ロンドンは多国籍な街。それも年々外国人が増えていって、それゆえにいろんな事が変わってきてしまって不愉快になったりする事もあるのだけれど、これはヨーロッパの1国としてEUのすべての人を受け入れてしまっている以上仕方が無い。私だって外国人なわけだし。

私の職場はもともとギリシャ/キプロス/トルコ系の人達の多いエリアで、それでも彼等はもう2〜3世の世代だからもちろん英語はネイティヴ、考え方もイギリス人に近い人が多い。だけどここ数年の間に東ヨーロッパから来た人達はまだイギリス化していなくて、英語も全然話せないなんて人もいる。英語が話せないお母さんの為に、現地校に通ってる10歳の子供が通訳してあげたりしているのだ。それにしても子供の語学吸収力っていうのは凄いよねえ〜〜・・・

先日ちょっとおかしな事があった。その男性は、英語でコミュニケーションは何とかなるけれど、でもちょっと集中して何を言いたいのかを聞かないと・・・という感じだった。この くらいのレベル(一生懸命コミュニケーションすればちゃんと伝わる)での会話は日常茶飯事なのだけれど、今回はちょっと単語を間違えたり発音が正確 じゃないと別の話になってしまうという典型だった。

私の職場はオプティシャン、いわゆる眼鏡店なのだけれど、こちらのシステムは日本と違う。眼鏡店で検査をするのはOptometrist=検眼士の資格を持った人にしか許されていない。これは視力の検査だけでなく、同時に眼底、視野,眼圧等の検査も行い、まぶたや涙の状態やマイナーな炎症等、目に関する病気や異常を見つける所までが義務付けられているからだ。眼鏡やコンタクトレンズの処方箋はこの検眼士のサイン無しには無効で、それ無しに眼鏡をつくるのは違法だ。そして出された処方箋を元にレンズの種類やフレームを選ぶ相談をするのがDispensing Opticianで、これが私の仕事。丁度病院でいうと薬剤師のような役割というのが一番近いかもしれない。まあフレーム選びや販売は資格の無いスタッフがやっているケースが多いのだけれど、それでも一応資格者がスーパーバイザーとして店内に居る事が義務づけられている。特に16歳以下の子供の眼鏡の販売/調整は資格者の責任になる。ちなみに検眼士や眼科外科医というのはDr(ドクター)ではなく、Mrなのだ。ドクターというとGP(General Practitioner)と呼ばれる一般の登録ファミリードクターの事になる。

さてこの男性、もう既に眼鏡は作って先週受け取りに来たはずなので、何か問題があってまた来たのかと思ったら、どうやら何か手紙が欲しいような事を言う。
私と同僚が聞いてみると、眼鏡が必要だと区役所から予算(バジェット)をもらえるのでドクターの手紙が欲しいのだと言う。はて、、、???と状況を把握するために考える
この人の眼鏡は役所が支払ってくれるものなのか、でも彼はこの前自分で支払ったはず。じゃあ領収書が欲しいのか、、? 何か検査でひっかかる事があると、検眼士からドクターに紹介書を送って病院での精密検査のアポを手配してもらうのが通常なので、この人もリファレンスを送ったかしら、、?

彼はひたすら、バジェット、ドクター、レターを強調して繰り返す。私とL嬢が何度「レシートのコピーが必要ですか?」「ドクターに送る、病院で検査をしてもらうためのリファレンスの書類にサインをしましたか?」と聞いてみてもなんだかちょっと違うっぽい・・・そのうち私達が理解しないので、彼はだんだん怒りはじめている様子。私達は理解しようと努力してるんですけど、、、、?!

かなり時間をかけて別の手、別の言い方で彼と向き合っているうちに、彼が繰り返している予算=バジェットはBudgetではなくて、言いたかったのはBadge(バッジ)だという事が判明した
Badgeの発音は頭のBaにストレスを置き、最期のgeは歯の間から空気を抜くだけの無声音だ。ところが彼はgeの音にもストレスを付けて、しかもジよりもジェに近い音で繰り替えしていたのでBadgeがバジェ=Budgetに聞こえていたのだ。さらに彼は自分の目の検査をしてくれた検眼士の事をドクターと呼んだ為に、私達はドクターから病院への紹介書のコピーを役所に見せたいのかと思ってしまったのだ

眼鏡を仕様しても完全な視力が出ない人や半盲、視野の限られた人等は、区が支給するバッジを付けているといろいろな面で優遇を受けられる。彼はそのバッジを申請するために、処方箋と検査結果の詳細を書いたものが欲しかったのだ。

区役所からバッジの支給を受けたいから、検眼士に検査結果の詳細を書いて欲しい。
これがちょっと単語の発音と呼称の間違いの為にこうなってしまった

区役所から予算をもらいたいから、ドクターからの手紙が欲しい。

最期にはなんとか理解できたものの、まあ、ちょっとした言葉の間違いで意味が違って伝わってしまうという笑い話はよくある事。検査の最中に you've almost finished. と言ったところが、終ったものと勘違いして途中で立ち上がろうとしてしまったり・・・ 英語に慣れていない人の耳には、almostが聞き取りにくくて、finishedだけが耳に入ってきてしまうのだろう。

私にだって時々ある。突然なんの脈絡もなく思いがけない事を話しかけられた時に、とんちんかんな返事をして彼に変な顔をされたりする。イギリスに来て最初の数年はもう必死で英語を勉強していたけれど、今はちょっと正しく無い事を言ったとしても誰も指摘してくれないしね。第一、携帯でのテキスト会話がされるようになってからは、時勢や助詞なんかはイギリス人だって無視状態だし。see you laterの代わりにcul8erの世界ですもの・・・

たまにはちゃんとまた英語を見直してみようかなあ〜〜、あんなに頑張って何年も勉強して取った検定試験、今じゃあ落ちるかも・・・

それにしてもヨーロッパの人達の態度が日本人と大きく違うのは、自分の英語が滅茶苦茶だったとしても、私達が解らないと、「何で解らないんだよ?!お前は英語が解らないのか?!」という超デカイ態度でいる、という事。このおじさんも途中からは結構怒ってる感じだった。私とL嬢は一生懸命聞いてたのに・・・・(L嬢は生粋のイギリス人)

度胸が第一って事ですかね〜〜、、、、