュージカルの舞台を観るのに30年待った。「Pippin=ピピン」です!

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スティーヴン・シュワルツ(Stephen Schwartz)のPippinは、ボブ・フォッシーの演出/振り付けで1972年にブロードウェイで初演された。2000上演近いヒット作になり、トニー賞はじめいくつもの賞を穫ったにもかかわらず再演はあまりされず、ほとんど忘れられたミュージカルに数えられていた。今ではオリジナルのセクシーでちょっとエロティックな部分はほとんど省略されて、逆に子供が楽しめるアマチュアヴァージョンが各地の学校の学園祭等で上演される事が多いので、ロイド・ウェバー氏の「Joseph•••」のようなファミリーミュージカルだと思っている人も多いらしい

個人的にとても思い入れのあるミュージカルだ。 というのも劇団時代、何故かこれからの上演予定作品の中にこのミュージカルが入っていた時期があったからだ。制作上の事はよく覚えていないけれど、きっと当時は上演権を取ってあったのだろう。ミュージカル概論の講義でストーリー/舞台構成を聞き、ブロードウェイ版のサントラを何度も聞いては歌っていた

その後、ブロードウェイでのステージを映画用に撮影した舞台映画版を観て、ボブ・フォッシーの振り付けにハマった。JazzyでSexyなダンスシーンと、色鮮やかな コスチュームの舞台。ボブ・フォッシーといえば代表されるのが、「キャバレー」や「シカゴ」の振り付け。帽子やステッキを巧みに使ったセクシーな振り付けで、ちょっとダークで危険な香りを醸し出す。子供向けミュージカルにもなりがちなストーリーが大人向けになっているのは、彼の振り付け/演出による。この映画版は最近になってYoutubeにも上がっているのを見つけた。各歌を中心に場面毎に別れているけれど観る事ができる。物語のキーになっている曲、人生の意義を探す決意をするピピンの歌=Corner of the Skyこちら

ストーリー

舞台はリードして行く狂言回しの役割をする役者が各場面を取り仕切る形で進んで行く。ローマ帝国を支配するシャーメイン国王の王子、ピピンは品行方正、学業優秀で教育期間を終了する。父には色仕掛けで王の寵愛をつなぎ止めている後妻のファストラーダと彼女の連れ子(弟)でお馬鹿だけれどやる気満々の戦士=ルイスがいる。これからの身の振りかたについて、彼は「人生の真の意味を探しに、何か特別な大いなる物=extraordinaryを見つけに行きます」と宣言する。
ところが戦争に参加して勝利を収めても、流されたおびただしい血に手をそめて恐れおののき、沢山の女達との性愛にふけっても愛の無い情事にピピンの心は満たされない。彼の心は相変わらずEmpty and Vacant。ピピンは継母のファストラーダと折り合いが悪くて隠居している祖母、バーサに会いに行く。ピピンはバーサから、「考え過ぎちゃ駄目、自然の成り行きに任せて人生を楽しんで生きることさ。」と励まされ、もう少し力を抜いて生きてみようと思う。
やがて父王の政策が段々暴挙を帯びて来ると、ピピンは父に反抗して革命を企て、父を殺害して王位に就く。しかし、自分が王になってみると事は思うようには運ばず、結局は父がとったような暴君政治になりつつある事に気付いたピピンは、ここで芝居を止めて、リードアクターに父を生き返らせてストーリーを修正してくれと頼む。かくして自分が王になる前に話は戻り、ピピンはさらに人生特別な意義(extraordinary)を探して芸術や宗教といろいろ試すが、相変わらず心は満たされず、とうとう道に行き倒れてしまう。
倒れていたピピンを助けて世話をしたのが未亡人のキャサリン。彼女にはテオという息子がいて、典型的な田舎の農家暮らしだ。キャサリンとテオの家で、ピピンは初めて平民の平凡な生活を送る。やがてキャサリンと愛し合うようになるが、次第に乳搾りや死にかけのアヒルのために祈るような日々をとてつもなく退屈だと思い始めたピピンは、心傷ついたキャサリンを置いて家を出る。
この後はフィナーレに向かって行く。リードアクターやアンサンブルの役者達にあおり立てられて、ピピンは壮大で目を見張るような劇的な最終場面を演じようとするのだが、結局は自分の心が一番安らいだのはキャサリンの側にいた時間だったのだと悟る。あれほどExtraordinaryを求めたピピンが、最期には音楽も証明も無くなった舞台で、キャサリンとテオと抱き合って歩き始める。
そして空っぽになった舞台に再びテオが戻って来て、静かにCorner of the skyを歌う。今度は彼が人生に何かを求めて旅立つのか・・・?


