10年ぶりに大使館(日本領事館)に行ってきた。10年に一度大使館に行く用事といえばパスポートしかない。

11月で切れるので5月に日本に行く前に替えようかどうしようか考えた。パスポートの更新は期限の1年前から行う事ができる。でも早く切り替えてしまうと残った分は切り捨てられてしまって、支払った手数料が10年分じゃなくて9年分になってしまうのだ。これはちょっと狡くないか・・??

10年前より領事館は綺麗になっていて、前に来た時よりずっと感じが良い。待つほどなく書類を提出し、アッという間に終わる。ちょっと新鮮だったのが、「22日の9時半からのお受け取りになります」ときっちり言われた事だ。この国では「仕上がりはいつになります」という事は絶対に断言しない。私も仕事ではどんなに「XXまでにいるんだ!!」と言われても、「十中八九は大丈夫だと思います。ベストは尽くしますが100%はお約束できません」とはっきり言う。約束などしてしまったらドツボにはまるのはこっちのほうだ。絶対にプロミスはしない。だからこの本当に日本的は、「XX日のお受け取り」という言い方が逆にとても新鮮に聞こえた。しかも手数料は受け取り時の支払い。今日払うものと思って用意していたので、拍子抜け。

それにしても、、、日本に行く頃に調べた時は確か65ポンドだった手数料が89ポンドにハネアガっている!! これって、レートが下がっちゃったせい・・??高過ぎないかあ〜〜?! カードは受けてもらえないので、キャッシュかチェックでおつりの無いようにご用意ください、との事。でも、、、きっちり用意するには、89ポンドってイヤな金額じゃない?日本円だって、8900円をおつり無く用意するって、微妙でしょ・・

せっかく都心へ出てきたのにものの15分で用が済んでしまったんじゃ交通費が無駄というもの。1日乗り放題の切符なので使わなきゃ損。でも今日は雨、、、 で、急に思いついてホントに15年振りくらいでテート・ギャラリーへ行ってみようと思い立った。今はTate Britainと呼ばれてるこの美術館は1500年以降のイギリスの絵画を中心にしている。ターナー、コンスタブル、ロセッティ、そしてウィリアム・ブレイク等、、、入館料は無料

ここには実は私のお気に入りの絵が3つある。本当に長い事思い出しもしなかったのだけれど,急にまた見てみたくなった。行き方もうろ覚えだったけど、駅からは歩いて5分程。私が個人的に見たかったのは、ミレーの「Opheria=オフィーリア画像はクリックすると大きく見られます

MillaisOpheria
「ハムレット」でガートルードの台詞で語られるオフィーリアの死。狂ってしまったオフィーリアが花を摘んでいるうちに水に落ち、ドレスの裾が水面にひろがり、本人は溺れてしまう事も解らずに花を手に歌いながら流されて行く・・・この暗い水の色とかなり濃いめな緑と茶色の色合いが、物悲しくてイギリスっぽい。オフィーリアが目を開けて歌っている表情がなんともいえない・・・

もうひとつの私のお気に入りは「The Death of Chatterton

chatterton
18世紀の若き詩人、トーマス・チャタートン。ロンドンに上京してきて、そこそこ投稿した詩が掲載されるなど多少の知名度はあったものの、報酬はごく僅かで生活に窮し、貧困のうちにホルボーンの屋根裏部屋で服毒自殺を遂げる。わずか17歳 この絵は実際にチャタートンが死んだ部屋で描かれたという。この絵のモデルは19世紀の詩人ジョージ・メレディス。まだ青年にもなり切っていないはかない姿、青白い死に顔、ベッドも家具もボロボロで、破り千切られた詩編が散乱している。ちなみにチャタートンは15世紀の修道士、トーマス・ローリーという偽名で中世風の詩を書いていて、これは18世紀後半になってから「成熟した作品」として称賛された。

もうひとつ再会したい絵があったのだけど、これがどうしても見つからない・・・聞いてみると、現在はドイツのどこぞの美術館に貸し出されているのだそうだ。残念・・・・これは知っている人は少ないと思うけれど、リチャード・ダッドという人の「Fairy feller's master stroke

dadd1
この絵の事を初めて知ったのは遠い昔、Queenの2枚目のアルバムの中に同タイトルの曲があって、曲を書いたフレディー・マーキュリー自身が語っていたのを読んだ時だ。アルバム2枚目当時のQueenはまだヒットに恵まれず、売れ線バンドではなかった。でも初期2枚のアルバムは、当時美術学校でデザインとイラストを学んでいたフレディーの芸術的要素が濃く出ていて、80年代のQueenが無くしてしまった冷たい輝きと緊張感のある音を出している。「Queen ll」は彼等のアルバムの中でも私が大好きな一枚。「Fairy feller's master stroke」は、月夜の森で今まさに斧を振り上げて胡桃を割ろうとしている男を中心に、様々なフェアリーな生き物達が回りを取り巻いている。良く見ると皆どこかちょっとヘンで架空の生き物だ。作者のダッドは実は精神を病んでいて、この絵も終身過ごした病院内で描かれた。フレディーはこの絵をとても幻想的でおとぎ話のような歌にした。それでも音は暗く、冴え冴えとしていて月夜の幻のような曲。今回見られなかったのは残念だけど、また戻ってくるのだろう。

美術館なんて行ったの、去年のパリ以来、、、でも無料なんだしたまには良いね。ほんとに久しぶりだった