125327913_third-fin_401655c

客席わずか100、スタジオ空間には舞台装置は無く、ソファーと椅子が一つずつ、床に箱が2つ、ソファーの横にコート掛け一脚のみ。女優2人だけでの丸2時間芝居
最近は大掛かりな舞台よりも小振りで質の高い演技に引かれる事が多い。この「Third Finger, Left Hand」という芝居の事は全くノーアイデアだった。ただ、女優2人のうち、Imogen Stubbs(イモジェン・スタヴス)を久しぶりに観たいなあと思って取ったチケットだった。小空間スタジオなので、チケットもお安いし

60年代終わり~70年代初めに北部イングランドで一世風靡したノーザン・ソウルというのは、60年代のモータウンレコードの音楽を中心とするソウルミュージックと、それに付随して大流行りとなったダンスムーヴメントで、丁度この時期に青春を送った姉妹が、一緒に人生のいろんな場面を回想していく。この芝居のタイトル「Third finger, Left hand」というのはマーサ&ザ バンデラスというグループのヒット曲、Jimmy MackのB面(レコード)になっていた曲だそう。ちなみに私的にはジミーマックは80年代にサンディ&サンセッツのリメイクヴァージョンが好きだった。スネークマンショウ、、、知ってるかなあ〜〜??

ニーヴ(Niahm)とグレース(Grace)の姉妹はもう何年も会う事も話す事もしていなかった。決定的に距離を置く事になったのは母親の死だった。姉のニーヴは母の世話や看病を妹のグレースにすべて押し付けて、なんだかんだと理由をつけてはろくに病院にも来ないうちに母は他界してしまった。その事でグレースの怒りは爆発し、以来断絶状態が続いていたのだ。久しぶりに再会した姉妹は古い箱にしまわれていた昔の家族写真を一緒にみながら、子供時代からのいろんな思い出を話し始める。
まだグレーズが生まれる前、若くて新婚の両親の元で可愛がられていた長女のニーヴ。幼い頃、2人で遊んだ日々、家族ですごしたホリデーの思い出、大好きだったテレビ番組、そしてソウルミュージックとオールナイトダンス・・・・


対称的な性格で、姉のニーヴは冒険心と好奇心の強い行動派。それに対して妹のグレースは地道で無難な選択をする事で自分の領域を安全なものにしようとするタイプ。時に対立し、時にかばい合い、お互いに好きだったり気に入らなかったり、、、と兄弟姉妹にはよくある関係だ。

一幕、2幕とも1時間程を2人の台詞だけで人生のいろんな場面を演じて行く。母親はおっとりした女性だが、父親は子供達を可愛がってはいたものの、時として自分の意想にそぐわないと暴力づくで娘達を叱り飛ばす。どんな家庭にもありがちないろんな出来事の中で、あの時には言わなかった事、知らなかった事等がいつの間にか積み重なって、少しずつ距離を作ってしまったのだ。今、実はニーヴは残り少しの命になっている。母と同じ癌におかされていて、久しぶりに距離を縮めた妹との時間をまた、今度は永遠に断ち切らなければならない・・・

矢継ぎ早にどんどん移って行く場面を、ひとつひとつ観客を引っぱりながら演じて行くのはもの凄くエネルギーが必要だ。大笑いしたシーンのすぐ後に、思い出すのも胸が痛い場面を演じる、、、2人だけの掛け合いはテンポが命。兄弟/姉妹というのは、友達とは違うつながりだ。私の母も昔よく言っていたっけ。「姉妹は姉妹なんだから
好きでも嫌いでも他人にはなれない関係。断絶しても、何かと法的には断ち切れないものがあるのが家族なのだ。演じているどの場面も昔一緒に共有した出来事。2人の役者の間のケミストリーが物を言う

イモジェンはどちらかというと昔からクラシックな役を主に観ていたけれど、演技力は流石。今回の役では訛りも板について、相手役のアマンダ・ダニエルズとの相性も良い。全く違うタイプの役者が対称的な姉妹を演じて共通する空気を出すというのは実は簡単な事ではない。観ている方は時として姉に同調し、時に妹のほうに肩入れし、それでいて憎めない/切れない関係に家族の絆を見出す。笑って、胸が痛んで、ちょっと泣いた・・・

自分の命が限られていると知った時に、何を思い出すのだろう、、?やっぱり昔の事なんだろうか、楽しかった子供時代、泣いたり笑ったり憎んだり恋したりした10代の頃、自分の夢と人生を切り開こうと粋がった20代? それらの時間を共有していた人達の事を一人一人思い出すのに違いない。

芝居を観たというより、人生を考えた感じの時間だった。私が観たのは楽日だったせいか、僅か100人弱の観客も役者のペースにしっかり着いて行ったよ。姉妹2人の人生のあれこれを自分の人生の思い出と照らし合わせて。世代的にも役者と観客が合ってたみたいで、そのあたりも芝居の設定する時代にからんで盛り上がってたのかな。

小空間での2人芝居、ちょっと日本の家族の事が気になる一時だった・・・・