日本の映画で去年気になっていたのが、蜷川実花監督の、「ダイナー」だ。予告だけはyoutubeで見ていたのだけれど、実花さんは画面も役者もとにかく美しく撮る人なので、ハードな中にも(殺し屋専用のレストランらしい)美しさとカッコ良さが垣間見えていた。そしてキャスティングの顔ぶれが何といっても楽しみだった。
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藤原竜也くんがまだ10代の時に、その才能に嫉妬してからずっと応援している私としては、 どうしても映画での藤原竜也がいつも役不足に感じてしまう。深作欣二監督の「バトル•ロワイヤル」と三池崇史監督の「さぶ」以降、どうしてもアイドル売りっぽかったりマンガチックだったり、もちろんそれでも目を引く演技をしているのだけれど、彼はやっぱり「生かされて光る役者」なのだと思う。彼が生きる本を与えられて、自然に持っている演技力を引っ張り出す様な演出に出会うと、底力を発揮する。だから、蜷川幸雄という演出家は藤原竜也という役者にとって特別だったのだろう。

自分自身の人生を持てないでいるかな子(おおば かなこで大馬鹿な子)は一目惚れしたメキシコの街に行くお金を調達するためにやばいバイトに引っかかり、命と引き換えに、殺し屋専門のレストランにウェイトレスとして放り込まれる。レストランのシェフ、ボンベロは元殺し屋だったのを、前オーナーのボス、デルモニコに拾われ、足を洗って天才シェフとしてレストラン「Diner」を任されている。シェフが元殺し屋なら、ここにくる客も全員が殺し屋、という世界。

とにかく実花監督の絵は色のこだわりが凄い。1カットの中の色のバランス、それぞれの色の配分が彼女らしいというか、特徴的だ。これは写真家としての蜷川実花が、初期の頃から誰とも一線を引いた色づかいの絵を表現して認められてきた、彼女の武器と言ってもいい。そして、背景の絵も、役者たちも美しく彩られている。髪型、メイク、衣装全てにおいて乱れても美しい絵になる様に。

主演は藤原竜也と謳っているのだけれど、ストーリーの主人公はかな子だ。演じている玉城ティナさんはモデル・アイドル系の方の様で、確かに滑舌も巧くはないし演技力は弱いけれど、その表情が絵になった時にパワーがある。これがモデルさんの持つカメラに向かう力、というのだろうか。可愛いなあ〜〜、、
初めは自分の人生、存在をほとんど感じさせないキャラクターだったのが、「ダイナー」で目の前に繰り広げられる血みどろの場面を潜り抜けるにつけ、どんどん芯が太くなっていく。

どうしても見ていると蜷川幸雄さんを思い出してしまう部分も多い。亡き親分、デルモニコの肖像は蜷川さんご本人のが使われているし、少しだけ回想で登場するシーンでは、井出らっきょさんが演じている。らっきょさんは蜷川さんの舞台にも出演しているし、稽古中に蜷川さんの物真似をしてご本人に「それは俺か〜?不愉快だなあ〜」と苦笑いされていたりした。本当にそっくり!ボンベロの「俺を見つけて育ててくれたのはデルモニコだ」は素敵なトリビュートだし。

小栗旬演じるマテバが殺されているシーン、まずキレイな花に彩られた水面が映り、私はその瞬間にミレーの「オフィーリア」の絵を思い出した。そうしたら次にはまさにオフィーリアよろしく水面に浮かぶマテバの死顔が、、、、かな子が死を意識することでどんどん強くなっていく様は「ロミオとジュリエット」のジュリエットの様だったし、意図してか、無意識にか、やっぱりお父様の血を実花監督の中に感じた。

武田信治さんは、もうクレジット見るまで誰だか解らなかった!!ぶっ飛んだ役は結構うまいんだよね。本当はこの人ももっと観たい役者だ。やっぱりぶっ飛んでいた90年代のドラマ「チャンス」とかも面白かった。ちなみに彼が演じた大島渚監督の「御法度」での沖田総司は、大河「新撰組」での竜也くんの沖田総司と並んでダブルベストだと思っている。

お年を全く見せない真矢みきさんの迫力は、やっぱり元宝塚男役!片眼のカラーコンタクトといい、実花さんのセンスが光ります!ぐちゃぐちゃでも、血だらけでも、とにかく美しく、それでいて実はかなりハードボイルド!

藤原竜也さんをカッコ良く魅せることができるのは、やはり昔から役者としての彼をよく知ってのことだろう。絆というか、確固たる信頼感が画面から伝わる。舞台で見る彼は黙っている時の表情だったり動いていない時の背中から感情が見えてくる様な演技をする時があって、それをカメラで拾うのはなかなか難しいと思う。私が映画での藤原竜也に今一つ「違う」感を感じるのはそのせいかもしれない。一見浮世離れしたこのストーリーの中で、ボンベロのかな子を見る目が少しずつ変化していく。実花さんは美しくそれを撮ってくれている。だから、最後のシーンのボンベロの安らいだ表情での抱擁はそれまでの派手な色使いの血飛沫舞い踊る場面から打って変わって自然色に見えるのだ。

監督デビューの「さくらん」から蜷川実花監督の映画は見ているけれど、どんどん良くなっていく。これは元々が漫画という原作があっての作品だけれど、もっといろいろなジャンルの作品を撮れる監督になってくれると嬉しい。

普段は娯楽映画はあまり興味がないのだけれど、面白かったね。ずっと白の衣装だったボンベロが、最期にメキシコのかな子の店に来た時には黒の衣装だったのも印象的だった。白のロングの衣装はローブの様で、「キリストか」と思うと、最後の衣装は「神父か?」という感じ。

そういえば小栗旬さんの太宰治の作品もあったはず。太宰も「人間失格」も、どちらかといえば嫌いなのだが、観てみるかな、、、、