小学生の頃、明智小五郎シリーズにはまり、学校の図書室から、二十面相対明智のストーリーは全巻読破した。 同時に怪盗ルパンにもはまり、二十面相とルパンは私の中でまさに理想の怪盗紳士として君臨する。

その頃は、まだ探偵小説としてしか江戸川乱歩氏の本を読んでいなかったので、氏独特のちょっとおどろおどろしい湿ったような空気感に触れるのは、もう少し大人になってからだ。 それでも西洋館とか、洞窟とか地下室といったなんだかちょっとどきどきする雰囲気を感じ取りながら読んでいたっけ。

とりわけ「麻布の西洋館」というのが、私には家の近所という事で気になって仕方がなかった。 高台のほうには、外人さんの家(まあ、大使館関係の人たちの為の家だったと思う)がいくつもあったので、「あの家の事だろうか・・・」とまで想像してしまったりした。 私が小学低学年の頃は、まだ近所の公園に紙芝居のおじさんが来ていたし、ちょっと馴染みのある地名が出てくるととても身近に感じたものだ。

「Always 3丁目の夕日」を創ったスタッフが、金城武さん主演で怪人二十面相の事を映画にするというニュースを聞いた時、明智と対決した二十面相のバックグラウンドを描いた本があるという事を初めて知った。しかも書いたのは戯曲家でもある北村想さんだという・・・まさにびっくりだった。で、日本に行った時、これは是非とも読まねば、と買ってきたのが、「怪人 二十面相・伝」。

サーカス団にいた丈吉が、世間という観客を相手に大見せ物としての劇場犯罪を企て、名探偵として名高い明智に挑戦状を送りつける・・・命がけの死闘の後に影を潜めた丈吉に変わって、戦争を経て10年後に、サーカス時代の弟子であり息子のような世代の若い平吉が2代目二十面相となり、かつての少年探偵団長、小林=2代目明智と再び世間を騒がす知恵比べ犯罪に挑戦する。

面白いよ!! これ良いよ、私好きだよ!

オリジナルの持つ空気感を壊さずに新たなストーリーを作り上げ、それがオリジナルのシリーズのあちこちに出てくる背景とちゃんと一致させてある。 まあ、戦争をはさんだ2代もの、二十面相も明智も二人ずつ2代目に受け継がれるという発想はちょっと考えつかなかったけど・・・泥棒修行っていうのがすごく気に入ってしまった。

今時の感覚では考えられないような文体や言い回しが、かえって乱歩原作の持つ世界を再現している。ねっとりとからみつくような、ちょっと湿った匂いのする文体なのに、サーカスという身軽で軽快な背景によって、ヘンにべた付かないスピードのある世界を創り出している。 まだ二十歳そこそこの平吉がまるで70歳のじいさんのようにしゃべるのは如何なものか、、 とも思うけれど、それもオリジナルの持つ文体を尊重しての北村さんの気遣いなのかもしれない。

後になって乱歩氏のほかの作品も沢山読むようになって、そのちょっと埃臭い、まとわりつくような空気感がよく解るようになった。 それがちょとエロティックな世界としてテレビドラマ化されたりもしていたっけ。どうしてだろう?明智って色気が無いんだよね〜。 むしろ二十面相のほうが、ちょと怪しくて危ない魅力を子供心にも感じたものだ。 謎の怪盗を謎じゃなくしてしまった、という事はどうでも良い。これを読んだら、また原作を読みたくなってしまう。なにせ読んだのはもう昔の事で、一つ一つの事件の事まで詳しく覚えてるわけじゃないし。

それにしても、明智夫人の文代さんまでちゃんと忘れずに登場させるとは、北村さんも原作のファンとしてこのストーリーを大事に書き上げたんだね。 映画がどんな本になってるのかは全く謎だ。本を読んだ限りでは松たか子さん演じるキャラは出てないし、丈吉〜平吉2代の二十面相にするには金城さん一人じゃ無理だと思うので、北村さんの本はあくまでもベースで、映画用にオリジナルのストーリーにしてるんじゃないだろうか・・・? 映画の公開はまだまだ来年だそうで、ホントに映画って創るのに時間がかかるんだから・・・

初代小林少年=2代目明智の顔がどうしてもどうしても山本耕史さんになっちゃうのは何故かしらねえ〜? 本を読んでる間、ずっと2代目明智は山本さんの顔にしかならなかった。台詞まわしまで聞こえてくるくらい。 久しぶりで夢中になって読める本だった!でももったいないので、実際には仕事の合間のお昼休みにしか読まなかったので、楽しみが長く続いたのでした、、、 明智シリーズを読みふけった時代のある人は、是非これも読んで!

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