見つけもの @ そこかしこ

ちょっと見つけて嬉しい事、そこら辺にあって感動したもの、大好きなもの、沢山あるよね。

June 2016


もうすっかりお馴染みになった新語=Brexit。(間違いなくイギリスの流行語大賞)23日に行われた国民投票で英国はEUから「離脱」するという結果がでてしまった
私もこの結果には驚いた。もちろん気持ちの上では「抜けちゃえ〜〜」とは思っていたけれど、冷静にいろんな角度で考えると「やっぱり僅差で残留が勝つかなあ〜」と思っていたので・・・

今回の結果は地域によって、そして年齢層によってはっきりと結果が分かれた。1975年のEU加盟の時から今までのイギリスを生きてきて「やっぱりこれは駄目だ」と離脱に回った高年齢層と、生まれたときからEUの一国としてのイギリスで育ってきてそれが当然と思っている若い世代。スコットランドと北アイルランドは圧倒的に残留派が主流で、イングランドではロンドンと地方でくっきりと票が分かれている

私には投票権はないので、この2ヶ月ずっと毎日投票に向けての両者のキャンペーンを見て来た。BBCのニュースでもやっぱりなんとなく残留寄りだなあ〜と感じたものだ。新聞各紙は最初は報道の平等性を保っていたものの、直前になって各紙が「私達はこっちを支持する」と表明して、これもまた面白かった。

キャンペーンのやり方としては、残留側は 地方の労働者達のレベルで説得しきれなかったのが敗北の原因だと思う。テレビでいくら立派なスーツを着た教養豊な人達が経済だの世界に於ける英国のパワーだのと言ったところで、別世界の事のようにしか感じられなかったのだろう。彼らにはこう言うべきだったのだ。
EUを出るという事は、ポンド価値が下がればホリデーに行くお金が今よりずっとかかるし、ビザだって必要になるでしょう。ヨーロッパ各地に飛んでいる格安航空会社だって路線を減らしたりあるいは無くなるかもしれません。£1-00で何でも買える激安ショップも、軒並み閉店するでしょうし、 関税がかかるようになるからフランスへ安いワインを買いに行くなんて事もできなくなります。

開票結果が出た途端に英ポンドが急落し、株式市場が大揺れになってるのを目の当たりにして、離脱に入れた事を後悔してる人がいるというのだから「あんたらは馬鹿か!?」と笑いたくなっちゃうよね。 はじめっからそう言ってたでしょうが!!毎日のニュースや討論会を観てなかったのかい!?

キャメロン首相は、10月をメドに首相の座を次の人にバトンタッチして、EUとの離脱条件の交渉に入るように 、と言っていた。彼の敗北スピーチはなかなか良かったよ。いさぎよく国民の意図を結果として受け止め、でも自分は残留を強く望んでいたのだから、EUとの離脱交渉はできない、という。当然だよね。彼が目指していたのは、EUの中で力を持つ英国だったのだ。シェンゲン協定にもユーロ通貨にも参加していなかった英国。そして残留の条件としてもっと独立した力を持てるように交渉して行きたかったのだ。それは100%今ある問題を解決はできないとしても、正しい方向性だったと思う。

ただ、やっぱり普段の生活レベルで決めた人達を納得させられなかったという事だ。生活レベル、それは移民が増えすぎて仕事が無い、あっても生活できない程の低賃金だったり、ファミリードクターに診てもらうのに2週間もアポがとれなかったり、外国人達の「英国のマナーを知らない」振る舞いだったり、移民が増えて子供を学校に入れられなかったり、、、という現実。 堪忍袋の緒が切れていた人達に、いくら世界経済を云々言っても伝わらない。

本当にEUを抜けてやっていくには、離脱交渉でどこまで英国がEUとの繋がりを保てるかが鍵だ。そのためには本当に力のあるリーダーが首相にならないとそれこそ世界の隅に追いやられた島国になってしまう。保守党は、EU投票では両派に分かれたものの、今後キャメロン氏の後任を決めるにあたっては、「こうなったらこの道でやるしかない」という思いの人達が両派から党首に立候補するようだ。一番候補は真っ先に首相に対抗して「離脱」を叫んだ前ロンドン市長の ジョンソン氏といわれているけれど、党内では「反ジョンソン派」も多数という事だからどうなるか、、、

それよりも笑っちゃうのが、この投票後に完全に崩壊状態になってる第一野党の労働党だ。EU投票では労働党はキャメロン氏の側について残留をキャンペーン。ところがこの結果になったものだから、党首のジェレミー・コービン氏に不信が集中。元々コービン氏は党首になった時点で、「まさか、、、」と思われたものだけれど、この2日間で影の内閣(Shadow Cabinet)の官僚がなんと18人も辞任してしまうという総崩れぶり。(イギリスでは第一野党はいつでも取って代われるように、正規の内閣と同様の大臣職を決めている。彼らは「影の内務相 」とか「影の金融相」と呼ばれるが党首は首相ではなく「Leader ot Opposition」と呼ばれる。 )明日にでも党首不信任を問う党内投票がありそうだ。

