見つけもの @ そこかしこ

ちょっと見つけて嬉しい事、そこら辺にあって感動したもの、大好きなもの、沢山あるよね。

February 2018


不条理劇」と言う分野にサミュエル•ベケットの「ゴドーを待ちながら」やハロルド•ピンターの作品がよくあげられる。日本では別役実さんなんかも似た作風のものを描いていた。(芝居を始めた頃に別役実氏の芝居を観て、一緒に観た仲間と延々と話し合ったことがある)
今年初シアターはThe Birthday Party、ハロルド•ピンターの作品。ピンター氏の本は、理論的に筋が通っていようがいまいが、感情を揺さぶって強引に展開していく。時として「何故なのか」「誰なのか」「本当なのか嘘なのか」解らないままに怒ったり怯えたりする状況が繰り広げられる

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海辺の少し古びた感じのB&B(民宿)のような家。経営しているのは主人のピーティーとメグの初老夫婦。でも泊り客は1年程前にふらりとやってきて以来居ついている、スタンリーだけだ。スタンリーは30代後半くらいか、、? メグとの話の中で、昔はピアニストとしてあちこち演奏して回っていたらしい事がわかる。なんとなく半分息子のようなスタンリーに対して、メグはランドレディーというよりは、母親、あるいはもう少し親密な(?)態度で接している。

散歩から戻ったピーティーは、街で会った二人の男達に宿を提供する事にしたから、午後には彼らがやってくると告げる。そしてやってきた二人組のゴールドバーグとマッカーン。でも何故かこの二人の来訪を知ってからスタンリーの様子がおかしくなる
その日はスタンリーの誕生日だと言うことで、気乗りしない当人をよそに、メグやゴールドバーグ達は密かにパーティーを計画する。ところが次第にスタンリーはやってきた二人におびえ始め、パーティーが進むうちにどんどん追い詰められていき、遂には精神的に壊れてしまう•••••
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何故この二人がやってきたのか、彼らは誰なのか、また、スタンリーの過去は本当なのか、何故二人は彼を責め立てて追い詰めるのか、そして最後に正気を失ったスタンリーを何処へ連れて行ったのか、、、、??? 
それらに答えはない。解らないまま芝居は進み、感情を揺さぶられ、観ているこちらも言い知れぬ恐怖感を覚えずにはいられない

1幕目は穏やかにで、セリフのトーンも間もゆっくりと進む。ピーティーとメグの会話はお互いに同じ事を繰り返したり、あらかじめ相手が何を言うかわかっているかのように聞いていなかったりする。客というよりは居候のようなスタンリーに対して、いつまでも起きてこない息子(といってもいい大人)に朝食を用意したり起こすタイミングを気にしたりしているメグの様子はもちょっとヘンだ。

パーティーになるとゴールドバーグとマッカーンに威圧感がどんどん増していく。明らかにスタンリーは彼らにおびえている。何故なのか、、、??解らないままにパーティーは進み、二人組の態度はどんどん冷酷になって行き、スタンリーはとうとう取り乱し、メグの首を締めようとまでする。ところが酔っ払っていたマグは次の朝には覚えていなくて、「楽しいパーティーだったわ〜」と夢うつつになっていて、一夜にしてスタンリーが壊れてしまった事には気づかない•••••

ハロルド•ピンター氏は2005年にノーベル文学賞を受賞した。受賞の理由は「日常の何気ない無駄話の下に潜む危機感を浮き彫りにし、人間の抑圧され、閉じられた空間に押し入っていった」というもの。
この芝居でも、ストーリーに沿って気持ちが動くのではなく、曖昧な状態でも感情を揺さぶり、精神を壊すことができるのだという事を観客に納得させてしまう

嘘か本当か、夢か現実か、何も起こっていないのに過剰反応していく人間の心理、観ているうちになんとも怖くなってくるのだ。

でも、これも特別な事ではないのだ思う。例えば、私はいつも電車の駅までバスで行くのだが、バス停から駅のホームまで、何気なく駆け足すると、なんと後ろからみんな走り出す。別にまだ時間は大丈夫なのだが、必ず、100%皆んなが走り出すのだ。訳もなく、一人が走り始めたから不安になって焦り、なんだか必死になって皆んな走るのだ。決して非現実的ではない心理。

言葉の繰り返しと間がなんとも言えない。この芝居の初演は不評で、わずか1週間ほどで終わってしまい、そのあと、ピンター氏自身の演出で再演されたという。最初の演出家をピンター氏は気に入らなかったようだ。本をどう理解するか、、、理解できない本を納得させるにはどうするか、という事なのだろう。
ダークで、でもコミカルで、よく料理された舞台だった

 


