見つけもの @ そこかしこ

ちょっと見つけて嬉しい事、そこら辺にあって感動したもの、大好きなもの、沢山あるよね。

January 2023


ロシアとベラルーシからの出場が無いフィギュアのヨーロピアン選手権。なんだかすごく懐かしい感じ。私が好きな(だった)ヨーロッパの香りのする大会。個性豊かで色とりどりで、僅差を争うプログラム。毎年楽しみにしていた大好きな大会が戻って来た感じがする。特に女子は、上位はロシアで決まり!みたいな近年のヨーロピアンは他の選手達もなんだか最初からから表彰台は狙えないし、、、という空気で、それでも頑張らなくてはならないのは痛々しい、、

一昔前はヨーロピアンの優勝者がそのまま世界選手権の優勝候補、みたいな流れだったけれど、最近はアジア勢もアメリカ・カナダも強いので、ここからが真剣勝負の面白さだ。時を同じくして全米大会も行われていて、毎年お馴染みのスコア爆盛りがスゴい。でもこれはもう世界中が黙認しているようなものなので、当の本人達も盛られていることは自覚しているはず。

マリニン君がなんだか逞しくなってきたなあ〜。JOから4ヶ月だけど体つきも変わっている感じ。彼は素直に成長していると思う。テクニカルな力は素晴らしいのに、背伸びをしないで階段を上っている。今年はまだ少年と青年の狭間だけれど、1〜2年で素晴らしいスケーターになるぞ、、、、ご両親コーチの教えだろうか、彼には傲慢さがない。そういえばGPFの時のプレスカンファレンスで、昌磨君が質問に答えて話したのを英語に通訳されているのをしっかりと聞いていて、時おり「うんうん、」と頷いていたのが印象的だった。フリーではミスが出たけれど、あの構成はそうそう簡単にミスなく滑れるものではない、、、最期のタイムオーバーのリカバリーは、昌磨くんの全日本を観たのか!?と思ってしまったけれど、曲に遅れてる感じは無かったから編集のせいかな?でもそういうメンタルを持ち合わせているあたり、これからもどんどん成長してくる選手だと益々楽しみになる。

そしてジェイソン!もう本当に美しいし神々しいし、本当にこの人に高難度ジャンプが無い分を、昌磨くんに頑張ってほしいと思う。やっぱり彼の身体の使い方とか見ると、昌磨さん本人はどう思おうとバレエは大事だ。踊るという事の基本は身体の動きを自分の理想とする形で見せること、その為には身体中を自由に動かせる技術がどうしても必要だよね。そんなこともこの3ヶ月の間に考えてはいるのだろう(やるかやらないかは解りませんが)、、、っていうか、昌磨君だって子供の頃からバレエはもちろんやってはいるわけで、全然やっていないはずは無い。だたあんまり好きじゃないから自分の中での存在感が薄いのだと思う。本人が言うほどやってないわけじゃないと思いますよ。

全米女子のイザボウは、マッチ棒みたいだった去年より少しアスリートらしい身体になってきて、彼女とイリアがこれからの全米を背負って走って行くことになるのだろう。同時に大人スケーターのブレディーやグレイシーも頑張ってくれていて嬉しい。

さて、ヨーロピアンだ。男子はアダム選手がチャンピオンになった。このプログラムとても個性的なのできちんと表現できないと難しいけれど、しっかりとジャンプも決めて滑りきった。私は個人的にはケヴィン・エイモズ選手のプログラムが大好きで、本当に私とフランスは相性が良いのだと改めて思ってしまったりした、、、ケヴィンは本当に悔しかったと思う。去年からの怪我は完治しているのだろうか?ショート、フリーとも是非ミスの無い形で見せてほしい。オフリンクで大泣きしていた、、、世界選手権待ってます!

イタリアはマッテオ君のメダルで、ダニエルはちょっと崩れてしまっているかんじだなあ〜。リンクサイドにはデュダコフ、グレイヘンガウス両氏がいたけれど、キスクラには座らなかったね。ロシアに練習に行った事でバッシングなんかもあったんじゃないだろうか。メンタルがちょっと気になる、、、、昌磨さんがロシアの合宿に行った時はジャンプの練習をしたかったのに、決められた事しか「やってはいけなくて」、自分の意思で練習を組み立てる彼にはかなり違和感だった様子。帰ってきてからもロシアでの事は無かったかのように何も語らず、、、(内容を話してはいけないという規約条件でもあったかな)ダニエルにも落ち着いて成長できる場所が見つかりますように。他にも各国からの素敵な選手達がたくさんで、だからヨーロピアンが好きなんだ。デニスもケヴィンも世界選手権楽しみだよ!

