Merry Christmas!

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なんだかんだと今年もまたクリスマス。個人的には進展のない一年だったようにも思うけれど、でも今年の夏にはオリンピックや女王の戴冠60年や楽しい事もあって、本当に早かったというのが正直な印象

今年のUKチャートのクリスマスNO1は、X-factor優勝のジェームス・アーサーでも、私がイケルかな、?と思ったCMの曲でもなく、20年以上前の1989年に起きた、サッカー試合場での犠牲者達の為のチャリティーソングになった

Hillsborough Disasterというのは、1989年の4月、シェフィールドのヒルズバラ競技場で行われたサッカーのリバプール対ノッティンガムフォレストの試合会場で、開始直後に解放された入り口から2000人ものファンが観客席に殺到し、完全にキャパシティーオーバーの混雑に加えて老朽化したテラスが崩壊し、96人の死者と750人を超す負傷者を出した大事故だ。80年代というのは、イギリスのサッカーファンにとっては良い時代ではなかった。国際試合の度に現地で対戦相手のファンと小競り合いや暴動を起こしては国際的に非難される対象となっていて、Football Hooliganという社会問題になっていた

このヒルズバラの事故について、最終的にはチケットを所有していた/いないにかかわらず、本来は退場専用だった通路口から人々が場内に殺到してすし詰め状態になった上に、老朽化した鉄作が崩壊した事による悲劇的な事故として扱われた。特にこの事件後、大衆紙の中にはリバプールのサポーター達を非難するような記事を載せたものもあって、世間的には、警察による警備が到底及ばない程の無謀なファン達の強制入場による事故として片付けられた

私も知らなかったのだけれど、これに対して亡くなった96人の遺族の方達は長年の間、ファン達のフーリガニズムではなく、管理/警備体制に落ち度があった可能性を追求して真相解明の為に戦ってきたのだ。そして今年に入ってから、当時の事件経過に関するすべての資料が新たに検討される事によって、会場の警備/誘導体勢の不備、さらには事件後に、警察に不利になる証言や資料が意図的に改ざん/削除された事実が判明し、一躍「証拠隠滅」のスキャンダルとして脚光を浴びた

先月になって裁判所は、当初の「悲劇的な事故」という採決を覆して、新たに「警備/管理不行き届きによる人為的災害」として調査を開始するように言い渡した。今年のクリスマスNO1に輝いたこの往年の名曲は、23年の長きに渡って真実の追求を要求し、ようやくその入り口に辿り着いた遺族達の為のチャリティーソングだ。警察の不手際を無かった事にするなんて昔からあった事で、本来なら大いなる力の前には被害者の遺族なんて無力なのだろうけれど、今回はそれが20年以上の時を経てやっと明るみに出たのだ

私もあの日のニュースはよく覚えている。必死で逃れようとテラスをよじ昇る人々、ピッチに逃げようともがく人達、崩れた鉄作の下敷きになって叫ぶ人、、まさに阿鼻叫喚の光景だった・・・
不手際の証言/証拠を削除して、知らん顔でフットボールファン達の暴挙が悲劇の原因と押し付けた警察側の対処に非難が集中している。これからどんな形でどこに責任がいくのか、実際に誰かが責任者として告訴されるのか、まだまだ遺族達にとって長い戦いが待っている。その支援の為にアーティスト達が集まってシングルレコードを出した。X Factor勝者のJames Arthurが先週、今年の売り上げ最速記録で初登場1位になったのを抑えて、今年のクリスマスNO1に輝いた

遺族達の戦いはまだこれからだ。20数年の時を経てなお終らない、真実追求の戦い・・・どうか一日も早く、真実の解明と正しい審判がくだされる事を願って・・・