本当は先週観たのだけど、すぐに感想を書いてしまうのがなんだもったいなくて書けなかった「死神の精度」
里帰りの前に文庫本を実家に届けておいてもらったので、観る前に読むか、観てから読むか迷ったのだけれど、結局読み始めて途中で映画を観ることになった。

筧監督はこれが初めての長編物ということだけれど、「素敵な映画を撮ったなあ」というのが正直な感想。おしつけがましくない、とでもいえばいいのか・・・とてもあったかい映画だ。もちろん伊坂さんの原作が持つ世界がそうだからなのだろうけれど、その空気を壊さないようなやさしい温度のある映画になったと思う。

金城武さんは本当にいつも、「良い映画に出るなあ」と思わずにいられない。
彼が(もちろん最終的には事務所として決めているのだろうけれど)選んで出演した作品はどれも好きだ。この死神=千葉役は中でもハマり役と言って良い。こんな不思議な、空気のような存在感を出せる役者って他にいないんじゃないだろうか・・・ 金城さんは不思議な人だ。だからいろんな監督が彼を使いたがるのかもしれないね。あの不思議な温かい空気はどこから出てくるんだろう・・・?演じようとしても技術では出せないものなんだねきっと。

3つの話のつながりがとても良い。これは原作にはない繋がりなのだけれど、これがあるからこそこの映画が映画として魅力あるものになっている。 冒頭で10歳の少女に「おじさん、なんにも解ってないんだね」と言われた死神は、一度見送りにした藤木一恵と再会する事で、死に至るまでの人生についてちょっとだけ知ることができる。


この3話での千葉の表情がすごく良い。そして富司純子さんの演じる、愛する人達を失い続けながらも生きてきた一恵は、見事に1話での一恵とリンクしている。 死神の千葉と一恵との決定的な違いは、死神は何の感情も無くその日の気分で「実行」か「見送り」かを決められるけれど、誰かを愛する度にその人を失ってきた一恵は、愛する人を生きながらえさせるためには(「見送り」にする)自分の愛を断ち切らなければならなかったということ。それを聞いた時に、千葉は人間を少し理解する・・・その時の千葉の表情がすごく良い!。3話では思わず胸に熱いものがこみ上げてくる。

どうしても、小西真奈美さんと富司純子さんが前宣伝には取り上げられてしまったけれど、私は2話の光石研さんがすごく良いと思った。あんなにカッコ良い光石さんを観たのは初めてだ。何度かドラマとかで見かけていたけれど、あんなに良い味を出してるのは観たことがないのでびっくりした。藤田、カッコ良いです。

実はものすごいタイミングだったのだけど、先週初めてこの映画を観ようと思ってもう出かける支度をしていた時に、従兄から電話があり、伯母が亡くなったという知らせだった。 そんな知らせを聞いた直後にこの映画を観て、なんとその翌日から雨続きになってしまった・・・・ おかしなもんです。

原作本はあと3話ある。読んでいると、死神千葉はもう金城武さん以外に想像できない位ハマっている。 本のほうは、最終章だけ(死神と老婆)まだこれからだけれど、映画では最後に千葉が一恵に「実行」と「見送り」のどちらの判定をしたのかは出てこなかった。
2度目の一恵への判定は千葉はどちらにしたのだろう・・・?
もう思い残す事はない」と笑顔で言い切った一恵にふさわしいのは、死神の下す「実行」と寿命を全うする事のどちらなのだろうか。

この映画は死について問題提議をしているわけでも、なんらかの解釈を主張しているわけでもない。ただ静かに死神の目を通して私たちに何かを気付かせてくれる。だれにでも必ず訪れる最期の時・・・ ある時突然訪れる不慮の死、その時に死を迎えるに値する人生を生きたかどうかーー

やっぱり思う。一恵は自信なさげに、「こんなに長く生きてきてよかったんだろうか?」と千葉に聞いていたけれど、生きてきてよかったのだ、と。

生きていれば、こんな日もあるんですね。」そのとおりだ・・・・