年末にジュリーこと沢田研二さんがらみで日本での公開がちゃんとされていない映画2本に行き着いた。 どちらも私はイギリスで観た映画だ。

ひとつは、    ポール・シュレイダー監督で、フランシス・フォード・コッポラジョージ・ルーカスが製作指揮を取った「MishimaーA life in four chapters」だ。
Mishima実はこれが日本で公開されていなかったという事を初めて知った。 これは85年の映画だからもう20年以上も前だ〜!。三島由紀夫の3作品と、彼の人生をドキュメンタリー風に再現した4部構成で「三島」の世界を映像化したもので、そういう点では1作品の映画化とは完全に違う。

私がてっきりこの映画は日本でも公開されたと思ってしまったのは、この映画が撮影されていた時点ではかなり話題になっていたからだ。 金閣寺の部分で、撮影所に実際に黄金に輝く金閣時のセットを創り、最期のシーンで豪快に炎上させたという事はニュースになった。 坂本龍一さんが自身の「サウンド・ストリート」というラジオ番組で、この三島役のオファーを「切腹するのは嫌だって断った」と話していた。(サウンドストリートはどんなに忙しくても、必ずタイマーでエアーチェックしていた)ナレーションも、緒方拳さんのヴァージョンの他に、海外向けにはロイ・シェイダーが担当して英語バージョンと2つになると話題になっていた。そんな撮影話が耳に入ってきていたので、最終的に三島夫人が日本での上映を許可しなかったというのは驚ろきだ。

何がお気に召さなかったのだろうか・・・?出来上がりが不満だったとか、三島氏の同性愛傾向が強く出過ぎているからだとか言われているけれど・・・・三島作品は映画化にしても舞台化にしても著作権が厳しくて、なかなか許可してもらえないというのは有名な話だ。でも潮騒なんて、過去に5度も映画化されてる、、?まあ、上映をしぶるとすれば、興行的に日本では成功しそうもないからというのなら解る。この「Mishima」は絶対に外国向けの映画だからだ。

日本人が「MishimaーA life in four chapters」を観にいく場合、まず全員が三島が誰だか知っている。 かなりの人は三島作品を読んだ事があるだろうし、ちゃんと読んだ事は無くても、ほとんどの人は有名な小説の概要くらいは知っているはずだ。85年の製作だから、三島氏の市ヶ谷での自決をはっきりと覚えている人が大半だろう。そしてなにより、猛烈な三島文学ファンも沢山いるはずだ。 そんな日本人がこの映画を観てこれが大ヒットになるかというと、、、ちょっと毛色が違う。 この映画は、三島由紀夫は有名な小説家だけどまだちゃんと読んでない、作品が沢山有り過ぎてどれから手をつけて良いか解らない、小説家以外にも右翼だったとか聞いてるけどよく知らない、天皇崇拝のバイセクシャルでナルシストの小説家らしい、、、等の人達向けなのだ。

実際こちらでは、これを観た後三島氏の(翻訳された)本を読んだというイギリス人を私は何人も知っている。3つの小説の世界観と、市ヶ谷での自決の日へ向けての三島氏の生い立ちをドキュメンタリータッチでうまく絡めて、三島文学をもっと知りたくなるような創りになっているのだ。映像はとても美しい。 そして何よりもフィリップ・グラスの音楽が耳に強烈な印象を残した。映画館で観たのはもう昔だけれど、いつかテレビでも放映されていて、その時にもまず音楽が真っ先に記憶に蘇ってきた。 身震いするような音楽で一度聞いたら離れない。キャストは当時の最強メンバーと言って良い。

三島役に緒形拳。「金閣寺」のパートでの坂東八十助と佐藤浩一、「鏡子の部屋」での沢田研二、李麗仙。「奔馬」の永島敏行、勝野洋。 他にも、萬田久子 烏丸せつこ 三上博史 大谷直子 加藤治子 横尾忠則 池部良 織本順吉 左幸子・・・・・と細部に渡ってがっちり固めてある。皆すごく良い。 市ヶ谷での演説の場面での緒方さんは、本当に良く研究してる。まだ若い佐藤浩一さんの演技力にも今さらながら感心するし、この映画での沢田さんは、おそらく妖艶なジュリーの面影が観られる最期じゃないだろうか、、、当時36歳、ギリギリです。女優陣もすごくパワーがあるし脇も手堅い・・・

映画としては確かに地味だし、ヒットするような文学作品ではないけれど、何だろう、、本気で創られてる映画だ。 監督も制作者も三島由紀夫に敬意を払っていることは確かで、こんなに本気で創られた映画が日本で陽の目を観なかったのは残念だ。 どうやらDVDが手に入るのはUS版だけのようだ。イギリスでも調べてみたけどDVDは無いみたい・・・サントラ版のCDはあるようだけど。 US版はリージョンがなので、もしマルチのDVDプレーヤーを持ってる人は機会があったらお薦めです! DVDには緒方さんナレーションの日本語バージョンも入ってるようだし。

長くなっちゃったよ、、日本で半端公開の「愛のコリーダ」はまたにしよう・・・・


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