まだ途中だけれど、、、今ハマっているのがこれ

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2週間程前、本を読む時間がないよ〜、、、と思いつつお昼に職場近くのチャリティーブックショップ(寄付された本の古本屋)を覗いていて、見つけた本。古本屋とはいっても、要らないプレゼントだったり一度読んだだけだったりといった本も多く、写真集やハリー・ポッターのボックスセットとか奇麗なものも多い。ほとんど素通りしかけた時にフとSAMURAIの赤い文字と下のサブタイトルの中にJapanとあるのが目に入った。タイトルはSamurai William 著者はGiles Milton

サムライ、ウィリアム、日本とくれば連想ゲームでまず思いつくのがウィリアム・アダムス(三浦按針)。手に取って裏表紙の解説を読むとやっぱりそうだ。小説ではなく、残された資料を集めてナレーション形式に書かれたドキュメンタリーのようだ。私は歴史的ノンフィクションものに目がない。特に英語で読む本はほとんどがこの類いで、小説はHarry Potterシリーズくらいか・・・

それにしても、応援している藤原竜也君の次の舞台がこの按針の話だという事を聞いていたので,この時期にいきなりチャリティーショップでこの本が私の目の前に現れた事に驚いた。実は私にはこういうタイムリーな巡り合わせが良くある。何の縁で!?と思うような・・・でもそういう縁に出会った時はきっと何か意味があるような気がするので、興味があれば手を伸ばすことにしている。考えてみたら三浦按針自身の事って全く知らない。家康に引き立てられて外国人で初めて旗本にまでなった商船船乗りって事しか、、、新作舞台の骨組みになってるかもしれないし面白そうなので読んでみる事にした。古本なのでたったの£1-75! スタバのコーヒーよりお安い!! コンディションも悪く無いしね。

最初に書いた通りまだ途中なのだけれど、いや〜〜!壮絶だ! まずアダムス達が日本に辿り着く(ほとんど流れ着く)までの2年近い航海が凄まじい・・・アダムス自身はイギリス人だが、オランダの貿易船に加わって東洋をめざす。オランダ船団5隻でロッテルダムを出航してから20ヶ月、各々の船には100~120人の船員がいたのに、日本まで行き着いたのはたった1隻に24人。しかも、かろうじて立ち上がる力があったのはアダムスを含むわずか7〜8人だったという。さらに日本に着いて間もなく6人が息を引き取り、地球の反対側で新しい暮らしを始める事ができたのはわずか18人だったというのだから、あの時代の航海がどれほど過酷なものだったかが伺える。

正確な世界地図も無い時代、先駆者達の残した海図や資料をたよりに異国との貿易で富を得る事を求めて未知の海に出て行った男達の運命は尋常じゃない。立ち寄った先々で原住民の襲撃を受け、一度に数十名が殺された事も、、、飢えと病で死んでいく者、嵐で船員もろとも沈んでしまった船、過酷な航海を捨てて、立ち寄った島に脱出してしまった者、皆二度と祖国の土を踏めない覚悟で出て行った時代だ
すごいよ〜〜 たった一艘になったFielde号が日本に辿り/流れ着いた時には泣きそうになってしまった。小説ではなくノンフィクションの形をとっているのだけれど、淡々としたナレーションのような文章がとても現実的でね、、

日本に着いてからももっと数奇な運命と曹禺する。まず既に日本でカソリックの布教を行っていたポルトガルの宣教師会=イエズス会にとって、この瀕死のオランダ船の到着は邪魔以外の何でもなかった。イエズス会は「日本以外の国では皆カソリックを信仰しているのだから、あなた方も改宗して一つの神を讃えましょう」と唱えていたのに、プロテスタントであるオランダ人達にやって来られては困る。カソリック以外の宗教があり、しかも同じキリスト教でありながらプロテスタントとカソリックは壮絶な戦争をしている事を日本側に知られる事は都合が悪い。ポルトガル人達はアダムス一行を海賊だと報告して処刑させようとする

イエズス会の言う事を鵜呑みにしないで直接アダムスと会い、彼等の航海や造船の技術、天文学、数学の知識に目を止めた家康の才覚はさすがだ。もしこれが徳川家康じゃなかったら、彼等はただちに処刑されて歴史の闇に葬られ、その後の徳川幕府時代にアジア諸国と貿易を交えて行く事はなかったかもしれない。やっぱり家康という人はタダモノじゃなかったんだなあ〜〜

このスペイン/ポルトガルのカソリックと、オランダ/アダムス達のプロテスタントとの、家康説得の戦いは面白い。結局プロテスタントを日本から閉め出そうとするあまり傲慢な態度と発言を繰り返すイエズス会に腹を立てた家康は、日本人がなによりも重視する礼儀をわきまえた対応をするアダムスを引き立てて行く。密かな戦いはこれだけじゃない。商人としての市場確保もそうだ

実はアダムスは日本に落ち着いてからイギリスの妻や友人に手紙を書き、オランダの商船に託したのだ。ところがイギリスにこの黄金の国=日本の情報を与えたくないオランダはわざと彼の手紙を保留してしまったのだ。おまけに1603年には同じアジアのジャワにイギリスの商会ができてイギリスとアジアとの貿易が始まっていた事もオランダの商人達は10年近くもアダムスには知らせなかった・・・・ 違う宗教である以上、違う国の人間である以上、誰も味方とは言えなかった時代だ。このオランダの裏切りを知って激怒したというアダムスは、それまでの10数年のいきさつを詳しく綴った手紙をジャワのイギリス商会に送り、これが現存する1611年のアダムスからの初めての手紙だ

一緒に出航した5隻の船のうち、途中で引き返したGeloof号からその道中の過酷さを聞いて、おそらくは誰もFielde号が日本まで辿り着いたとは思わなかったはず。イギリスにいる彼の妻は、ロッテルダムを出航した夫が地球の反対側で今も生きているという事を13年かかって初めて知ったのだ。今みたいに直行便の飛行機もインターネットも電話すら無かった時代。う〜ん、すごい事だよね

アダムスはサムライと言うよりも、やっぱり「海の男」だったのだと思う。幼少から航海術や造船技術を学び、海軍に従事した後にはイギリスの商船に乗ってあちこちを航海していたのだ。命からがらの目に何度も遭いながら、日本にいた間もアジア諸国との貿易を盛んにして何度も海を渡っている。海の向こうにある未知の富を求めて生涯航海しつづけた海の男。 異国の地から祖国に戻るという事がまさに命がけだった時代に、船を造っては海に出て行った男達、コロンブスもマルコ・ポーロも彼等がいなかったら歴史はつくられなかった・・・

沢山の残された資料を元にまとめたこの本は、必要な時代背景や補足をスムーズに文章の間にはさんでいて読み易いし解り易い。アダムス側から調べると必ず出て来る文献をほぼ網羅しているので、ホリプロの「按針・イングリッシュサムライ」の舞台にも骨組みの一つになってるだろう。ホリプロの公演サイトにあるあらすじを見てもそんな感じ。藤原君が演じるのは、信じて教えを受けていたカソリックの宣教師達がアダムス達を怨敵のように扱うのを見て、アダムス達に手をさしのべようとする青年宣教師という事らしい。的を得た設定で安心した。昔みたドラマの「Shogun」はイマイチ好きじゃなくて途中からよく覚えてないけど、日英共同のオリジナル舞台だから良い本になる事を祈ります!


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