まあ、とにかくこの週末はほんとにBrexit に始まり、これがずっと続く、、、という事なのね。

ただ、水を差すようだけれど、実は国民投票の結果というのは本決まりではないのです。 

投票結果を議会が討議して決定して、初めて法的に有効になるわけで、極端に言えば「あまりにも僅差の結果だからこれを推したら国に混乱を招く」とかなんとかで議会がこの投票結果を無かった事にしてしまう事もできるわけです。国民投票の結果はまだ覆される可能性も残っているという事で、本当にこれからますます面白くなっていくイギリス。まあ、そうは言ってもこれを覆したりしたらそれこそ全国で暴動が起きるかも、、、やっぱりそれは無いかなあ〜〜
2-3ヶ月後にはどうなっている事やら・・・・ 


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久しぶりのミュージカルは、1997年にブロードウェイで初演され、その年のトニー賞で5部門を制覇した「Titanic」。初演時はセットも大掛かりで、同じ年に大ヒットした映画版の「タイタニック」と並んで、米国は映画・舞台とタイタニックの年だったと言える。
2013年にロンドンでの上演の際に本を修正し、セットも余分なものを削ぎ落として、人びとのストーリーがもっと見えてくるように手直しがされたそうで、今回の舞台もこのロンドン版の再演だ。

今やだれもが知っている豪華客船「タイタニック」の悲劇を、多くの人達の「叶わなかった夢」として語っている。産業革命の頂点とも言える11階立ての超豪華客船。イギリスからアメリカへ、大西洋を渡る1週間の旅に夢と希望を託した登場人物は大きく3つに分けられる。船の設計者、所有者、船長。船で働くスタッフ達。そして乗客。 さらに乗客はクラスによって一等客室から三等客室の乗客達がいる。
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この船に乗った人たちには其々の大いなる夢と希望があった。 船の設計者・所有者・船長は世界一の豪華船を実際に創り上げ、大西洋を渡る「海に浮かぶ町」を自分たちの力で運行するという栄誉を人生で最大の功績だと信じている。一等客室の富豪階級は、自分たちの身分に世界一の豪華船での船旅という新しい特権を得て、これからもこんな豪華な人生が続くものと期待している。セカンドクラスの中流階級はこの船旅でさらに上のクラスの人達と交流し、アメリカでもっと上の社会に合流できる事を夢見ている。そして3等客室の人達は、階級制度の無いアメリカで、自分の能力が認められてもっと良い暮らしができると希望に満ちてこの船に乗ったのだ。
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この本では、登場人物は実際に乗船していた人達をモデルにしていて、名前もそのまま使い、生存した人からの話をリサーチして書かれたという事だ。全てが事実という事ではなく、あくまでも実際に船に乗っていた人たちを登場させる事で、その瞬間に生きていた人達のストーリーを描いている。

確かに装置は2階に分けたデッキだけで、ごちゃごちゃした華やかさは出していない。けれどなんといっても皆知っているストーリー、映画やドキュメンタリーを見た事のある人ならその豪華な背景は容易に想像しながら観る事ができる。それよりも、目の前(舞台の上)で、この船に集まって来た人びとの沢山の大きな夢が、叶う事なく暗い海に沈んでいってしまうのは、観ていて胸が痛くなる。

この中には運良く助かった人達もいる。実際の登場人物はもっと多いのだが、それを20人の役者達が2−3役を演じていて、これが「上流階級でも下層階級でも人びとの思いに違いは無い」という印象だ。このミュージカルの作曲者、Maury Yestonはアメリカ生まれで他にも数々のヒットミュージカルを書いているが、英国系の子孫だそうだ。タイタニックの悲劇があった1912年には彼のおじいさんがロンドンのコヴェントガーデンでマーケットに店を出していたという。そんな思い入れもあって書いた作品だと語っている。彼自身の中のイギリスとアメリカを結ぶ意味でも、実際の乗客をモデルにしたというイエストン氏の哀悼の意図がみえる。

ちなみに上演されている劇場はCharing Crossというロンドンでも大きな鉄道駅の真下にあり、時折、テムズ川を渡って駅に入ってくる電車の音が聞こえる。これがまたゴ〜〜ン,ゴゴゴ〜、、、という地鳴りのような音で、特に2幕に入ってからは、沈みかけた船がきしむような不気味な効果音の役目を果たしていて妙にマッチしていた。 

どの曲も耳に心地良くて、観ている間は「いい曲だな」と思ったのだけれど、そうかといって、劇場を出てもメロディーが耳に残っているというわけでもない。壮大なメロディーというよりも、同じ船に夢を持って乗っていた人達のストーリーを語るような、心に響いてくるミュージカルだった。 


