久しぶりの更新かな、、、あっという間にもう4月、なのに気温はやっとここ2−3日で二桁になるようになった。でも待ちきれないとばかりにあちこちで桜が咲き始めている。芝居を観に来たら、思いがけず劇場裏に小さな桜並木があってびっくり。幕間に一人で夜桜見物
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私の好きな小振りの劇場、Hampstead theatreで芝居を観て来た。チケットを取った時は気がつかなかったけれど、なんとこの月曜日はイースター!地下鉄のエンジニアリング工事があって、この劇場の真横にある駅を通るラインはサービス無しまいったなあ〜〜、、、という事で電車と地下鉄とバスを乗り継いで出かける

Stevie」というタイトルのこの芝居は、1930年代から60年代にかけてイギリスでそこそこの活躍をした女性詩人、Stevie Smithの自伝語りのような作品だけれど、彼女の事は私はもちろん知らなかったし、あまり一般的には有名な人ではない。というのも、活躍していた時代には知られた人だったけれども、亡くなってからも名を残すタイプの人ではなかったようだ。そんな彼女の事を芝居にしたのはHugh Whitemoreという人で、彼女に会ったときのちょっとエキセントリックで子供のような話し方・仕草の彼女にインスピレーションを受けたという。

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登場人物は3人だけ。ちなみにスティーヴイーというのは本名ではなく、学校時代についたあだ名だそうで、幼い頃に北ロンドンのPalmers Greenにやって来て以来、すっと叔母と暮らしている。家族を顧みずに海に出た父親、病弱で若くして亡くなった母親、学校時代の自分、「死」というものに幸福を感じていたという彼女自身の事を叔母との会話の中で同時に観客に語って行く。結婚には興味がなく、ボーイフレンドとも最終的に友人関係を求めてプロポーズを断り、やがて詩人としてデビューし、物書きとしてそこそこに成功して行く。

舞台になっている彼女の家があるPalmers Greenは実は私が働いている場所だ。70年代以降はキプロスからの移民が大きなコミュニティーを作って移住して来た為、今ではトルコ系、ギリシャ系の人で出来上がっているようなエリアだ。でも彼女の頃はまだ生い茂る森が残る「ロンドン郊外」で、ちょっと都会から離れて、でも田舎ではない雰囲気の街だったようだ。そこで、スティーヴィーは叔母と二人でくらし、詩人として文学界に人脈を広げ、エリザベス女王から文学への貢献者としてメダルも授与される。

一幕、二幕とも1時間の芝居のうち、スティーヴィーの台詞がゆうに8割以上占めていると言っていい。後は叔母との掛け合いや、彼女の人生に登場する男性達(婚約者や友人達)を男優一人が語り役もかねて演じている。若い頃から70歳で亡くなるまでのStevie Smithを思い出や自分の思いを語る事で綴って行く。

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私はこんなシンプルな芝居が好きだ。一人の女性の生き方、考え方を周りの目からも盛り込んで観客に語って行くだけの芝居なのに、飽きがこない。これは本を書いたWhitemore氏の手腕だ。主演のZoe Wanamakerはイギリスではよく知られた実力ある女優さんで、その語りの巧みさは観る側が「よく途中で寝なかったなあ」と思わずにいられない。場面毎に年を取って行く演技の細やかさも観ていてすぐ解る。

なんといっても小さな劇場の良さは舞台の役者が手の届くような距離にいる事だ。役者も観客全体に直接語りかけるので、聞いていて思わず「うん、うん、」とうなづいてしまったりする。こういう本は役者が巧くないと全然面白くない作品にもなりかねないので、このキャスティングは成功している。シンプルな芝居で誰かの人生と出会うには丁度良い

この芝居、初演の時はオスカー受賞者で今では下院議員の政治家、グレンダ・ジャクソンが演じたそうだ。ちなみにジャクソン氏はこの劇場があるHampstead地区の代表議員。実在したStevie Smithの写真をみると、グレンダ・ジャクソン氏によく似ているのでちょっと驚き・・・・