うわ〜、、、なんて言えばいいんだろ?
この、、、突っ走ったかんじ、、? 激しさと躍動感と疾走感、、? まさにむきだしだ。なんだかざわざわと揺さぶられる

愛のむきだし」というタイトルだけですごく気になっていた映画。それでなんと4時間の大作でベルリン映画祭で賞をとったという事を聞いて是非観たいと思ってた。実はイギリスでは配給が決まってて10月末だかに上映されると聞いていたので、日本ではもうDVDになってるのは知ってたけど待つつもりだった。でも一足早く観る事ができた

母亡き後、カソリックの神父になった父=テツと静かに暮らしていたユウだが、その父に一方的に恋心をぶつけてくる女、カオリの出現で歯車が狂い始める。父は教会に隠れてカオリと過ごすが3ヶ月で捨てられる。傷心のあまり心を閉ざしたテツはそれから毎日ユウに懺悔を強要する。「何か必ず罪があるはずだ」と毎日責められる事に困ったユウはわざと悪事をして懺悔のネタを作る。そしてデジカメを使って密かに女の子のスカート下からパンチラ写真を盗撮する日々を送るようになる。そして出会ったのが男を全く信じていないヨーコ。ユウは一目で恋をする。ところが彼女は父と復縁したカオリの連れ子だった・・・親子4人として暮らし始めたユウ達の前に謎の新興宗教団体が現れ、幹部のコイケは巧みにユウに近づいて一家を教団に洗脳入信させようとしていた・・・妹になったヨーコを自分の只一人のマリアと信じて愛を貫ぬくユウは、彼女を教団から無理矢理連れ戻そうと戦い始める。

映画って予告編だけで大抵予想がつく。ストーリーや結末の予想じゃなくて、私がこの映画を好きかどうかという予想。予告編を観て私の映画(タイプ)だと確信があった。ただ主演の若い俳優達は私は全く知らなかったので,どこまで説得力のある演技になっているかが未知だった。でも、ユウ役の西島隆弘君もヨーコ役の満島ひかりさんも凄く良い。特に満島さんのクールで可愛くてそれでいて激しくてむきだしの演技にはびっくりした。揺さぶるものがある

タイトルがむきだしの愛じゃなくて、愛のむきだしっていうのがほんと、そうじゃなくちゃいけないタイトルだと納得。4時間が全然長く無い。無駄もないし。カソリック=信仰、罪の認識、パンチラ盗撮、たった一人のマリアとの出会い、レズビアン、新興宗教、洗脳、奪回、心の崩壊、、、 盛り沢山のようでいて実は一つの糸にちゃんと繋がってる=純愛だ。どんなパンチラ写真にも性欲が沸かない主人公が、唯一ヨーコを観ると身体が反応してしまう、というところに監督の純愛へのこだわりが感じられる。そのたった一つの愛を手に入れるまでのストーリーだ

こんなに胸にざわめきを感じる映画は久しぶりだ。深作監督の「バトル・ロワイヤル」以来かも・・・前半はわりとポップな感じですいすいと進んで行く。始まってからかなり経って(1時間近く)ヨーコ登場の後にいきなりタイトルの愛のむきだしという字が画面に踊り、そういえばまだ出てなかった事に初めて気付く。アクションがなかなかカッコ良い!そして後半はどんどんいろんな物がはがれて文字通りむきだしになっていく。 ユウ、ヨーコ、コイケ、そしてテツとカオリ、各々のキャラクターをちゃんと時間をかけて見せていたので、各々がむきだしになっていく様だけで5通りのストーリーになっている。

海辺で「愛」についてヨーコがまくしたてる、聖書から引用の長ゼリフのシーンは圧巻だ。ユウに馬乗りになって、本当の愛は何か、愛がなければどんな慈善も無意味だと延々と叫ぶように語る。このシーンでは新興宗教に洗脳されているという設定なので、そのちょっとズレた勢いがよけいに迫力がある。バックに流てるのがベートーベンの7番っていうのがまたすごい選択。私も新訳聖書のコリント人への手紙の章にあるこの愛のくだりは学校時代に何度も何度も読んだ。(私の通っていた学校はキリスト教校)

愛は寛容であり、愛は情け深い、またねたむ事をしない・・・で始まり、愛はいつまでも絶える事が無い までのこの一説は、中/高生の頃にはまるで不可能な事としか思えなかったり、どうにかしてその真意を理解しようと躍起になってみたり、完全な理想論のように読み過ごしてみたりしていた。この映画での愛は理想論ではなく、たとえ失っても戦って力ずくで奪い返すもの、すべてをむき出しにして手に入れるもの

途中で、最期はどうにもならない、という結末になるんじゃないかと不安になったけれど、監督はちゃんと最期は赦しを与えていたのでホッとした。それにしても新興宗教とカソリック、罪を作るためにわざと変態になろうとするユウと、自分の罪はむき出しに出来ない代わりに息子に毎日懺悔をさせて赦しを与える父親、という対照的な宗教観がの価値観を変えているのが巧妙だ。パンチラ写真に全く興奮できないユウと、自分はレズビアンだと錯覚してコイケと絡み合うヨーコの純愛/変態ぶりがあるがままの正直さで描かれてる。う〜ん、むきだしとはホント良く付けたタイトルだ

映画の中でも何度か出て来る空洞というキーワードを使った主題歌「空洞です」とラベルのボレロが繰り返し使われているけどこれもすごく効果的。盗撮王子のシーンでのポップな感じと話がヘビーになるにつれての重厚な音のリズムがバランス良くて長さを感じない。海辺でのシーンと最期でも使われたベートーベンといい、ホント監督のセンス良いわ!!

なんだかうまくスラスラっと言葉が出て来ない感じ。でも久しぶりに揺さぶられる映画だった。満島ひかりさん、良いね! 実際に10代なのかと思ったらもう23なんだ・・・ああいう演技を一度しちゃうとこれからがきついだろうな〜と思うくらい持ち札を全部さらけ出してる感じだ。2度目はできなかったかもしれない一瞬の演技を撮れるところが映画の凄い所だよね。海外受けする映画だと思う。私の予感通り、すごいものを観た感じ

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