見つけもの @ そこかしこ

ちょっと見つけて嬉しい事、そこら辺にあって感動したもの、大好きなもの、沢山あるよね。

November 2016

Black Fridayの謎、さらにはサイバー、、??


なんなのだろう、、、

日本でも最近はハロウィンに大騒ぎをするようになったとかで、去年は祭りの後の渋谷の惨状がニュースになっていたけれど、イギリスでここ数年に広まったのが Black Fridayというやつだ、、、 
そもそもイギリスにThanksgiving (収穫感謝祭)なんて風習は無い。これはアメリカでは毎年クリスマスくらい大切な日として、皆帰省して家族と食卓を囲んで迎えるというのは周知の事実だけれど、この後の金曜日がBlack Fridayと呼ばれる セールの日だ、なんてことはこの数年前まで皆知らなかったよ、、、


2年くらい前から何だか突然Black Fridayと呼ばれる大特価の日がやってきて、店内に押しかけた買い物客が大型テレビを取り合って殴り合いの喧嘩になったりしている映像がニュースで流れて、「なんなんだ、これは、、!?」と思ったものだ。それがなんとなく定着してきた様子。

そもそも私がイギリスに来た頃は、12月の25,26日はお店も全て閉まり、交通手段もなく、帰る家のない海外からの学生はクリスマスイヴの夕方から食料やドリンクを買い込んで誰かの所に集まり、27日までそこに篭って飲み食いする、、、というのがパターンだった。そしてクリスマスが終わると新年の馬鹿騒ぎ、1月に入ると恒例の冬のセールが始まった。そのうち少しずつ26日には開けるお店も出て来て、今では大型デパートでも26日からセールを開始するようになり、まあそれでも帰省してる人が多いなか、丸二日間こもらなくても26日には街の喧騒が感じられるようになった。

時代変われば、、というのは解るけど、本来の意味をなさずに金儲け部分だけを横取りみたいなブームってどうなのよ、、、と思う。それもだんだん欲が出たのか、最初はBlack Friday一日限りだった特価日がそのまま土日にもずれ込んで、Black Friday Weekendということになっている、、、?フライデーじゃ無いだろう!!と突っ込みたくなるのをこらえて、ともかく週末をやり過ごす。

そしたら今度は何、、??週が開けて携帯にメールに入ってるジャンクのほとんどがCyber Mondayとやらのこれまたセールらしいものの宣伝だ
サイバーマンデーって何??なんなの?

本当になんでこういう事になっていくのか、、クリスマスのプレゼントを探しながら、「あ、1月のセールになったらこれ買いたいな」と思いながら楽しみにしていたあの頃はどこへ行ったんだ??ちなみにイギリスではセール品として別に安物を仕入れて売るという事は認められていない。セールというのはあくまでも昨日まで店頭にあったものが値下げになるというのが基本だ

皮肉なことに、このブラックフライデーを嘲笑しながら見ているイギリス人の方が多いかもしれない。確かにテレビに映る、特価品の取り合いをして店中を埋め尽くしているのは、イギリスに住む外国人たちがほとんどだ。ある映像なんて、ここがイギリスとは解らないほど、見るからに移民の人たちばっかりなのがちょっと、、、、

ちなみに今年のブラックフライデー、なんとロンドン中心地では夕方の5時頃から大停電になってしまったのだった 今の時期はもう4時前には真っ暗になるイギリス。店側は仕事帰りの人達の買い物も見込んで意気揚々だったはず。それがウエストエンド全域で停電ですって!! その日の公演をキャンセルした劇場も多かったようだ。これぞ本当にBlack Fridayだわ、、、

セール商戦っていうのは最初に始めた者が勝ち、みたいなところがあるよね。そして誰かが始めたら、他もそれに対抗しないとビジネスで戦えない。でもなんだかイギリスらしく無いよ〜〜。
来年に入ると、いよいよEU抜けの交渉に入ることになるし、この先を考えるとイギリス経済に不安は大きい。確かに安売りが増えるというのは有難いことなのだけれど、ちょっと寂しい思いがするのは私だけじゃ無いはずだ

Lunch and the Bow of Ulyssesー叙情的で挑戦的な台詞


案内のe-mailでこれを目にして、観る!と即決した。 
Lunch-and-The-Bow-of-Ulysses-10352

まずはスティーヴン・バーコフの本である事、そして演出がナイジェル・ハーマン。

Steven Berkoff 氏は俳優として映画やテレビで悪役やちょっと癖のある役であちらこちらに出ているけれど、実は映像での彼を私は観た事が無い、か、出演作を観ていたとしても普通に見過ごしている、、、
私が彼を観たのは、彼が演出・ヘロデ王役だったオスカー・ワイルドの「サロメ」だった。台詞も動きもスローモーションなこのプロダクションは、それまでに何度か観た「サロメ」の中で、一番印象に残っている美しい舞台だった。冷え冷えとした空気が漂うような白い月の中で、台詞が美しく散りばめられていて、「こうなるのか!」と目を見開いて舞台に魅入っていた。その後も彼の演出、脚本の舞台をいくつか観て、鬼才=バーコフ氏のファンになった。彼の本なら面白いこと間違いない!

