せっかくのホリデーだというのに怪我人の世話がなんだかんだとかかる毎日・・・せめて映画でも観るべ、、と思って近所の映画館をチェックしてみる。せっかくだから平日の昼間、安い時間で人が少ない時がいいなと思って「何をやってるのかなあ〜?」と、15もあるスクリーンの演目をつらつらと見て行くと、なんと一日に一回だけの上映というちょっとシケた感じの映画があるよ。金曜・土曜は朝11:15と夜21:30の2回だけれど、それ以外の日は朝の11:15一回だけの上映だ。きっと思い切りマイナーな映画か限定上映なのかな、と思って通り過ぎようとした時、そのポスターの絵柄に目が止まった。
あれ?って思ってみて見ると、タイトルはDragon。でもポスターの写真に映っているのは金城武さんだ。っていうか、去年公開されたという映画のポスターにあった金城さん扮するキャラクターの顔だった。でもDragonなんて映画だったか?・・・チェックしてみると、原題は武侠(Wu Xia)、日本公開時のタイトルが「捜査官X」というやつだった。それにしてもこれがさらにDragonって・・ でも久しぶりに金城さんを観に行こっという事で行ってみた。
いやいやこれが、思ったより見ごたえあったのでした
それにしても邦題の「捜査官X」も英語題の「Dragon」も的外れてるよなあ〜〜 やっぱり原題の「武侠」が一番やっぱりハマっている。実はこれ程本格的なアクション映画だとは思っていなかった。金城さんが演じるのが素朴な事件捜査官と聞いていたので、ピーター・チャン氏の映画だからヒューマンドラマ色が強いミステリーものかと勝手に思っていた。主演のドニー・イェンという人の事も全く知らなかったし・・・
素朴な田舎の村で起こった強盗事件、たまたま現場に居合わせた実直な紙製職人が無我夢中で自己防衛の為に手足を振り回しているうちに強盗を退治して(死なせて)しまったという事で、一躍村の英雄になる。でもこの事件を調べに来た捜査官シュウは、素人の自己防衛ではなく、武術に長けた人物による的確な致命攻撃だったのではないかと疑問を持ち、村の英雄となったジンシーを問いつめていく。やがてジンシーから彼は殺人犯として10年服役していた前科があり、新しい人生を求めてこの村に落ち着き、家庭をもったのだという告白を得る。昔、子供だからと見逃してやった犯罪人がやがてもっと惨い殺人事件を起こした現実を体験していたシュウは、法による正義というものにあくなき執着を持っていた。その正義感ゆえに、 不正を働いた義父を自殺に追いやり、妻との間に取り返せない溝ができてしまっていたのだ。
最初は正義を追うシュウと新たな人生の幸福を守ろうとするいわば、ジャン・バルジャンとジャベールのような話かと思った。ところが話が進むにつれてもっと重くなって行く。ジンシーは実は72 Demonsという暗殺集団のナンバー2でボスの息子でもある=タン・ロンだったのだ。人情のカケラもない父と一団にそぐわず、穏やかな生活を求めて素性を隠してこの村に落ち着いたのだった。妻のアユーと2人の息子とのかけがえの無い生活を守りたいジンシー。そして行方をくらましていたジンシーの所在を知った72Demonsとの命がけの戦いが始まる。この一連のアクションシーンはドキドキする躍動感とスピードに溢れていて、ハラハラ/ドキドキ感で盛り上がった。父と子の絆とすれ違い、拭いきれない過去と切望してやまない新たな人生。無敵の武術の達人も自然の力の前にはあっけなく終焉を迎える結末。
アクション映画でありながら、ミステリー仕立てで、各々の立場でのヒューマンドラマになっている。金城さんはこの役では語り部的な脇役と言えるけれど、その素朴な存在感がアクションシーンの躍動感と良いコントラストになっている。ちょっととぼけた金田一のようで、実は医学的検証をもとにジンシーの正体を見抜いて行く。正義を曲げないという自分の信念とは裏腹に、金次第でしか動かない捜査上層部へ不信感を抱いたシュウは、ジンシーを72Demonsから逃がすために危険な賭けを持ちかける。
中国映画が海外でヒットするにはやっぱりじっくりと重みのあるヒューマンドラマか、徹底したアクション・エンターテイメントのどちらかが必要だ。この映画は一時間半という小振りな時間の中にその両方とさらにミステリーが加わっていて楽しめる。期待してなかったのでちょっと得した気分だわ。田舎の村の素朴な暮らしの様子、そこに住む大人、老人、子供達。チャン監督の出す画面内の空気のメリハリがすごく良い。のどかさ、混乱、大アクション、不気味な危機感、ストーリーのメリハリと同時に各キャラクターのメリハリでもある。主演のドニー・イェンは、素朴な村人としての顔と殺気を出す時の表情が画面の空気を変える。
チャン監督は何度も金城武さんを起用しているけれど、彼の金城さんの使い方はいつも巧い。実は私は金城さんは日本映画での彼がとても好きなのだけれど(「死神の精度」「リターナー」「不夜城」「K−20」等)中国映画ではピーター・チャン監督作品での彼がいつも良いなと思う。金城さんの持つ空気を画面に溶け込ませるのが巧いのだ。
それにしても忘れてたよ、、、中国映画の英語字幕は地獄の早読みを課せられるのだった・・・シュウが昔逃がした子が後で殺人犯になって、その後にシュウ自身が自分に鍼を打って、、、ってあたり、ちょっと不明な点が・・・ミステリータッチに乗っ取って、自分で「こうなのかも、、、」なんて考えてる間に字幕はビュンビュン飛んで行くのだった!
休みの間にネットで映画でも観るかな〜