男女とも嬉しい発見だったのが、銅メダルのスイスの選手達。ルーカス君、名字のほうがどうも「ブッチギリ」に聞こえてしまう(笑)。ステファン以来のスイス選手表彰台という事で、リンク裏でステファンに祝福されてたね。女子のキミー・ルポン選手も初々しくて可愛かった。彼女はこれからの体型変化をどう乗り切れるか、、?安定感を考えるとまだまだ他のトップ選手と互角に戦えるまではいってないかな~。

絶対にここでチャンピオンになりたかったルナ・ヘンドリックス選手は、やっぱりプレッシャーだったのかな。出だしはちょっと固いながらもうまく行っていたのに、中盤の2本の転倒は痛かった。彼女の持つダイナミックさは十分プログラムに生きていて、今回は本当に「不運」だったとしか言いようがない、、、大泣きしていたのが可哀想だったね。でも世界選手権ではきっとリベンジに来ると思うな。日本勢も危ないくらいに。

女子優勝はジョージアのグヴァノワ選手になった。美しい安定したスケートで、これはやっぱり優勝に値する。彼女もこれからの安定感では常時トップにくるのかな。ただ、彼女にもあらぬバッシングがされているのを目にした。「元々はロシアの選手が国籍だけ変えて、今もロシアで練習しているのに、これはいいのか」というもので、本当に政治のせいで試合に出られないロシアの選手達の思いも解るけれど、そもそもロシアの選手、というかコーチ、トレーニングセンターというのはみんな国家に所属しているのだから、「個人だけ」というのは認められない。むしろグヴァノワ選手はロシアからは「国を捨てた裏切り者」と思われてるのかもしれないし、本当に私達には解らない事だ。そんな中でもスケートを頑張り続けているのだから、彼女の美しいスケートを応援したい。

アイスダンスで注目していたのは、イギリスのライラとルイスのペア。今季のプログラムが両方ともかっこ良くて、シーズン初めの頃よりもっともっと洗練されている。イタリアペアには届かずに銀メダルだったけれど、久し振りにトップで戦うGBカップル。世界選手権はアメリカ、カナダ、日本、ヨーロッパと、アイスダンスは楽しみが一杯だ。今まではパパシゼ組とロシアで上位に入れなかった人たちが多いので、3位になったフィンランドのカップルとか、また見たくなるプログラムがたくさんあった。表彰式でスザナ・ラカモ氏からメダルを受け取って、スザナさんが凄く嬉しそうだった。大好きだったな〜、ラカモ・コッコ組。

長くスケートを応援してきているので、沢山の選手達を推しては見送ってきた。往年の推しが、今も別の形でフィギュアスケートを支えていて、今でも元気な姿を折りに触れて見かけるのは本当に嬉しい。スザナさんもそうだし、コーチになってるステファンやジュベール氏、振り付けで名前を見る人たち、、、

なんだか日本の国体も楽しそうな事になってるし、盛り沢山で追い付けないよ、、、何が何処で放映されるのかチェックしなくては。



今月テレビ放映された二つのショー、高橋大輔さんプロデュースの「Ice explosion」と浅田真央さんの新しいショー「Beyond」。

同時期に世界のトップとして活躍し、引退するにあたって二人ともショーを創りたい、アイスリンクを造りたい と夢を語っていたのはほんの数年前。大輔さんの「氷艶」は初作が歌舞伎との融合、2作目は光源氏、3作目の「Luxe」と氷上の舞台芸術を切り開いている。そして今年のアイス・エクスプロージョンは映像で見ただけでも「凄さ」を感じるものだった。

昔から、私の中の評価基準に「心が揺さぶられる」というのがある。胸がザワザワとしてくるような感じを呼び起こされる物。 実は滅多には出会わない。芝居でもコンサートでも、「よかった、楽しかった、興奮した」というのはよくあるけれど、胸が揺さぶられるような感覚というのは、なかなか体験できるものではない。だから、そういうものに出会った時は、感動して心が震えるのだ。

テレビ放送では一時間分しかなかったので、実際のショーの半分もあったのだろうか、、、?でも、それでもオープニングから最後まで息をつくのも忘れるほどにのめり込んで観ていたのだった。今はまだ現役のアイスダンサーとして世界大会にも出場している合間を縫ってのショーだったから、プロデュースをするのは大変だったと思う。でも大輔氏の目指すアイスショーの未来が垣間見える。彼の持つ世界観、そして今までの経験からも学んだと思われる、まさに「舞台芸術」としてのショーのあり方にこれからの新しいアイスショー時代に期待せずにはいられない。
とにかく素晴らしくレベルの高いショーだ。群舞やコラボも「そうきたか、、、」と唸ってしまう。
 