今回の舞台は物語そのものをコンピュータービデオゲームの中の世界、という全く新しい設定にしている。まあそれは無理もない。1972年のアメリカと今とでは社会状況が全く違う。人生の希望に満ちた無垢な青年が自分探しの旅に出る、なんて話はこの夏に街中を荒し回った今時のティーンエージャーには通用しないからね。でもこのビデオゲームという設定が巧くハマっている

会場に入る前の通路はオタクっぽい男の子の部屋になっていて、ピピン役の役者がPCに向かっている。 そのゲームの中が会場という設定だ。このメニエール・チョコレート・ファクトリーは、昔チョコレート工場だった建物をスタジオシアターに改造したもので、客席だって180あるかないかだ。セットはシンプルだけれど、ビデオスクリーンをふんだんに使っている。各場面がレベル1レベル2とゲームのように設定されていて、はじめの人物紹介から、戦争をクリアしたら女性遍歴、次のレベルは革命、権力、、というようにゲームの中でストーリーが展開して行く。女性達との遍歴のシーンはセクシーなダンスシーンと同時に出会いサイトやエロサイトの映像が使われ、父のシャーメインを生き返らせるシーンは前のレベルに戻ってやり直し、という手法だ。 

特筆すべきは、ビデオゲームという設定にした事で話の古さを感じさせない事と、嬉しい事に随所にオリジナルのボブ・フォッシーの振り付けを再現している事だ。これはわざわざニューヨークから、かつてフォッシーの助手だった振り付け師を招いて、ダンサー達にブートキャンプが開かれたそうだ。 

リードアクター役はブロードウェイでのベン・ベリーンのイメージが強かったのでどうかと思ったけれど、今回の人もなかなか良かった。 ロックシンガーっぽいタイプで、エヴィータのチェ役も良いかな。私の一番のお目当ては、ファストラーダ役のフランセス・ラッフェル(Frances Ruffell)。彼女はレ・ミゼラブルのオリジナルでエポニーヌを演じた人で、私の大〜〜好きな女優さんだ。(彼女についてはこちらにも書きました。)小柄ながらハスキーな声とコケティッシュな魅力。47歳のはずだけど、ダンスシーンでは見事にスプリッツを見せてくれます!!歌唱力は言うに及ばず

もう一人、バーサを演じたルイーズ・ゴールドも素晴らしかった
 何といってもチャーミング。彼女のシーンは観客を巻き込んで皆で歌うという状況にもっていかなくてはならないので、引っ張る力がないとついていけない。出て来た瞬間に観客が彼女を好きになってしまわないと成り立たないのだ。このシーン(レベル)はポカポカと太陽の暖かさを感じるような場面だった。もちろん皆でNo time at allを大合唱してきた。

主役のピピンはもっと小柄で線の細いイメージだった。少年の面影を残したウブな感じ、、?でも今回のHarry Heppleはなんだか健康そうな大人に近い青年で、ちょっとイメージと違ったかな、でもオタクっぽい現代風の若者という感じはする。そして歌声がとても綺麗だ。う〜ん、、最終的に歌でオーディションに勝ったっていう感じだったのかなあ〜。実はテオ役の役者がピピンの アンダースタディーにクレジットされているけれど、彼が最期に歌うCorner of the Skyの一節もソフトな声だった。私としては彼のピピンを観てみたいかも

子供連れで来ていた人もいたけれど、最初に書いたように元々このミュージカルは子供向けじゃない。それを知らなくて、学校演劇のイメージで観に来た人はちょっと度肝を抜かれたかもね。 この芝居は好き嫌いがあると思う。このメニエールはリバイバルもののミュージカルには定評があって、ここで大ヒットして大きな劇場に移った作品がいくつもある。でもピピンはここ(小スタジオ)でヒットしてウェストエンドで再演っていうパターンまでは行かないように思なあ、、、

でも個人的にはとても思い入れのあった作品なのでやっと観られてよかった。しかもフランセスが出ていたのはボーナス!ボブ・フォッシーの振り付けも、当時のアシスタントやダンサー達によってかなり保存されている。演出によって変わるのが舞台ではあるけれど、やはりダンスの振り付けも一つの芸術作品。作品として保存していくべきだよね

観られて良かった。楽しかったよ


なんだか昨夜から急に冷え込んできて、またまた凍り付くような気温になってきた、、年明け早々寒〜い新年になりそうな予感。

チーズケーキ

3度目の挑戦でやっとうまくいったクリームチーズケーキ。ブルーベリーを散らしたのだけれど、ちょっと甘味が無さすぎたので、残りのブルーベリーに少しお砂糖を混ぜて煮詰めたソースも作った。完璧〜〜!

