今年のUK クリスマスNO1はこちら!Military Wives Chiorによる「Wherever You Are



てっきり今年もX-factorの勝者がクリスマスNO1を穫るものと思っていたら、別の所から人々の心を捉えてわずか数日でどんでん返しの一位になったのが「Wherever you are」、歌っているのは素人の主婦達。彼女達はみんな英国軍に所属してアフガニスタンに赴いている兵士達の妻だ

イギリスに住んでいて、日本では絶対に感じた事の無いものというと、soldiers=兵士達の存在だ。
日本にも一応自衛隊というものはあるけれど、自衛隊は軍隊として参戦して敵と銃弾を交える事はない。

テロ事件が続発して、タリバン政権を倒したアフガニスタンの戦争から10年。あれが正しかったのかは賛否あるところだけれど、以来アフガンの治安維持のために英軍はずっと駐屯している。昨日(クリスマスイヴ)も、現地で負傷してイギリスに急送された兵士が病院で亡くなった。彼がこの10年で393人目の殉職兵士だ

英国では毎年11月にRememberance dayというのがある。第一次大戦以降の殉職兵士達を追悼する行事だ。Rememberance Sundayと呼ばれる日曜日には、女王及びロイヤルファミリーが戦没兵士の記念碑に花輪を捧げ、黙祷する。各地の地元でも献花やパレードが行われ、私の 住む地元でも小規模ながら毎年行われている。

テレビ番組シリーズに「The Choir」という番組がある。30代の若きコーラス指導者、ギャレス・マローン(Gareth Malone)が、ほとんど歌えない素人達を集めては歌う喜び、コーラスグループの連帯と友情を築いていく、というドキュメンタリーシリーズだ。今回ギャレスはプリマスでアフガンに赴いた兵士達の妻を集めてコーラスグループを結成し、半年後に任務を終えて帰国する彼等の歓迎会で歌おうと企画する。

歌は全く素人の主婦達が、毎日の日常(子供の送り迎え、洗濯、掃除、買い物)の合間をぬって集まり、ギャレスの指導のもと、なんとかコーラスらしくなっていく。そしてどんどん話は大きくなり、11月にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われるロイヤルファミリー列席の追悼セレモニーで歌う事が決まる。BBCで全国放映もされるこのフェスティバルの為に正式に歌を作るため、ギャレスはメンバー達に、夫と家庭に残った妻達の間に交わされた手紙のやりとりを見せてもらえないか、と持ちかける。その中に詰まった思いの数々、不安、励まし、希望、悲しいニュース、何気ない日々の報告,、、何百通もの手紙に目を通した作曲者は、Wherever You Areという歌を書き上げた

ミリタリーのバラック内に住んではいても、お互いにはほとんど知らない同士だった妻達が、夫の所属する部隊やランクに関係なく新しい友情の絆を結んで行く。初めは感情がこみ上げて歌詞を見ただけで泣いてしまって練習にならなかったりしたのを、ギャレスは皆を抱きしめ、励まし、持ち前の明るさで引っ張って行く。彼は本当に情熱を持った指導者だ。半年後に帰国した夫達は、歓迎の場で妻達の自信に満ちて歌う姿に驚き、感動する。11月のロイヤルフェスティバルホールでのセレモニーでは、感動の拍手喝采を浴びた。上のクリップはこの時のもの。指揮をして皆をリードしているのがギャレス。(この他にCDになってからオフィシャルなビデオもできたけれど、こっちのほうが歌が感動的)

この曲がチャリティーCDになって発売されたのは7日前だ。おそらく初めはそこまでの予定は無かったのかもしれない。ただ時期がタイムリーだったのと、このドキュメンタリー番組の他にもBBCラジオで人気DJがプッシュした影響もあってか、CDの販売やダウンロードがうなぎ登りに。2週間前にX Factorで優勝したLittle Mixが、先週一位になりながらも今ひとつセールスが伸びなかったところへ、アッいう間に追い抜いてしまった

ギャレスがアルバートホールのフェスティバルの後で言っていた。「今まで軍人の妻達の声を人々に届ける機会というのはどこにも無かった。今回はがそれを実現させた。」歌うという事で結びついた彼女達の晴れやかな顔が、何よりも危険な任務に赴く兵士達の誇りになるはずだ。

日本での私の世代は子供のころから戦争の思い出は悲惨なもの、二度と繰り返してはいけないもの、起こってはいけないもの、という意識を植え付けられて来た。今でも日本で毎年夏になるとお涙頂戴の戦争ドラマが出て来る。特攻隊で死んで行った若い兵士達の話を涙、涙で語るわりには、彼等を誇りにするという意識はない。それは日本が間違った戦争の仕方をしてしまったからだ。最期まで戦って負けた事を誇りにできない過去があるからだ。日本には戦争のヒーローはいない

今年だけでも50人近くの兵士達がアフガニスタンで命を落とした。それも殆どは20代から30代前半の若い兵士達だ。このコーラス隊のメンバー達もまだ小さな子供がいる人達がほとんど。メンバーのひとりが言っていた。「移動の度に何度も引っ越すし、彼が危険な場所に配属される時はいつも本当に心配で、このGood byeが最期になりませんようにって祈っています。でも私達が選んだ生活なので、日々をしっかり守っていくしかないわ」

主婦達の声が人々の胸に届いたクリスマス NO1

どこにいても

あなたがどこにいようと 私の愛があなたを守る
私の心で 時と距離を繋ぐ光の橋を架ける
どこにいても 私達の鼓動はひとつ
あなたが任務を終えるまで 毎晩夢で抱きしめる
あなたは暗闇に光を放つ星
私達の希望と夢は永遠に光り続ける

闇に光を照らして あなたは平和の騎士 
あなたの回りで星が輝きますように
あなたの勇気がくじけませんように

私はどこにいても 日々あなたを愛し続ける
暗くて辛い道でも 信じる心をもってあなたを守る
どこにいても 夜の間でも離れない
毎日祈り続ける 無事に帰ってくる日を 新しい光を