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実際に歴史にあったエピソードを元に脚色されたコメディー。なんと、大英国国王が狂ってしまったというお話。

このThe madness of Geroge IIIがオリジナル主演のナイジェル・ホーソーンで大人気になった時は見逃してしまった。その後、脚本、演出、主演とオリジナルのメンバーで映画化された時は真っ先に観に行った。映画のタイトルは確かThe madness of King Gerogeになってたはず。ジョージ3世の「III」とつく事で、アメリカ他外国での公開の際に、映画のパート3と勘違いされて、1と2を知らないから、、、と客足が遠のくのを避けたとか

18世紀半ばから19世紀になる一番面白いヨーロッパの歴史の中で、在位60年の長きに渡ってイギリスの国王だったジョージ3世。この記録は最近になって現エリザベス女王が抜くまで、歴代2位の在位期間だった。歴代最長は今もってヴィクトリア女王。イギリスは当時から政治は内閣が行っていたが、それでも国王の意向は政治にも大きく関わりがあり、もちろん議会の採決は国王の署名なくしては決定できない

ジョージ3世は質素な王室を心がけ、王妃シャーロットとも円満で愛妾も持たずに、王妃との間に15人の王子/王女をもうけた。とはいえ、若くして即位してからはアメリカの独立紛争/戦争に長期間を費やし、また皇太子をはじめとする息子達の借金と女遊びに頭を抱えていた。政治面では保守党で、わすか24歳で首相になったウィリアム・ピットを支持している。一方ウィッグ党のチャールズ・フォックスは、派手な遊び好きで父とは対称的な皇太子(後のジョージ4世)に取り入ろうとしている。

フランスで革命が起こる前年の1788年、突然国王の様子がおかしくなる。意味不明の事を数時間もしゃべり続け、記憶はとびとび、わめいたり泣いたり、まさに乱心状態に陥ってしまったのだ。原因/病名はなかなか解らず、集められた医師達にもプレッシャーがかかる。判断能力無しとして、皇太子を摂政につけるべきだという案が出始めると、国王の周辺も皇太子や閣僚達の周辺もにわかに各々の思惑で動き始める。

国王、側近達、王妃、医師団(王室付きの医師に加えて精神科専門という事で田舎から呼ばれた医師=ウィリス)、政治家達(ウィリアム・ピットを中心とする与党/チャールズ・フォックスの野党)皇太子一派、と立場と力関係を変えようとする駆け引きがおもしろい。乱心してしまった国王を前に、正直な心と狡い心が交錯する

回りのドタバタをもりあげるのは、なんといっても国王の狂いっぷりだ。映画でのナイジェル・ホーソーンが素晴らしかったので、再演の役者は不利か、、、とおもいきや、どうしてDavid Haig氏のジョージ3世は素晴らしかった。国王ともあろうものが、惨めにもボロボロに取り乱し、正気を無くしてつぶやき続けたり、次の瞬間にはわめき続けたり、子供のように小さくなったり威張り散らしたり、、、と狂い方のメリハリが凄い。声のトーンや間が絶妙だ!!

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コメディーなので、ウィットに富んだ台詞はアラン・ベネット氏の脚本のすばらしさだ。無駄が無い。それでいてそれぞれの立場がはっきり解る。セットは空間をしきる回廊に見立てた絵画のフレームの羅列のみ。木枠のフレームだけで中に絵がないところが巧い。縦横に並んだ絵が実際にあると、色がごちゃごちゃしてしまう。大きさや形の違うフレームだけを並べる事で、部屋の壁、廊下の空間を作っている。フレームの中がふさがれていないので、向こう側の様子も観客の目に入る。

David Haigの国王はとても愛嬌があって、狂ってしまった様子をみるにつけ、哀れに思えてならない。王妃付の侍女に突然言いよったり、引き離された王妃を子供のように恋しがったりする部分と、元気で茶目っ気のある国王として官僚達や側近達をさばいていくテンポの良さが対称的で巧い。後でチェックしてみたら、大手紙のレビューはどれも4〜5つ星だ

ちなみに映画版は舞台と同じ脚本=アラン・ベネット、主演=ナイジェル・ホーソーンで、王妃役はヘレン・ミラン。彼女の王妃も良かったなあ〜〜!ケバケバの皇太子にルパート・エヴェレット、国王を慕って看病する側近のグリーヴェルにルバート・グレイヴス。実はこのグリーヴェルという人が発病した国王の様子を細かく日記に書いていたそうで、彼の記述のおかげで今では国王の病気は急性間欠性ポルフィリン症にほぼ間違いないとみなされている。ちなみに調べてみたら映画の日本タイトルは「英国万歳!」だとか・・・、、なんで、、、?

結局皇太子を摂政に任命するという段階の最期の直前になって、(下院を通過し、上院での決定に持って行く寸前)国王の病状は回復し、元の鞘に収まる事になる。国王は国家元首に、ピットは首相のまま、皇太子も皇太子のままイングランドは続いていくのだ。実際には国王の病気はその後も再発症し、1800年代に入ってからは悪化の一途で、最期の10年間は皇太子が摂政となる。1820年に亡くなると当時の最長在位記録を作った

ジョージ3世は私が最近読んだ2人の18世紀の人が会っている。(しつこいね、私も)スウェーデンのフェルセン伯は18歳の時、カサノヴァは35歳の時にジョージ3世と謁見し、面白い事に2人とも共通した事を書き残している。それは「国王はとても小さな声で話す」のだそう・・・・