今年の最後は再演ミュージカルのSunset Boulevardで。今回の再演はなかなか面白い演出で、ミュージシャン達が役者/シンガー/ダンサーとして舞台に登場している事。ちょっと振り返ってみたら、ちゃんとモニターに指揮者が映っていたので、見えない所でコンダクターによるキューが出ていたのは間違いないけど、楽器を演奏しながら歌い踊る役者達はかなりタイミングをとる稽古が必要だったと思う

最初は出だしだけでミュージシャン達は演奏位置に落ち着くのかと思ったら、彼等はずっと楽器を持って舞台中をくるくると動き回り、歌い踊った。こんなアンサンブルの演出は観た事がない。大きなコントラバスも軽々と小道具にしてしまう洗練された動きは不自然さがなくて新鮮だ。セットも小振りだけれど、だからこそ、ノーマが大きく、セットのほうが小さく見える。ノーマ登場時に効果的だった。

今回のノーマを演じたキャサリン・エヴァンスは、私は20年以上前にエヴィータで観ていた人だった。そういえば、日本ではこのミュージカルは上演されていないと聞いた。ノーマを演じられる女優がいないという事で、見送られている作品だ。初演時にロイド・ウェバー氏はNYでエヴィータを演じたバティ・ルポンをロンドン初演に起用したものの、ブロードウェイで幕を開ける際、パティをおろしてグレン・クロースに代えた。氏がノーマ役にこだわった為、キャスト変更にあたって2度も膨大な違約金を支払う事になった

ジョー役のベン・ゴッダードはとてもエモーショナルな演技で究極の勘違いおばさんに翻弄される男の苦悩を演じていた。2幕では二人の女性の間で揺さぶられ、自身の欲も相まって自分自身に追いつめられて行く姿が哀れだ

それにしてもキャサリン・エバンスの歌唱力は素晴らしかった。最初のWith One Lookで劇場中を鷲掴みにしてしまった感があった。このノーマ役は歌唱力だけじゃできない。日本での上演が見送られているのもそのせいだろう。この役は人を虜にするパワーっていうか、、そう、魔女のような威力がないとダメなのだ。ちょっと「コワイ・・・」と思うような、でも恐いもの見たさで離れられないような、そんな凄さが必要な役だ。ジョーの首にからみついたノーマの腕の先に真っ赤な爪、、本人は小柄なのに、目一杯の派手なメイクで「あたしはビッグよ!」と回りの舞台を小さくみせてしまうド迫力・・・魔女だ、、、

このサンセット・ブールヴァードが、今までの時点でロイド・ウェバー氏の最期の名作だと私は思っている。残念ながらこれ以降の氏の作品は、音楽的にちょっと底を付いたような気がしてならない。彼のミュージカルナンバーの名曲集のようなCDにも、これ以降の作品のナンバーはあまり入ってこないし・・・劇場を出ても耳について離れないようなメロディーラインを持った作品はここまでだった

というわけで、あっという間に今年も終わり。日本はこれからがお正月休み本番かな。

今年も私のブログに遊びにいらしてくださって、ありがとうございます。また来年も訪問/コメントお待ちしています。
お茶は出ませんが、パーツに貼ってあるしゃべる肉まんでお楽しみください

皆様、どうぞよいお年をお迎えください。


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昨年    NYで5部門のトニー賞に輝いたブロードウェイ・ミュージカル、「The Drowsy Chaperone =ドラウジー・シャペロン」を観て来た。やっぱりミュージカルは楽しいのが一番!それがエンターテイメントの原点よね。

実は私が読んだ初日レビューはあまり良くなかったので、ちょっと気掛かりだったのです。「ストーリーが無い」「大スターのエレイン・ペイジがやる程の役じゃない」等書かれていて、内心どんなもんかなあ〜と思ってたのです。 さらに、調べてみるとミュージカルなのに休憩無しの1時間45分という超小振り、それでいてチケットのトッププライスは£55-00と最高級。 さらに、早々と8月初めに幕を降ろす事が決ってしまい、興行的にはロンドンでは「失敗」という事。

でもまあ私はCats やEvita で大スターになったエレイン・ペイジがすごく好きなので、彼女の久しぶりの舞台ならそれに£55-00払う覚悟を決めて行ってきました。

