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今回観た芝居、「The Pride」については全く白紙で観に行った。はじめはスルーしていたのだけれど、レビューの星が多いので急遽チケットをゲット。トラファルガースタジオは改装して以来だ。客席への入り口と最前の数列周辺がちょっと変わった。 

このThe Prideという芝居、手っ取り早く言うとゲイ=同性愛のありかたが時代と共にどう変わったかという事を50年代と現代の2つの話を交差させて描いている。実は私は最初の2場面で混乱してしまった。2人の男と女性一人、という関係を違う年代で演じているのを、同じ人達の現在と過去なのか、、と最初に思ってしまったのだ。というのも2人の男性の役名が同じだから

50年代設定のほうは、イラストレーターとして働く妻=シルビアが出版社のボスに当たるオリバーを夫のフィリップに紹介しようと家に招き、3人で食事に出掛ける事になる。そしてなんとなくぎこちなくもお互いに好感を持った感じのオリバーとフィリップ。そして場面は変わり、出張ゲイボーイサービスで呼んだナチの将校とのプレイ中の現代のオリバー。彼は一緒に暮らしていたフィリップと別れたばかりだ。セックス依存の気があるオリバーはしょっちゅうバーやクラブで知り合った男をお持ち帰りしてしまったりして、フィリップはとうとう耐えきれずに出て行ってしまったのだ。プレイに集中できないオリバーは女友達(シルビア?)を呼んで泣きつく

この時点でこの2組が同じ人達の過去と現在なのか、、、??と思いきや、これは名前は同じだけれど全く違う3人の関係を違う時代の視点で描いているのだった。 

50年代はまだ同性愛が法律で禁じられていた。たとえプライベードな家の中でも、それらしい振る舞いをしていると解っただけで逮捕されてしまった時代。フィリップとオリバーはお互いに惹かれるものを感じながらも、フィリップのほうはどうしても自分が同性愛である事を許す/ 認める事ができずに否定し続ける。オリバーは自分に正直にフィリップにも本来の自分を認めるようにぶつかっていく。自分の本来の欲望と世間体の間に挟まれて苦しむフィリップは、とうとう洗脳治療を受けに行く。同性愛というものを考えるだけで拒否反応を起こし、気分が悪くなって吐き気を催す、、という治療だ。これは「時計仕掛けのオレンジ」にも出て来る実に醜悪な治療だ。女性の勘で、夫の性的嗜好に気が付いてしまったシルビアは、一人オリバーに会いに行き、ある日夫が眠っている間にひっそりと家を出て行く・・・

セックス依存症でフィリップに去られた現代のオリバーは、それでもフィリップの事があきらめきれずになんとかよりを戻したいとシルビアに相談する。この2人の関係はあくまでも友達なのだけれど、観ていると姉弟のようだ。彼女にはれっきとしたイタリア人の彼氏がいて、デートの約束もしているのに、オリバーに泣きつかれると放っておけずに面倒をみてしまうのだ。そして最終的にはフィリップをさそって3人でピクニックに出掛ける。奔放なオリバーに愛想をつかしたフィリップだったけれど、やはり気持ちの上ではまだオリバーとやり直す余地がある事に気付く。「今度はイタリア人の彼氏も一緒に4人でピクニックしよう!」と盛り上がる3人・・・

今でこそ英国では同性愛同士の結婚ができるようになった。同性同士の関係でも夫婦と同等の権利が少しずつ認められるようになり、今ではゲイだからといってコソコソする必要もない。もちろん家族や回りの反応を考えたらカミングアウトするのは容易でない事は変わらないのだろうけれど、それに対する回りの受け入れ方は随分変わった。私にもゲイの友人は何人かいる。みんな普通に良い友達だ。(そして、何故かゲイの人にはハンサムが多い、、、残念な事!!)でもどうしても本当の自分を認められずに、不幸な結婚をしてしまった人や 、悲劇的な事態を招いてしまったケースも多々ある

この芝居自体は別にゲイを称賛しているというものではなく、あくまでも2つの時代においての男2人と女一人の関係を芝居にしているにすぎない。結婚ー家庭をいうものがモラルとしても社会的立場においても重要だった時代には、同性愛を隠して結婚するというのは自分の一生を暗闇の中に閉じ込めるも同然だったに違いない。それでも男たるもの、一家の主である事を期待されたのだ。

今でこそ、結婚しない自由が受け入れられるようになった。 仕事のためでもいいし、単に気楽な独り身でいたいという言う事でもいい。結婚して家族をもたなくてはいけないという重圧が昔に比べるとずっと軽くなった。もちろんどちらがよいかとは言いきれない。本来人間社会を営むための家族制度というものが崩壊してしまうのは社会的にもマイナスだ。ただ、人として本来の自分に誇りを持って生きていかれるかという事だ

オリバー役のアル・ウィーヴァーが素晴らしい。ゲイといってもいろんなタイプがいる。この2つのオリバーは時代と性格は違えど、どちらも自分に正直な役。本音を相手にぶつけていく。シルビアは最初同じ女優が演じているとはすぐに解らなかったくらい、2人の女を演じ分けている。夫の本来の姿を知って今までの結婚生活を人生の無駄と嘆くシルビアと、彼氏との約束を失恋して泣いているゲイの友達のためにフイにしてあげる面倒見のよい女友達。その他3役をこなすマシュー・ホーンが早台詞を巧みに操ってコミックリリーフの役割をしている。そうかと思うと厳粛な医師の圧力を見せる・・・4人で合計9役だ。

タイトルのThe Prideは、自分を認めて自分を愛するという意味でのプライド。カーテンコールでは役者達が「To Russia with Love」というプラカードを掲げて登場した。ロシアでは今年、同性愛を奨励する宣伝を禁止する法律ができた。これは欧州各国でも物議をかもしている。ロシアでの反同性愛法が もっとエスカレートしてしまうと、時代が遡ってしまう危険もある。ロシアのゲイの人達もプライドを持って生きられるように、、とのシュプレヒコールの意味をこめたカーテンコールに、立ち上がって拍手する人達が続出した