一月ももう終わってしまったとは!
先週末はちょっとロンドン市内に来る用事が続いたので、いちいち郊外の家まで遅くに帰るのは面倒なので安ホテルに3泊してしまった。(ま、これは半分口実で、また一人でふらり、、の癖が出てしまったのだが)余計な出費ではあったけれど、独りの自由には代えられない。

そうそう、前回ブログに書いたのが良くなかったのか、あれ以来仮想通貨はめっきり低迷してしまった。レンディングで結構なお小遣いになっていたBitconnectは突然サービスの停止を決め、元金が戻ってきた時には通貨価値は激減で、元金はないも同然に•••

それでも利子として1ヶ月で500ドル程出ていたので、良しとするか。もともとビットコインの値上がりで転がり込んできたお金で始めたんだから、私にとっては利子の分がまだプラスになったわけだし。でも全貯金をつぎ込んで右往左往している人もいるらしい。

さて、土曜日に仕事を終えて電車でホテルのあるOld Streetへ。金融街=Cityの一角で、日曜日に東ロンドンに出るにも、月曜日にウェストエンドで芝居を見てから帰るのも、仕事に行くのも便利。駅から3分ほどのホテルに向かっていて、いきなり目に飛び込んできたのが、いままで全く知らなかった場所だ

The Museum of Methodism & John Wesley's House 

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私が11年通った学校はキリスト教のメソジスト派で、その創始者はイギリス人のジョン•ウェスレーという人だ。(本当は英語だとウェズリーなのだけど)そのウェスレーの住んでいた家と彼が建てたチャペル。チャペルの下は小さな記念資料館になっていて、メソジストの布教の歴史やオリジナルの書物、歴代の司祭の肖像画等が展示されている。

学校にも毎日の礼拝を行うチャペルがあった。とても落ち着く場所で、私にとってはカソリックやアングリカンの重々しい空気よりも落ち着ける。チャペルの一角はウェスレー自身が執務していた部屋に、オリジナルのチャペルにあったベンチなんかもあって、かなり当時のものが残っている。
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ウェスレーのお墓はチャペルの裏手にあるのだけれど、行ってみると、ちょうど真後ろ=本当にお墓の1メートル先にある隣のビルが工事していて、「これはちょっとうるさいだろうなあ〜〜」という感じだった。私は写真に撮らなかったので、ウェブからお借りした写真、この真後ろのビルが工事していたので、どんな状況かご理解いただけるはず。
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チャペルの隣は彼が晩年の11年間を過ごした家だ。とは言っても夏の間は馬・馬車で全国を回って布教していたので、ここに住んだのはいつも冬の間だったという。家を見学するにはガイドさんについてきてもらう。でも資料館をうろうろしていると向こうから声をかけてくれて、最初は私一人だったのが、途中でチャペルにいた人達にも声をかけて6人でガイドツアーという事になった。この家は18世紀の家としてはかなり良好に当時のまま保存されていて、貴重品もあるため、普段は鍵をかけているのだそうだ。

案内してくれたのはマリアン。とても暖かくてフレンドリーな人。ウェスレーが住んでいた当時の家具や装飾品がそのまま残されていて、彼が毎朝祈りを捧げていた祈祷台にはちょっと感動した。

John Wesleyは元々アングリカン=英国国教会の司祭だった人なので、いわゆる当時の中流階級だ。この家はそういった意味でも貴重だと思うし、キリスト教に縁のない人でも十分みる価値があると思う。旅行ガイドに載っているような場所ではないから、今まで気づかなかったのだろうか。


チャペルではお昼の時間にランチタイムのリサイタルなんかも行なっているようだ。休みの日にロンドン市内に行くときはチェックしてみようかな。入場は無料で、でも寄付としてありったけの小銭を置いてきた。(本当にはお札で5ポンド、と思ったらお財布にお札がなかったので、マリアンの手の上でお財布をひっくり返して全部渡してきた)

またしても18世紀だよ。本当に18世紀後半は興味深い人が沢山いたのだ。ちなみにウェスレーは健康管理にはかなり気を使っていたようで、軽く電気を通す簡単な治療法も自分で行なっていたとか。電気はこの当時本当にまだまだ始めの貴重な発見だったのだから、ウェスレーはかなり最新のものに通じた人だったという事がわかる。87才で亡くなる数週間前に友人に当てた手紙が残っていたけれど、字もしっかりしている。この家に住んだのは1779年から亡くなる1791年までということだから、ちょうどフランスで革命が起こる前後だ。またしても18世紀後半に興味深いものを再発見

もちろんウェスレーの名前は学校時代知っていたし、大学の正門横には立派な彼の像がある。でもウェスレー自身の事はほとんど知らなかった

またふらりと寄ってみたい場所ができた。都会の宝石のような場所

 

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