今日は違う事を書くつもりでいたのだけど、目にした新聞の劇評を読んで思わず唸ってしまった・・・・

日本でも放送されてるだろうか、、Doctor Whoというイギリスの長寿SF番組がある。最初に始まったのは60年代で、主役のドクターは地球にやってきた宇宙人という設定で、ドクター役は007のように今まで何度も変わっている。まあ番組についてははしょるとして、ここ数年10代目のドクター役を演じていたDavid Tennantという役者がが去年、RSC(ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー)のストラトフォードでハムレットを演じた。彼は元々RSCのメンバーで、舞台でのキャリアも多い。

今回ロンドンでの12月から1月10日までの限定公演が決まって、プレビュー(初日直前の2週間程、通し舞台稽古を安い料金で見せる)も好評だった。ところが、劇評家達を一同に招待してのプレスナイト事実上の初日前日に、持病の椎間板が悪化して手術が必要な為降板すると発表された

ドクター・フーで人気だったのだから、当然デヴィッド・テナント目当てでチケットを買った観客は大勢いたわけで、事実チケットはソールドアウト状態。ところがRSC側のアナウンスは「明日からは代役で公演を続行しますので、チケットの払い戻し等は致しません」と強気なものだった。演出のグレゴリー・ドーラン氏(市村正親さんや藤原竜也君の出ていたヴェニスの商人を演出した人)が発表した翌日からの配役は・・・・

「現レアティーズがハムレットを、レアティーズはギルデンスターンが、ギルデンスターンはルシエイナスが、ルシエイナスはフランシスコが演じます」

なんと、雪崩のようなチェーン代役だ!

そしてレアティーズから一夜にしてハムレットになったEdward Bennettは、スタンディングオベイションを受ける。イギリスにおいてスタンディングオベションというのが良かっただけでは受けられないという事は前にも書いた。「良かった、感動した」だけではイギリスの観客は立ち上がらない。もっと脱帽や敬意の念を表する時に立ち上がる

もちろん去年のストラスフォードの時点から彼はハムレットのアンダースタディーに配役されていたわけだから、演じる準備は出来ていたはず。でも実際に演じたのは今回が初めてだ。おまけに地滑り代役で、まさに歯車を一つずらして掛けかえて、芝居が回っていかなくちゃならない。この歯車で結局21公演を演じ切った

そして1ヶ月、、、年が明けてハムレットの楽日まであと10日という時に、先月手術したばかりのテナント氏の復帰が発表された。毎日様子を見ながら、その日の出演を決めるという形で・・・きのうまでの配役から、また歯車を一つずらしてのリセット。ベネット氏はレアティーズに、レアティーズはギルデンスターンに、ギルデンスターンはルシエイナスに、ルシエイナスはフランシスコに戻って楽日までの公演が続く

両方の配役で観たという女性批評家の感想が載っていた。「ベネット氏のハムレットは素晴らしく、感動的だった。そしてテナント氏が戻ってのハムレットは、やっぱりこれが元々の配列なのだと納得する調和があった。アンサンブルとしてのカンパニーの勝利だ」と。RSCの人達の層の厚さとレベルの高さはもちろん今までも定評があるのだけれど、今回はそれを改めて見せつけた代役劇だ

私がこっちで観て本当に楽しかったミュージカルが日本で上演されている。友人に声を大にして「絶対に面白いよ!」と薦めておいたので、観てきた友達が感想をメールしてくれた。「役者ひとりひとりのレベルが高ければ、まやが言ってたようにメチャ面白くなるんだろうなという事は解った・・・けど、皆が自分の好きに演じちゃって失敗してる」と・・・・ 確かにあのミュージカルは馬鹿げてるからこそ、役者の力量がものを言う。役不足なくらいの役を皆が最高レベルで演じるから可笑しくて大笑いできるのだ。(どの芝居の事かはこちら

役者も基本は職人芸なんだよね・・・そしてその先がもっと底が深い。代役で舞台に立つというのはあくまで出発点で、その役をどう演じるかが個々の役者の見せ所。そういうレベルの役者が掃いて捨てる程いるというのが、凄い

さて、明日はPiafを観に行く。これもかなり評価高いので楽しみ!


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