1月に取った今年秋から来年秋にかけてのDonmar warehouse 主催の一連の公演チケットがやっと届いた。 3ヶ月毎の4公演。今年の夏は新作ミュージカルも数本あり、6月にはなんとYMOのコンサートもあったりで、現在取ってあるチケットだけで8枚・・・。他にもあれこれ調べる度にいろいろ出て来てしまうので、選択に苦労する。私だって、年に2回の2週間のホリデー費用を確保する以外に、あれこれ欲しい物も買って、芝居も観て・・・となると、そうそう全部が全部というわけにはいかない。
  
ロンドンの芝居というと、先ずWest Endという事になるのだけれど、「ウェストエンドでの上演」と言うと、通常はある程度の規模を持つ劇場での上演を指す。 100年以上の伝統ある劇場から、比較的新しいサウスバンクやバービカンといった、アートセンター等。でもロンドンで面白い芝居を発信しているのは必ずしも大劇場だけではない。キャパが100人にも満たないような小さなスタジオ級の劇場でも、その質の高さでOff West EndFringeと呼ばれて注目されている所はいくつもある。

Donmar Warehouseもそうだし、trafalger studios, Arts Theatre,野田秀樹さんがThe Beeを上演したSoho theatre, 夏の期間にシェイクスピアを見るならリージェンツパーク内にあるOpen air (野外)Theatreもある。 場所としてはウェストエンドではないけれど、Almeida, Hackney Empire, Hamstead, Bush, Lyric Hammersmith, そしてロンドンブリッジにあるMeniere chocolate factoryあたりは常に注目を集めている。 実際規模は小さくても評判の良い舞台は多いし、Meniere Chocolate Factory(本当に工場跡の倉庫のような所)からはその後ウェストエンドの劇場に進出した作品がいくつもある。

それらを全部アンテナ張って探すのはなかなか大変だ。パスして後から「行けば良かった〜〜」っていう事も何度もあるし、逆にウェストエンドの芝居だって全部が全部良いとは限らない。 ロングランものならレビューが出てから数カ月後にゆっくりチケットを取っても良いのだけど、逆に観ようと思ってたらいきなり幕を閉じてしまう事もある。

今年の夏はミュージカルの新作がいくつかあり、注目が「風と共に去りぬ」と「Marguerite」。風と・・は幕が開いたばかりだけれど、このレビューがイマイチ・・・。 一番の批判が「長すぎる」というのだ。休憩込みで3時間45分位あったらしい。 でも「風と共に去りぬ」ですからね、、短い訳がないのは百も承知なはず。でもLes miserables が3時間でなんとか収まってるんだから、その辺りは変更の余地ありか・・・プロデューサーは、舞台をなんとか3時間強に納めるべく検討すると言ってるらしい。 酷評と言う程悪いものではないけれど、「もうひと味、、!」を求める声と長すぎるというコメントが目につく。 もうひとつのMargueriteはまだ正式には開いてないけれど(プレビュー中)こちらはレ・ミゼとミス・サイゴンを作ったチームで、オリジナルのドラマチックなミュージカルになりそうだ。

月曜日に観て来たGod Of Carnageは、本当によくできた本だ。コメディーと言って良いのだろうか、、?確かに笑いっぱなしだったのだけど、内容がおかしいというのではなく、会話の弾みでコロコロと心理状態が変わっていく4人の男女の会話と反応、行動がリアルだからこそ笑ってしまう。

1時間半、一場面。休憩無し、舞台転換も暗転もなし。ひとつの部屋(応接間)で話をする2組の夫婦。 設定は、「お互いの11歳の子供同士が喧嘩をして、一人のコが相手を棒で撲って歯が2本欠ける怪我をさせてしまった。」事から始まる。加害者の子の両親が被害者の子の家に訪れて、応接間で2組の夫婦が、状況について確認し、子供同士を仲直りさせる方向に持って行くべく話し合っている。初めは2組とも丁寧に取り繕って、お互いを責めたり責任を追求したりという会話は避け、できるだけ穏便に事を進めようとぎこちない会話が続く。その取り繕ったぎこちなさと気まずい間がなんとも言えずおかしい。

ところが話をするうち、ちょっとした会話の行き先で、話題がかわり、その度に4人それぞれの意見が飛び交い、だんだんと4人各々の内面が浮き出て来る。 話題が変わる度に、同意したり反対したりする相手もくるくると変わる。5分前まで味方をしていたのに、次の瞬間怒鳴り合いになっていたり・・・。男と男、女と女、男と女、親と親、妻と夫、さまざまな立場での「化けの皮がはがれる様子」が次から次へと出て来る。最期には壮絶な夫婦喧嘩に発展し、4人が4人とも「人生で一番不幸せな日」を迎えてしまう・・・・

凄いと思ったのは、たった1時間半の間に一つの部屋の中で、これだけの事が起こり得るのだという事。 台本の勝利だ。無理な話の飛び方は全くしていない。明日にでもありそうな、ごく普通の会話からどんどん状況が変化していってしまうのだ。リアルだからこそ、客席で観ているほうは思わずゲラゲラと笑ってしまう。 本は「アート」を書いたフランスのヤスミナ・レザ。英語への翻訳はクリストファー・ハンプトン レザ女史はこれまでの舞台作品の英語役はすべてハンプトン氏にまかせているそうだ。それくらい、翻訳の微妙なセンスが問われる本だ。

4人の俳優達はまさに最強。 宣伝にはもっぱらレイフ・ファインズ(Ralph Finnes)の名前ばかりが上げられていたけれど、けっして彼の単独主役ではない。4人主役のチームプレーだ。 レイフ以外の3人はいづれも、ローレンス・オリビエ賞に受賞もしくはノミネートされた実績がある。(実は映画での活躍が多いレイフは、ロンドンでオリビエ賞にノミネートされた事がない。)

日本でもいづれ翻訳上演されるんじゃないだろうか。設定はフランスだけれど、これはどこの国でも共通して納得できる本だ。観た後に思わず「こういう芝居、やりたいな」と思ってしまう・・・・

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