役者がキレた!!

キャパ200のスタジオシアターで、3−4列ほどの客席がステージ空間を取り巻いている状態で、携帯が鳴る、、、最初は10回程して鳴りやんだのだが、流石に2回目の時には役者が芝居を止めて「頼むから携帯をチェックしてくれ!皆んな確認してしてくれよ、それまで待つから!!」と大声でで訴えたのだ。舞台と客席がとても身近な空間だからこその出来事に、客席からは「よく言った!」のかけ声と拍手が起こった。もちろん私も同意の拍手。当然だよね。

なんだかとってもリアリティーのある芝居を観てしまった。親子3人と若い愛人の4人芝居「Honour」

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シチュエーションは、いわゆる「よくある話」。32年間連れ添った夫婦で、特に夫婦仲に問題があるわけでも他に理由があるわけでもなく、単に50過ぎのおやじが老いらくの恋に走ってしまって家庭が崩壊してしまう、、、、、

人気ライター・コラムニストのジョージと妻のアナーは大学生の娘・ソフィーとなんの支障もなく愛し合って幸せな生活に満足している。ところがある日ジョージをインタビューしに来た若いライター志望のジャーナリスト、クローディアの出現で状況は一転してしまう。

ジョージのファンだという彼女は若く(まだ29)独立心があり積極的で、そんな彼女に50代半ばのジョージは若かりし日の情熱を呼び起こされて恋に走ってしまうのだ、、、、、

妻のアナーは元々才能のある詩人作家だったのだが、ジョージと結婚してからは家庭に入り、ひたすら妻として母として支えてきたのだった。

安定した平和な日々をひっくり返そうとするジョージにアナーは驚き、傷つき、そして怒りをぶちまける、、、「君に不満があるわけじゃない、でも無くしたものを取り戻したいんだ、それは、情熱だよ!」「じゃあ、情熱は愛なの!?」

新しい季節の突風のように自分の中に入り込んできたクローディアに、このまま老いるのではなくもう一度生きている情熱を取り戻したい、という実にクラシックな老いらくの恋、、、、

アナーは始めは信じられず、混乱し、そして傷つき悲しみ、それでも怒りを通り越して離婚が具体的になってくると、自身のこれからを考えければならなくなる。結婚前のアナーの作品の大ファンだというクローディアは、「彼と別れてまた素晴らしい本を書くことがあなたにはふさわしい」と持ちかける。

仲の良い両親の元で愛されて育ったソフィーは、よもや自分の両親が別れることになるとは思いもしなかった。しかも父の新しい愛人は自分と4ー5才しか違わないという、、、、クローディアに会いに行ったソフィーは、物事をクリアに見つめて迷わないクローディアに、自分の不安な気持ちを打ち明ける。「私をいつも愛して守ってくれていたものが壊れてしまう」

ひとつひとつの会話はとてもリアルで、見ているほうは随所でうなづいてしまう。この小屋はキャパ200のスタジオで、客席は舞台の4方をかこんで設置されている。とても身近な空間だ。今日の観客は9割り方が40代から60代のカップルという感じだ。32年経っていきなり違う人生を考えるという現実をリアルに理解できるのだろう。

クローディアは色仕掛けで誘惑するわけではなく、彼女自身もジョージに惹かれての事だったのだが、やがて彼女も気づくのだ。「自分は愛される事を愛しているのだ」と、、、

結局4人は別々に歩き出さなければならなくなる。でもみんな其々が前向きに。アナーはまた新しい本を書き、ソフィーの大学の卒業式にジョージと揃って出席する。今はよき友人として。

結婚して数十年も経つと確かにもう生活に大きな変化は望まなくなるのかもしれない。年齢と共に安定を求める、、?子供がいればなおさらだ。この作品のタイトルは「Honour」作者はオーストラリアの人だそうでスペルがイギリス式なのだが、妻の名前はHonor=アナーなのだ。実はプログラムを見るまで「Anna=アナ」だと思って聞いていた。

若いソフィー役の人以外の3人はみんなイギリスでの演劇賞を受賞したことのある実力派だ。そんな役者たちがこんな小さなスタジオシアターにいるというのがロンドンで芝居を観る特権なのだが、リアルな会話が時に可笑しく、時に悲しく、時は考えさせられてしまう。本が書かれたのは90年代とのことだけれど、こういうテーマは時代を選ばない。

最初に書いた携帯事件はジョージが娘に自分の気持ちを説明しようとするシーンで起きた。並んで話し出した所で2度目の携帯音が聞こえて、流石にこの後の感情的なシーンに集中したかったのだろう。時間をにしたらほんの30秒ほどだったけれど、すぐに何事もなかったように芝居を続けた。休憩後、2幕の前に舞台監督から確認の注意があって、2幕は事なきで進んだ。

私にとってもなんだか考えてしまう芝居だった。今の人生でこのままでいいのか、、、??今から新しい自分を生きたいと思ってしまうことも現実にはあるよね。人生が半分を過ぎたのだと思うとよけいに、、、こんな芝居を見て、わけもなく「別れよう」なんて思ってしまう人もいるのかもしれない。(私だけか、、??)

「愛している」ってどういう事なのか、、、そこにあるもの、与えるもの、見つけるもの、包まれるもの、奪うもの、無くすもの、

まあ、長年夫婦をやってる人なら誰でも多少は思ってるんじゃないかな、
あ〜〜、一人になりたい!! って、、、、??