そしてもう一つこちらは舞台裏密着という形でテレビ放映された、浅田真央さんの新ショー「Beyond」。真央さん自らオーディションで選んだという10人でのショーは、企画から構成、衣装や演出を全て考えて作り上げたという。本来は去年の公演予定だったのがオミクロン株の拡大で大幅に遅れ、一時は開けるのかどうかわからないうちに真央さん自身もコロナに感染してしまったそうだ。

それでも開催が遅れた分、時間をかけて創り上げたショーは無事に9月から全国公演が始まっている。真央さんのスケートへの思いがつまったとてもレベルの高いショーに仕上がったようだ。この舞台裏番組を観ていると、自分が役者時代のことを思い出す。芝居を創る作業と本当に同じだからだ。文字が書かれただけの台本を一つの世界に作り上げ、そこに息を吹き込み、感情をのせ、ドラマを創る、そして感動を生む、この工程はまさに同じ。その途中には、様々な発想からの選択や意見の食い違い、細かい部分までの打ち合わせやスタッフと関わり、、、いろいろなことが最期まで「本当にこれでいいのか??」と疑問を投げながら進んでいく。真央さんの悩む姿が良くわかる、、、、

今まではゲストに世界的なスケーターを呼んで演技を披露していくスタイルだったアイスショーが、変わりつつある。世界のトップで活躍した日本選手達がこれからは自らプロデューサーになって新世界観の表情舞台を作っていく時代になったのだ、、、そう思うと本当に感無量!!長年フィギュアのファンでいて本当に良かった!

Ice Explosionの完全版の放映は3月という事で、もう今から早く見たくてたまらない。いつかお二人が話していたように、大輔さんと真央さんが一緒にショーに出ることも楽しみにしたい。一緒に作るのはお互いにぶつかりそうだから、どちらかのショーに出る、という形かな。それとも一大企画で共同プロデュースなんて日も来るのだろうか、、、??

お二人のアプローチは少し違う。真央さんのショーは本当に劇団のようなチームで、極上の芝居を全国に届けてくれるイメージがある。大輔さんのほうは壮大なイメージを表情空間に創る、ミュージカルのようなイメージ、、、 この二つに共通しているのは、出演者が必ずしも世界トップ選手に限らない、ということだ。もちろんトップ選手もいるのだけれど、「こんなに素敵なスケートをする選手がいる」ということを知名度にかかわらずキャストに入れてチームにしていることだ。

荒川静香さんの「Friends On Ice」には世界中の「元チャンピオン」が集結する。それは彼女の時代には、世界でトップでなければアイスショーに参加できなかったからだ。メダリストだからこその「友達の輪」で、荒川さん自身が金メダリストになったからこその顔ぶれだ。このレベルの高いショーは他のどのショーよりも豪華な顔ぶれが毎年揃う。そして大輔さん・真央さんに時代になり、自らのプロデュースだからこそ、有名・無名にかかわらずチムの一員にしたいスケーターをメンバーにすることができるようになったと言える。

どちらにしても、私も早く仕事を引退して日本に長くいられるようになったら是非実際のアイスショーに足を運びたい。

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コロナ以来すっかり激減した劇場通い、でもせっかく年末年始は休みなので年の締めくくりに観に行くことにした。最近はすっかり大劇場よりもスタジオ式の空間がお気に入りで、今回もキャパ200のPark Theare。規模は小さくても高評価の演目で評判の劇場だ。

舞台は1900年クリスマス直前の話。Wickiesというのは灯台で導火線等を管理する、いわゆる灯台守たちを呼ぶスラング。(当時はオイルランプだった)そしてこの芝居には「消えたエラン・モール(島の名前)の男たち」という副題が付いている。エラン・モールはスコットランドの西側にある群島の一つで、燈台を管理する3人以外に住んでいる人はいない。
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エラン・モールの灯台には常時3人が勤務している。常任でベテランのジェイムス・デュカット、第二キーパーのドナルド・マッカーサー、そして臨時に加わった漁師のトーマス・マーシャル。ジェイムスはもう長年ここに勤務しているベテラン、ドナルドも常時勤務だが、トーマスは今回初めて配属された季節やといのメンバーで一番若い。

