ブレア政権から後を引き継いだもののすっかり人気がなくなってしまって、リーダーシップが疑問視されていたゴードン・ブラウン首相が、火曜日の労働党大会で吠えたらしい。とはいってもどうも彼の場合貧乏クジの連続で、これはやっぱり長くは持ちそうも無いなというのが実感。

その昨日の労働党大会で文化相が発表したのが、若い人達にもっと劇場に足を運んでもらおうという趣旨で、18歳から26歳までの若者を対象に、芝居のチケットを無料にするという案。来年2月から2011年3月までの2年間、週に一度(例えば比較的客足の少ない月曜の夜など)18〜26歳までの人達が無料のチケットをもらえるというもの。WestEndの劇場はもちろん、全国で95カ所のベニューに於いて実施されるらしい。

イギリスは元々階級社会だ。これは少しずつ変わってきてはいるものの、人々の生まれ育った意識の中にインプットされているものなので、金銭的な生活レベルとはちょっと違う。貴族レベルのアッパークラスは別格としても、このごろは大学を出てそれなりの仕事に就き、収入も安定して家も買ってる人達は生活レベル的には幅広いミドルクラスになりつつある。でも生活や遊びの楽しみをどこに見出すかで、結構階級意識というのが出てしまうのだ。

たとえばスポーツ。フットボール=ワーキングクラス(労働階級)ラグビー=ミドルクラスクリケット/ポロ=アッパークラス、といった具合。もちろんこれはおおまかな解り易い例えなので全部じゃないけれど、一般的な見解。週末の夜なら、一番下がパブ、ちょっと週末に遊ぶ余裕のある人はレストラン〜ナイトクラブ(ディスコ)、選ばれた人々は会員制の高級クラブへ・・・

で、劇場というのはやっぱりミドル〜アッパーの場所なのだ。労働階級の人達の多くは、「劇場なんて自分の足を踏み入れる場所じゃない」と思ってる。チケット代が高いというのはもちろんあるけれど、それなりに安い席だってあるのだ。レスター・スクエアーのチケットブースに行けば当日のチケットが半額で買えるし、劇場によっては2階席やギャラリーをかなり手頃な値段で売っている。でもお金じゃなくて、意識的に「敷居が高い」と思っている若者達は沢山いる。

今回の政府の案では、とにかく「劇場で芝居を観た事がない若者達に無料のチケットを配る事でその機会を与え、観劇を身近な趣味として考えられるような環境を作る」という事だそうだ。確かにね、私が日本で芝居をやっていた頃なんて、普通の人は芝居なんて観に行った事がないという現状だった。高校の頃、一緒に芝居を観に行ける友達なんて一人しかいなかった

私の場合は、子供の頃から両親が子供向けの芝居に連れて行ってくれた事が大きい。木馬座とか、俳優座の子供劇場とか・・・まあ、子供向けミュージカルだよね。観てくるとプログラムの後ろについてるビニールのソノシート(レコード)を何べんも何べんも覚えるまでかけては歌っていた。中学に入って普通の大人の芝居を劇場に観に行くようになってからは、私にとって劇場に行くのは映画館に行くのと変わらない感覚だった。むしろ、芝居は一人で観に行くのが平気だったけど、映画は何故か一人で行けなくていつも誰かを誘っていた。なんでだろう・・・?映画館に一人で行くのってかなり大人になるまで気後れしていた。

ミュージカルのオーディションをテレビ番組にして大人気を博したおかげで、ここ2年間での劇場への観客動員数はうなぎ上りだそうだ。ほとんどはミュージカルが主体だけれど、去年は2006年より18%もアップしている。今年も秋にリバイバルされるミュージカル「オリバー」でまた新しいスターが誕生する。オーディション番組についてはこちらで触れてます。ミュージカルじゃないストレートプレイが苦戦しているウェストエンド。新しいそして若い「芝居好き」が増えてくれるというのは嬉しい。

日本でもどうかしらね。お相撲とか歌舞伎とか、テレビでしか観た事無いっていう人がほとんどだと思う。思い切って若い人達を呼びこんでみては・・・。80年代に劇団四季が初めてCatsをロングランした事の意味は大きい。何はどうあれ、ロングランするうちに口コミや評判が広がり、「一度行ってみようか」という事で初めて足を運んだ人は多かったはずだ

あれから10年もしないうちに東京にはあちこちに新しい劇場ができ、劇団と名のつく数がものすごく増えた。小劇場ブームなんて事まで・・・ロングランのない日本の公演は、今やチケット取るのが大変だなんてね。オークションに芝居のチケットが並ぶなんて・・!!! あの頃には考えられなかったよ。でもそれでもまだまだ芝居を観る人っていうのは本当に限られてるんだろうけど。

こんな案が出てくるイギリスの政治っていうのもユニークだ。でもね・・・ちょっと気になるのが、「フリーチケットの対象はあくまでも芝居を観た事がないような若者達」っていうんだけど、そんなのチケット購入の際にどうやってわかるのよ・・・?? おまけにその2年間に渡るフリーチケットの代金およそ250万ポンド、しっかり我々納税者の税金から出るんですってよ・・・・オリンピックもあるっていうのに、いったい私達にこれ以上どうしろっていうの・・・??!


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