いつか誰かがこれを滑ってくれるのを、ずっとずっと待っていた。
坂本龍一さんの「嵐が丘」でのアイスダンス。
イギリス文学で必ず登場するエミリー・ブロンテの「嵐が丘」は何度も映画やドラマになっているし、ケイト・ブッシュがその天才ぶりを示したデビューシングルにもなっている。坂本教授が音楽を担当したのは1992年の映画で主演はレイフ・ファインズとジュリエット・ビノシュだった。数ある「嵐が丘」の中でも私の一番はこの映画だ。(ローレンス・オリビエも素晴らしいヒースクリフだったけれど、映画が中途半端に終わっている)
実は映画が公開された当時のフィギュアスケートといえば、今のように全ての選手の演技を見られるということはなくて、小さな大会なんかは誰が出ていたかも知らないし、インターネットは無かった時代だから、本当に世界選手権のトップにくる人たちしかテレビで見ることはなかった。だからもしかしたら映画の当時に誰かこの曲を使った人がいたのかもしれないけれど、私は今まで知らない。そして、ずっとずっと、これをアイスダンスで観たいと思い続けてきた。だから、今回中国杯でのギレス・ポワリエ組の演技には震えるほど感動した!
実はあまりにも追いかける時間が無くて、カナダ大会は男子と女子しか観ていなかった。中国杯で初めて観て思わず「きた〜〜!」と叫んでしまったよ、、、、嵐が丘は、文学作品としては未熟な部分が指摘されたり、タイムラインがちょっと解らなかったりする所もあるのだけれど、なんだろう、、田舎の女の子がよくこんな小説を書いたな、というくらい揺さぶるものがある。未熟な恋からの裏切り、復讐、愛憎、、そして死を越えた愛、、、ヒースクリフとキャサリンがどんな風に氷の上で表現されるのか、本当に長く待った甲斐があったというもの。今シーズン通してまた何度がみられるのが楽しみだ。
坂本さんの音楽が今もいろんな所で行き続けているのを目にするのは嬉しい。私の青春時代の活力だった彼の音楽達。芸術は死なないのだ、、、、
そして女子が大逆転劇の日本選手の金、銀!もちろんまだまだ伸び代あっての結果だし、ルナ・ヘンドリックス選手はかなり体調も思わしくなかったそうで、でも表彰台だからファイナルには行かれるかな。今季は新たな混戦シーズンになりそうだ。16歳がシニアに入れるのは今年までだから、来年にはもっとジュニアのトップとシニアの差が縮まっていく。ロシア抜きでも3Aや4回転が入ってくることになるのは見ものですよ、、
今はまだ国際試合に出られないロシア勢だけれど、次のミラノのオリンピックの時にはどうなっていることやら、、、
そして男子はアダム君の優勝!今季の彼は本当にジャンプが飛躍的に安定して素晴らしいね。宇野昌磨選手でさえ「アダムが優勝して喜んでいるのがうれしい」という位。いやいや、昌磨さん、あなたも素晴らしかったですよ。ショートはいきなり105点越えの首位発進で、でも滑り終えた時の顔が、イマイチな印象だった。うまくまとめてしまったけれどもっとできる、、みたいな。そして対象的だったたのが、フリーだ。冒頭の4Lでは転倒だったけれど、でも彼自身の意識が途切れていないのが見えた。「よし、集中してる」と思ったので、次の4Fが2Fになったのも、良い判断だったと思う。昌磨さんはジャンプをパンクすることがほとんど無い選手だ。どんな時でも「締める!!」でもプログラムの世界観を表現したいと思うのが優先なら、あそこは転んではいけない所だった。最初の4Lの転倒は回転を利用してすぐに立ち上がれたけれど、転びかたによっては完全に曲から切れてしまう。あれは2Fに開いて正解だったと思う。
ずっと感情が途切れていないのが解った。ステップがレベル3になったのはこれからのステファンとの修正にまかせるとして、何よりも滑り終わった時のにっこりと笑った彼の顔が素敵だったよね。ジャンプの失敗なんて、普通にいつもよくあること。インタビューでも「昨日は運良く跳べましたし、今日は上手くいきませんでしたけど、、」みたいな事を述べていて、今の昌磨さんは「なにがなんでも試合でジャンプを決める」という事に固執していないのは明白だ。
滑り終わってからもK&Cでもずっと楽しそうで、ステファンもまあ納得の滑り出し、という事を言っていた。それにしても、このプログラム、失敗した2本のジャンプとステップのレベルアップを考えたら軽くあと30点以上は出せるプログラムだという事を知らしめてくれた。シーズンを通してどこまで完成形にもっていけるのか、これは本当に楽しみしかない。だから、これからも練習を楽しんで!と応援する!
ちなみに表彰式でのメダル確認も本当に彼らしくて笑った。昌磨さん、今までにいくつ表彰台でメダルをもらってきたんだよ?、、、チラッとじゃなく、アダムのメダルをしっかり覗き込んで確認している姿は、本当に昌磨さんの学ぶ姿勢が見えるよね。自意識に縛られずに素直に成長していく人だ。3位のミハイルが気づいて「??」の顔で昌磨さんを見てたね。
今週末はフィンランドだけれど、ジュンファンが欠場との頃。今年のGPはあちこちで欠場が相次いでる。みんなコンディションを整えて、また一同に会してくれますように。今年のファイナルはどんな顔ぶれになるのやら、、、ペアやダンスはわかりやすいけど、男子と女子は混戦だなあ〜。