一方、今回の演出はNigel Harman、彼は元々子役出身でミュージカルにも出ている舞台畑の役者だ。でも彼の名前をお茶の間に広めたのは、何と言ってもBBCの看板ソープドラマ「Eastenders」だった。Eastendersを離れてからはまた舞台に戻り、Shrekというミュージカルでローレンス・オリヴィエ賞の助演男優賞を取った。ちなみにEastendersから卒業?していった俳優達が結局その後はほとんど名前も聞く事が無い中で、ここまで舞台で活躍している人はいない。その彼がバーコフ氏の本を演出するというのでとても興味が湧いた。

どんな芝居なのかは全く知らない。そして会場は劇場というより、スタジオだ。俳優が動ける距離は、幅7歩、奥行きは3歩(実際に確かめた)で、コの字に囲む客席は100席程の空間しかない。でもこういう身近な空間での芝居がまた私は好きだ。私が観た日はハロウィーンの月曜日という事もあってか、客数は40人程だったので、おそらく役者は観客一人一人の顔を意識していたと思う。

この芝居は実は2本の一幕ものが一つとして上演されている。どちらも45分程なので、これを一幕、2幕として上演していて休憩無しの90分だ。バーコフ氏は最初の「Lunch」を1983年に、2幕となる「The Bow of Ulysses」を2002年に執筆した。そして後者はまさにLunchの続編で二人の20年後を描いている。
lunch-berkoff


海辺のピアにあるベンチでランチタイムに偶然出会った男と女。男は彼女を一目見て強烈に惹かれる。なんとか話しかけようとしては怖じ気づき、でも頭には彼女を讃えるありとあらゆる形容詞が飛来して、長い独白で彼女への募る思いを吐く。やがてぎこちなくも話を始める初対面の二人。女の方は表面上は興味なさそうに男を観察しているが、やがて男が仕事でやりきれない思いを吐き出し始めると、少しずつ相手になる。出会った二人は見知らぬ同士のまま、やがて心の奥底にある闇のような思いをさらけ出し、ベンチで身体を合わせ、そして見知らぬ同士としてひと時の出会いに別れを告げる。

膨大な台詞の量だ。そして、とても叙情的でポエッティックで長い長い独白の応酬はシェイクスピアにも至適する。掛け合いではなく、当たり障りの無い会話の合間に胸の内の本音を長い台詞で描いて行く。凄い本だ。これだけの台詞で心のうち=本音を語るのは挑戦でもあり冒険だ。
lunch-and-the-bow-of-ulysses_6


一幕の終わりではそれで分かれたと思った二人が、暗転して2幕になると、同じベンチに少しくたびれたレインコートを着て座っている。前半とは逆の位置に座った二人。1幕から20年が経っている。あの日から付き合い始めてこの20年を一緒に過ごしてきた同じ男と女が、この20年でどんなに二人の関係が失望し、疲れ果て、初めから間違っていたのではないかと、これまた膨大は独白台詞の応酬で語り合う。そこに描かれているのは、ごく普通にありそうな男女の苦しくても現実的な本音だ。生々しい言葉はリアリティーがある、だからこそ「それを言っちゃあ、、、」「そこまで言うか?」と思いつつも、観ていると心の内から裸にされるような奇妙なリアリティー。

リズミカルで詩的な台詞は美しく語られる。必ずしも言葉が奇麗なのではない。聞くに堪えないような単語が並んでいても語られる様が美しい。それはそこに現実があるからなのか、、、、まさにバーコフ氏が鬼才と呼ばれる所以か。「痛い」。耳にも胸にも痛い本音が延々と語られて、どんな大人でもなにかしら「まいったなあ〜〜、、」と思わずにはいられない。こんな本があったなんて・・・・

シェイクスピア張りの本もさることながら、演じる役者の力量には唸ってしまう。決して名の知られた役者ではない。でもこれだけの台詞をあんなにもリアリスティックに、20年という歳月の二人の関係を吐き出して語れるのは凄い事だ。たまに日本に帰った時に芝居を観ると、内容よりもやっぱり役者の技術的な力の差を感じてしまう。声、滑舌、呼吸、身体の動き、感情を微妙な空気で言葉に重ねて表現する技は、何が違うのだろう、、、訓練の仕方か?美しく書かれた叙情詩を、美しく観客の耳に届ける事がどれほど至難の技か・・・

ハーマン氏の演出は、この狭い空間の中、ベンチの周りで二人が語り合って、あるいは責め合って、そして挑発し合って、最後には絶望的な関係になっている様を最小限の動きで聞かせている。目の前にいる(まさに目の前だ)私たちは、二人の言い分をじっと聴き、時に笑い、共感し、そして一緒に失望していくのだ。

こんな芝居が観られるなんて、、、この本はほとんど上演される事の無い二つの一幕ものだけれど、芝居としては小さな宝石のような輝きがある。観た後になんだか「痛い所を突かれた」ようなちょっと気まずい気持ちで席を立つカップルが多いはず。この日の40人程の観客も年齢層は40~50代で、夫婦連れがほとんどだった。私もうちの彼と一緒じゃなくてよかったかも、と密かに思ってしまったよ、、、

芝居って、こういうものなんだよなあ〜〜、、と、ちょっとまた演ってみたくなってしまう舞台だった。






 
livedoor プロフィール
Recent Comments
Archives
  • ライブドアブログ