11月は結局芝居は観ずじまいだった・・・なんだか仕事に追われて気づけばもう12月、クリスマスで盛り上がり始めている。

今まで利用していたアマゾンのレンタルDVDをキャンセルしてオンラインでのレンタル鑑賞に変えた。期限無しで良いというのは気楽だったけれど、やっぱり観る時間が少ないと、どうしても最低でも会員としてかかる利用額がもったいないので、観たい時に観た分だけを1本毎に払うInstant videoのほうが私には都合が良い

ローマン・ポランスキー監督の「Venus in furs」(毛皮のビーナス)を観てみた。ポランスキー監督の映画は結構好きなので、新作が出ると観る事が多い。19世紀に問題作となったこの作品の作者、マゾッホの名前は、その作品の性質から、虐げられる事で性的満足を得る「マゾヒスト」の語源になっている。

登場人物は2人。設定は舞台のオーディションが行われるパリの劇場。マゾッホの「毛皮のヴィーナス」を上演するため一日かけて主演女優のオーディションをしたものの、使えない役者ばかりで、すっかり疲れきって帰ろうとしていた演出家のトマの前に、大遅刻の上に半分酔っぱらったごり押し女優が「私もオーディションして!!」と駆け込んでくる。雨に濡れて髪はバサバサ、服装はアウトロー、原作の本の題名をロックバンドの曲名と勘違いしているというとんでもない迷惑女優に、トマは拒絶反応を隠せない。

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それでも「駄目だ!」「お願い!」の押し問答の中で、トマはこのごり押し女優が作品の主人公と同じ名=ワンダで、しかもまだ一般には渡っていないはずのフル上演台本を読み込んでいる事に気づく。台詞を諳んじている上に、オーディション用の衣装まで持ち込んでいる。
ワンダの語気の強さに押され、とうとうトマは台本の数ページを読み合わせする事に応じる。さっさと衣装を身につけて、台本を手に舞台に立ったこの女優が、実はトマの描く作品の主人公に重なる事に驚きながら、最初は数ページだったはずのオーディションがどんどん進んでいく・・・

演出家と女優として本に対する意見をぶつけながらトマとワンダは役を演じていくうちに、次第に二人の心理関係が本の中のクルジェムスキーと若き未亡人ワンダに重なって行く。やがて、トマ/クルジェムスキーは彼女に虐げられる事を願い、奴隷となる契約を交わすシーンで二人の強弱関係は完全に逆転する・・・

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舞台作品のようだ、と思っていたら、この映画は原作本というよりは、オフ・ブロードウェイで上演された舞台版の「Vinus in furs」を映画化したものだそうだ。演出家とごり押し女優という立場が、台本を読み込んでいくうちにどんどん強弱関係が現れて、最後にはエロティックで摩訶不思議なマゾッホの世界に堕ちて行く。台詞の掛け合いもよく、作品の世界からいきなり「プロの芝居屋」に戻ってキャラクターを批判したり意見したりする二人の現実と非現実の交錯が巧みだ。頭と感情が交錯するうちに、底から湧いてくるような官能を実力派の二人、エマニエル・セニエールとマチュー・アマルリックが演じている。

この二人はThe Diving Bell and the Butteflyで共演しているが、すてきなケミストリーを持っている。Diving...ではマチューは事故による脳溢血のため、閉じ込め症候群になってしまった元編集者、エマニュエルは献身的な妻を演じていた。007でのマチューは狂気をはらんだ悪役で、その大きな目を最大限に生かしていたっけ。

ポランスキー監督の妻でもあるエマニュエルは今までにも彼の作品で、官能的な魅力を振りまいてきた。年齢的にどうか、、?と思ったけれど、どうしてまだまだ素敵なものです。1時間半という時間の中での閉ざされた世界。どちらかというと、前半のほうがテンポ良く、作品と現実の行き来がうまく使われていて、後半はどんどん非現実の世界に引きずり込まれていく感じ。「どうやって終わるんだ?」と思っていたら、これまた摩訶不思議なまま(突っ込み満載状態)で劇場の扉が閉じる。最後の5分程の部分はもうちょっと違う方法もあったような気もするけれど・・・

そういえば、ポランスキー監督はヤスミン・レザの「God of Carnage」も映画化したっけ。舞台を観ていた私は、なんとなく映画のほうがピンと来なかったのだけれど、今回は逆にこの舞台版を観てみたいと思った。

作品としては小降りで、むしろ「Bitter Moon」(邦題は今調べたら「赤い航路」だそうだ、、???)のほうがもっと愛憎と官能が結びついて傑作だと思うけれど、エマニュエルとマチューのコンビでこの映画を撮ったのは正解だと納得。

マチュー・アマルリックを007で観たときは、「三上博史さんに似てるなあ〜」と思ったものだけれど(特に目が)、この映画の日本公開用の宣伝を三上さんがナレーションしていると知ってびっくりしている。でもこの役、三上さんにも合うかも。舞台上演するなら是非三上さんで観てみたいね。ワンダは、、、日本の女優さんじゃ無理かなあ〜〜