今年で3年目のBritain's got talent
そうそう、これ、日本語でカタカナ書きにする場合、お願いですから「ブリテンズ ゴット タレント」と記してくださいね!。くれぐれも、got=ットです。ガットではありませんので!!!

さて、幼児、子供、ティーンエイジャー、大人、老人、犬、鳥、人形、、、と様々な出場者でごった返す番組を数週間にわたって運行するのは大変だ。最初はそれこそ膨大な人数を数都市に渡ってオーディションし、まあ、ここまでは番組制作者とジャッジ達で決めて行くので、まだ「戦い」の前哨戦だ。それがセミファイナルの40組が決まったあたりから緊張感が全く違って来る

昨日書いたスーザン・ボイルさんの7週間にわたるメディアとの攻防戦は、まだコンペティションの途中だというのにかなりアンフェアなものがあった。スーザンはファイナリストの中でもとりわけ不必要なプレッシャーにさらされていた事は間違いない。だからこそ、昨日の彼女の歌には心からのスタンディングオベイションを送りたいし、それでも2位という結果はフェアな評価だ。この後、彼女がシンガーとして活躍する事は間違いないだろうし、、、

40組を8つのグルーブに分けて5日間で行うセミファイナル。ライヴ生中継番組という事もあり、現場の緊張感は計り知れない。この組み合わせはどうやって決めているのだろう・・・?シンガー、ダンサー、エンターテイナー等を均等に分けているのだろうけれど、各日から2組が決勝に進むという事は、組み合わせが悪くて落ちてしまう人もいるという事だ。3日目の勝者がもし2日目のグループだったら進めなかったかもしれない、、、という風に。今年のセミファイナルは1日目が一番激戦だったと思う

Britain's got Talentを支えている現場の大きな柱が、進行役の2人組、Ant&Decだ。この2人、実は10年以上前にPJ&ダンカンという名前でポップな歌を歌っていたのだ。(Eternal Love←こちらは日本でかなり売れたらしい)
3年前の第一回の時から思っていた。この2人の出場者をケアーする様子は素敵だ。予選ではカジュアルなスタイルで一人一人を舞台袖から送り出し、演技中もカーテンの影から腕を振り上げたり声を出したりして応援している。演技が終わると、合格の人とは一緒になって抱き合って飛び上がり、ダメだった人には肩を抱いて健闘を讃え,慰める。年齢に関係なく誰にでも同じ目線で話しかけ、ネガティブな事はいっさい言わない。徹底してすべての出演者を応援する役割なのだ。それをすごく自然に嫌みなくこなしている。この番組の魅力は彼等の存在も大きい。

ファイナルで、チャイルド・タレントが今回は3人いた。いずれも10~13才でシンガーのShaheen君Hollie Steel ちゃん、そしてストリートダンサーのAidan Davis君。日に日につのるプレッシャーは大人にさえも堪え難いのに、大舞台を賭けたライヴ番組でライトを浴びて観客の前で演技するのは余程の度胸が要る。実際セミファイナルの最終日に登場した10才のホリーちゃんは、美しい声でエーデルワイスを歌い出したものの、声が不安定で心もとない。ジャッジのサイモンが明らかに難しい顔になり、心配げな視線を回りにも向け始めた時、とうとう彼女は泣き出してしまった。なんとかこらえて続けようとするものの喉が詰まって声は出なくなり、身体がこわばったままで泣きじゃくる

Ant&Decの2人や女性ジャッジのアマンダ、そしてホリーのお母さんも舞台に駆け寄って彼女をなだめ,落ち着かせようと必死だった。思わぬ生放送中のハプニングに現場スタッフは大慌てだったに違いない。結局サイモンの「後でもう一度歌ってもらう時間を作るから」というツルの一声で彼女には2度目のチャンスが与えられた。これに関しては賛否両論だと思う。いくら子供でも、それが厳しいオーディションである以上不公平だ、という意見にも賛成だし、一方で彼女は確かに有力なスーザン・ボイルのライバルであり、その歌声をちゃんと聞いてからでいいじゃないか、とも思える。何よりもこの出来事は、「子供をこれだけ大きなプレッシャーの中で出場させて良いのか?」という論争を起こしかねない。でも、この番組がX-Factorと違うのは、あくまでもファミリー・エンターテイメント目線でのオーディションだという事だ。今すぐ売れるスター歌手を育てるためのものではない

サイモンが彼女に2度目のチャンスをあげたのは、きっとホリーちゃんがこのままセミファイナルに落ちたら,10歳の彼女のこれからの人生に大きな傷になってしまうと思ったからじゃないだろうか。それくらい彼女は絶望の底で泣きじゃくっていた。「2度目は無いのだ」という厳しい現実を教える事と、「今回だけはもう一度だけチャンスをあげよう」という事が彼女の人生に与える影響を天秤にかけての、とっさの判断だったと思う。生放送だから現場のスタッフは大変だったと思うけど、その後スムーズに4−5分の隙間を作って滑り込ませた。結局彼女はファイナルに進み、ファイナルでは「オペラ座の怪人」からの曲を歌い切った。(かなりシェイキーだったけど、、、)最初のマイフェアレディーの時のパワーのある声はその後聞けなかったね。でもこの子にもこの後きっとバックアップがつくだろう

優勝はDiversityかSuzan Boyleか・・・と思っていたけど、もう一人、3位になったサキソフォン奏者のJulianがとても心に残っている。感動を生むのは何によってなのだろう、、?最初のオーディションでの彼のSomewhereでは胸が痛くなった。おだやかな39歳、今までの人生は運の悪い事が多かったという彼だけれど、どこか暖かな空気を持った人だ。彼のサックスの音は胸にまっすぐに響いてくる。ジャッジのサイモンが言った「君には何か特別なものを感じる」という言葉、全く同感。もっと彼のサックスを聞いていたくなる。ファイナルもよかったけれど、最初の感動という事で、このクリップがおすすめです。

ジュリアン・スミス氏のSomewhere(←こちら)


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