ストーリーは、殆どありません。
舞台はミュージカルが大好きというちょっとオタクな男が進行役になって私達とステージとの橋渡しをする。場所は彼のアパート、どうみても一人暮らしで、いかにも彼女なんていなさそう・・・ おじいさんが着るような、お尻まで隠れる長めのよれよれカーディガンを着たこのミュージカルオタクは、お母さんが遠い昔にくれたという、1920年ミュージカルのいわゆるサントラ版を繰り返し聞くのが楽しくて仕方ないというヘンな奴だ。 古いレコード(今や死語?)を大事そうにプレーヤーに乗せ、針を落とす。

男は客席の私達に向かってあれこれとミュージカルのうんちくを語る。それがまさに今舞台を観ている私達の状況を言い当てていて、妙におかしい。レコードから音楽が流れ、彼のオタクな解説が始まると共に、アパート内部がミュージカルの舞台に変貌していく。あっという間に私達は「The Drowsy Chaperone」というミュージカルの世界に入ってしまうのだ。

おかしいのは、この男はこの芝居を観た事が無いという。知っているのはこの古いレコードに入った曲の数々と、そこから推測される単純なストーリーのみだ。つまり、私達が観ているこのミュージカルは、いつもこのオタク男が頭の中で作り上げている夢の世界、想像のミュージカルなのだ。

人気のショウガールが、真面目な男と恋に落ちて結婚するというその当日。彼女は彼を愛しているものの、自分が手にしていた華やかな人気女優としての暮らしを捨て去っても本当に悔いがないのか、後悔しない程彼にちゃんと愛されているか不安を拭いきれていない。また、彼女のショウのプロデューサーは、本当は彼女に辞めてもらっては困るので、密かにこの結婚をブチ壊す事はできないかと画 策する。あとは大袈裟なコメディーであちこちで勘違いやラブロマンスが発生する、、、、

とにかくみんな全ての役が大袈裟!
それがまた歌やダンスの幅になって、技術のレベルが大袈裟加減に負けていない。だから進行するにつれて、どんどんレベルアップするし、ヒートアップする。 オタク男は、「それでね、」「ここでね、、」といかにもこのミュージカルが大好きといった興奮ぶりで、私達観客を舞台の世界に巻き込んで行く。(ちょっとウザイのがリアルで笑える)
楽しい歌、ノリノリのダンス、ウィットな台詞の連続で、2時間まさに笑いっぱなし。皺が200本位増えたかも・・・ 台詞の中身はロンドン公演用にちゃんとアレンジしてある。

ロイド・ウェバーのような高尚なステージでもなく、心揺さぶられるドラマチックなストーリーでもないけれど、とにかく、とにかく「楽しい! 結婚式当日の話とあって、ちょっと結婚に対するシニカルな分析もあったりして、思わず「そうそう、、」とうなずきながら笑ってしまう。ちなみにこのオタク男、実は以前結婚していたという事が劇中で判明するのだけれど・・・

休憩無しの2時間弱というのは、観客を引き付けておくギリギリで成功してる。短い中にもちゃんとトーンのメリハリがあって、退屈しない。やっぱりね、ミュージカルの原点は、「楽しい」っていう事。 最近のテロの事も、今日仕事であった嫌な事も、降ったりやんだりの雨ばっかりで帰りが心配な事も、ぜーんぶ忘れて、2時間が幸せならそれで良いじゃない!?っていう気分にさせてくれた。

エレイン・ペイジは確かに大型ミュージカルの時のような単独主役では無いけれど、彼女の舞台での歌はやっぱり絶品!カンパニーでの芝居だからこそ、本当に技術のある人達がちゃんと演じないと、中途半端じゃ成立しない。一流レベルが、遊び感覚で大袈裟に歌い躍るからこそ「夢のような空間」が創れる・・・・オタク男のアパートが、ほんの2時間の間は夢のステージを繰り広げる劇場になるのだ。

カーテンコールで立ち上がったのは何年振りだろう・・・?
良かった」だけじゃ立ち上がれない。「楽しかった」でも「素晴らしかった」でも、ほとんど立ち上がるまではいかない、、、
何だろう、、立ち上がって拍手する時っていうのは、「脱帽の念」とか「深い敬意」とか、そういったものが自然と立ち上がらせるんだよね〜・・・今日は立ち上がりました、理屈抜きで

2時間で£55-00なのも納得。衣装も装置も贅沢!金かかってるよ〜!! 衣装が一番お金かかってるんじゃないかなあ〜 こんなに小さなカンパニーなのに。 劇場は最近改名されたNovello Theatre。102年前に建てられて、以前はStrandの名称だったこの劇場は横25列の小さな劇場だけど、ぴったりだった。早々に幕を閉じる事が決まっちゃったのは残念だけど、「楽しければ、幸せじゃない?!」っていうミュージカルの醍醐味を堪能できた2時間でした!!

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