若く元気なトーマスは新鮮な目でこの灯台での暮らしを見回す。スコットランドの冬は寒く、何より暗い。島での生活は日は短く、冬の期間はほとんど嵐のような日が続き、なにより他に誰もいないとあって孤独だ。他の先輩二人と少しずつ打ち解けるうちに、彼はこの島にまつわる不気味で不思議な逸話を聞くことになる。

トーマスは二人に「家族が遊びに来たことはないのか」と聞くと、二人の空気が一変する。話したがらない二人を問い詰めて聞きだすと、前任者の家族に悲劇があったことを話し始める。島には人は住んでいないが、この灯台は前年にできたばかりで新しく、居住エリアも充実している。物資は定期的に運ばれ、2週間ごとに数日の休日があり、その時は島を離れて家に戻るのだ。トーマスは前任者の家族が遊びに来た際、幼い娘の一人が海にさらわれ、もう一人の妹も島の古い教会で姿を消してしまったという話を聞く。そして母親は錯乱して自殺、、、この島はそれ以来呪われているというのだ。
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ちょっと怖いお話だ。怖いといえば、なんと言っても「Woman In black」に勝る芝居はないと言っていいと思うのだが、この話もなかなか怖い、、、日中がほとんど数時間という冬のスコットランド、他に誰もいない孤島、他の世界から切り離された孤独感と、言い伝えによる摩訶不思議な恐怖感は次第に3人の男たちの精神を追い詰めていく、、、、、

実はこの話が本当に怖いのは、実話に基づいているということだ。1900年の12月26日、交替要員と物資を運んできた船の船長は誰も出迎えに来ないことを不思議に思う。灯台に行ってみると、誰もおらず、鍵はかかっていない。台所では椅子が倒れたままになって食べかけの食事が残っており、一人の外套はドアにかかったままだった。通常、3人が一度に持ち場を離れることは禁止されており、さらにこの寒い冬の夜に防寒外套も着ないで外に出るのも考えられなかった。

さらに、残されていたトーマスによる日誌には、12月の12.13,14日と「これまでの人生で経験したことが無い大嵐、3人で祈り続ける」と記されていて、最期の15日には「やっと嵐が収まった。海も静か。すべては神の御手による」とある。日誌にはジェイムスは嵐の間ひたすら無口、ドナルドは泣いていた、3人で祈っているとも記されていた。調査にあたった警察は何の手掛かりもないまま、17日に島を襲った大嵐で2人が風か波にさらわれ、あわてて外套も着ずに駆けつけたドナルドも海に流されたのだろうという結論にするしかなかった。
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ところがこれには異論がいくつもある。一番の謎は12月の12日から15日にこのエリアでの嵐は記録されていない。それどころか、隣のセント・ルイス島からもエラム・モール島がよく見えていて、これは天候が悪かったらたちまち視界から消えているはずである。たとえ嵐でも、まだ新しいこの燈台の居住エリアは充分に安全で、そこまで緊迫して神に祈るほどのことは無いはずである。このエリアに大嵐が来たのは17日のことである。ところがその前日で日誌は終わっている、、、、、

亡くなった人たちの怨念、呪い、時折現れるぼやけた姿や声、、、かなりの恐怖感を呼び起こすお話だ。芝居は灯台での3人の役者が事件を捜査する警察官の3人も場面の入れ替わりで演じている。忽然と姿を消した3人の調査と、当の3人の様子が交互に場面転換されていく。長年の孤独な生活に自分を抑えて黙々と仕事に従事するジェイムス、やりきれなさや束縛感をお酒を飲むことで紛らすドナルド、新鮮な目で状況を見渡し、それでもだんだんと暗く不気味な心情に引きづられていくトーマス、、、嵐の中で3人が見た姿、追いかけた声、そしてその後の「誰もいなくなった」静寂、、、

実際の事件の詳細を芝居を見た後になってじっくりと読んで、さらにじわじわと怖くなってしまった。本当のミステリー。120年経った今でも真実はわからない。でも、それ以降の灯台管理の人たちが不思議な音や声を聞いた、、という話は今でも残っているそうだ。

3人で6人を演じるという小ぶりながらも巧みな本と演出で、自分から1−2歩のところに役者がいる親近感からくる恐怖感の煽り。演じている側の恐怖が肌で感じられる空間を活かした作りになっていて楽しめた。最初の部分だけ、スコッツのアクセントがあまりにも強くて集中したけれど、耳慣れるとすぐに入ってくるのがスコティッシュアクセント。クオリティーの高い舞台だった。

今年はまたもっと芝居が観たい!


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