さて、今週は別に何処へ行くとも予定してないホリデーなので、盛り上がりには欠けますが、とりあえずミュージカルです! ロイド・ウェバーの「Joseph and the Amazing Technicolor Dreamcoat」。今年の初めにBBCが大掛かりに手掛けた全国オーディション番組を勝ち抜いて主役のJosephを射止めたLee Meadは、後半には大勢の人が彼の優勝を確信していたはず。おかげでチケットはあっという間にSold Outで、来年6月までの上演延長が決定。Leeは、契約上のホリデー4週間を除くすべての公演に主演する。彼の歌唱力と舞台映えのするカリスマ的な魅力のある大きな目は歴代Josephの中でも光ってる。 夏に、2人の王子達が主催したダイアナ妃の誕生日コンサートで、この歴代3人のジョセフが一緒に歌ったけれど、ド二ー・オズモンドより力強く、ジェイソン・ドノヴァンよりカリスマ性があった。

このJoseph・・・は確か日本では上演されていないはず。オリジナルは「Jesus Christ Superstar」よりもっと前の1968年 ジーザス・・エヴィータ同様、作詞はTim Rice氏。このミュージカルを書いたのがウェバー20歳の時だからやっぱり凄い・・・最初は短編として書いたものが、その後どんどんストーリーと曲が付け足されていったので、フルヴァージョンの上演は70年頃からだったそうだ。ストーリーは聖書の創世記に出て来るエピソードを元にした子供も大人も楽しめるミュージカルだ。

実はストーリーは大した事無い。イスラエルのヤコブという男には12人の息子がいたが、とりわけジョセフという子を可愛がっていた。ジョセフは父親の愛情を一身に受けて成長する。また彼は夢を見るのが大好きで、夢を分析して占う力を持っている。ある日父親がジョセフにマルチカラーのコートを与えてやる。色とりどりの他には見た事もないようなロングコートで、もらったジョセフは大喜び。さらに彼は他の兄弟達が自分の前にひれ伏している夢を見た話をしたりしたものだから、他の11人の兄弟は激しくねたみ、ジョセフを密かに襲ってコートをズタズタにし、さらにはエジプト人に奴隷として売ってしまう。 そして父親には兄弟口裏を合わせて「悲劇の事故」と報告する。エジプトで、ジョセフは主人の奥方に執拗に誘惑される。やがて妻とジョセフが一緒にいる所を見た主人は嫉妬からジョセフを牢屋に放り込んでしまう。 失意のジョセフだが、夢を信じる事だけはあきらめない。そして牢屋で一緒になった皆の夢占いをしてやるようになる。やがてエジプトの王=ファラオがジョセフの夢を占う能力の話を聞いて、彼に自分が見たエジプトの将来の夢を分析させる。王に気に入られたジョセフはエジプトで2番目の地位に就き、富も権力も手に入れた。そこへ飢饉続きのイスラエルからボロボロになったヤコブの息子達が救いを求めてエジプトにやってくる。権力者であるジョセフを訪ねた兄弟達は、彼がかつて自分達が厄介払いした弟だとは気付かない。一度は仕返しに末の弟を罠にはめて牢屋に送ろうと考えたジョセフだったが、長い年月の間に自分も変わり、兄弟達もまた以前とは違うのだと気付き、自分の素顔を明かして家族が再開する。 

別に教訓めいた話でもないし、このミュージカルは全国の学校で文化祭/学芸会としてアマチュアに上演される事が多い。子供向けにも充分できる。演出次第でどうにでもできるというのが学生演劇に良いのかも。今回の演出は子供も大人も楽しめる。先に見た「The Lord Of The Rings」とはちがって、こちらは思いっきりマニュアルだ。 テクノロジーを駆使した仕掛けや見た目のスペクタクルは使わず、ちょっとダサイ小道具が出てきたりして笑える。11人の兄ちゃん達がとにかくおかしい! ユダヤ人だから彼等の曲はちょっとユダヤ調なんだけど、ダンスの振り付けがコサック(ロシア)だったりして。おまけにエジプトのファラオは思いっきりエルビス・プレスリーしていて、曲もロカビリー&ロックンロール。

ロイド・ウェバーのミュージカルはこうだったはずだよ。全体にロックっぽいんだけど、曲はバラエティーに富んでいて、バラードあり、ジャズっぽいのや、ロカビリー、ヒップホップ、カリプソ、民謡調・・・・若かりしロイド・ウェバーの溢れるような才能が次々出て来る。 帰りにはいくつものメロディーが頭の中を回ってる。一度観た舞台で頭に焼き付いてしまうメロディー。それなのに、最期に観た彼の「A Woman in White」は一体どうしちゃったんだ・・・!?遂に才能枯れ果てたか・・・?とまで懸念してしまった。 そういえば、日本では四季が上演を開始するんだったっけ?音楽的には面白くないです。

主役のLeeは本当に歌で語れる人だ。オーディションの段階から彼の歌は他の人とは違ってた。 なんて言うのかな、歌の歌詞をちゃんと台詞として自分の解釈で伝えて来る。オーディションで歌ったローリング・ストーンスのPaint it Blackはもう彼の歌になっちゃってて絶賛された。(こちら

そもそもオペラでもないのに台詞が全部歌になっている形のミュージカルを生み出したのがロイド・ウェバーだ。「Jesus Christ Superstar」が大ヒットになった時は「ロックオペラ」と呼ばれた。その後数年の間に彼のいくつもの作品が、確実に新しい形のミュージカルとして確立してしまった。 オペラとの決定的な違いは、クラシックな喉を聞かせる事ではなくて、あくまでも歌で台詞を語るという事だ。だから、それまでのミュージカルの発声法とは違う歌い方が必要になったのがロイド・ウェバー以降のミュージカルだ。台詞としての微妙な感情を声と呼吸で出し、一語一語はっきり歌詞が書き取れるくらい明瞭に語らないと話が解らなくなってしまう。牢屋の中でジョセフが歌う場面のクリップはこちら

やっぱりね、ミュージカルは役者の唾が飛び、汗が飛び、エアコンが入っていても場内がどんどん熱気で暑くなって来なくちゃね! さすがにSold Outだけあって、場内満席だった。Box席まで全部埋まるのは珍しい。子供連れも多かったし。BBCのオーディション番組の威力は凄いね。その分Leeは「客は自分目当てに来る」というプレッシャーがあるんだろうけど。 でも彼は素人じゃない。いくつかの舞台キャリアがあるし、「オペラ座の怪人」のラウル役のアンダースタディー兼アンサンブルとして出演していたのを辞めてJosephのオーディションに参加した。安定したアンダースタディーより、冒険しても主役を狙った彼の勝ちだ。

現在ロイド・ウェバー氏は「オペラ座の怪人」の続編を書いてるそうだ。そういえばTake Thatのギャリーとのコラボの話があったけど、これがそうなのかな? Sunset Boulevardを最期に、それ以降の作品はちょっと沈んでると思うので、またこのへんでヨーロッパ中に流れるヒット曲が出るようなミュージカルを書いて欲しいもんです。

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