いやはや、なんだか先週末からいろんな事があるイギリスです

先週の金曜から日曜日まで、3日間に渡って繰り広げられたエリザベス女王の90歳のお祝い 。彼女の本当の誕生日は4月で、その時期にもお祝いがされ、ウィンザー城で盛大なセレブレーションイベントがあったのだが、女王には6月にもOfficial Birthdayというのがあって、今回は金曜日のSt.Paul大聖堂での礼拝に始まり、土曜日には馬車でのパレード、そして日曜日は盛大なストリートパーティーが催された
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バッキンガム宮殿から正面にまっすぐ続くThe Mall(ロンドンマラソンのゴールへの直線コースとしてもお馴染み) には女王がパロトンを勤める600ものチャリティー団体関係者を中心に1万人が参加。ロンドンだけでなく、英国各地でストリートパーティーが開かれたようで、ほぼ一日その様子をテレビ中継していた。

このストリートパーティーというのは、とってもイギリスらしい行事で、文字通り道にズラ〜〜っとテーブルを出して飲み食いするというもの
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これをいつ雨になるともしれないイギリスでやるのだから興味深い。この日曜日も朝から雨、、、The Mallでの参加者は其々にバスケットに入ったランチハンパーが配られ、この中身がなんとも豪華!!サーモンのテリーヌに始まって、4種のサンドイッチ、メインディッシュ、ミニケーキ、デザート、ポークパイ、、、とイギリス国産の材料を使ったハンパーは王室御用達のM&S(Marks & Spencer)の特別版だそうだ
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王室メンバーを人びとの視界から遮らないように、との事で傘の持ち込みは禁じられていたそうで、みんなビニールのポンチョをかぶってそれでも楽しそうなのがイギリス人なのだ、、、
幸いエリザベス女王とフィリップ殿下がオープンカーで出てきた時には雨は上がっていた!これも凄い目立つようにと配慮したらしい濃いピンクのお召し物の女王陛下は本当に嬉しそうだ。

4月から始まってまだ続く誕生日祝いを「これで12月になってもまだHappy birthdayが歌われていたらどうかしらね」とスピーチの最期にユーモアを交えておっしゃったけれど、90歳の陛下にとっては3日間続けての行事は本来なら大変だよね。丁度土曜日はフィリップ殿下の95歳の誕生日でもあった。お二人とも人の手も借りずに歩かれて、本当にこのまま100歳の誕生日をお祝いできるんじゃないかって気がしてくる。

週末にはフランスでEuro杯が始まって、こちらも連日の盛り上がり

イングランドはドロー発進だけれど、なんとさっそくロシアとイングランドのサポーターが暴動騒ぎを起こして、なんとも気が気じゃない雰囲気だ。開催国のフランスは半年前のテロからの緊張が続く中、警察や軍隊を導入して警備に当たっているというのに、これはまずいでしょう・・・イングランドVロシア戦の終わり近くでドーン!っていう音がしたのはテレビでも解ったから、一瞬「何の音!?」と思ったら、ロシアのサポーターがフレアーガンを打ち上げたらしい。その後はロシアのサポーターが柵を乗り越えてイングランド支持席に乱入して大混乱に、、、

まだ初戦だというのに、ロシアと共にイングランドチームも「これ以上暴動が起きるような事があったら失格にする」との警告を受けてしまい、監督のホジソン氏とキャプテンのルーニーが揃ってファンに「トラブルにかかわらないで」と呼びかける羽目になってしまったこんな事で選手達の集中力に水を差すなよ〜〜!!
大きな国際試合しかフットボールは観ないのだけれど、アイルランドのプレーが凄く開放的だったり、昨日のイタリアとベルギー戦では壮絶なボールの奪い合いが見られたりして、イングランドだけじゃなくて盛り上がる。開会式もとってもポップでフレンチだったし・・・

もう一つ、毎日のようにやってるのが、23日に行われるEU残留・離脱の国民投票に向けての討論番組だ
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もう毎日いろんな組み合わせで議員達がテレビに出ては大激論。スタジオには老若男女の観客が集まり、手を上げてはかなり辛辣な突っ込みを入れたり現実的な疑問をぶつけたりしているのだが、やっぱりこれがどうしても双方の言い分に決め手が無い。これはもう「どっちの道に賭けるか」という事なのだね。どっちに転んでも、政治家達が息巻いているような未来図はそのまま信用する事はできない。つまりは、「誰にも本当は良く解らない」という事なのだ

このままEUクラブに所属して部費を払いながらやっていくのか、独立した事務所で自己マネジメントしていくのか、という事だ。本来のイギリスらしいのは後者なんだけどねえ〜〜、、でも80年代以降生まれの世代には、もうそういうイギリスらしい独走的な個人主義気質は失われてしまっているようだし、、、
逆にいうと、それこそがアイデンティティーの喪失という事で、危機感を感じている人も多い、、

世論調査は互角のようで、でも今月に入ってからにわかに「離脱優勢」という声も出始めている。カメロン首相は思い切り焦っているのがモロ解りで、声を大にすればする程必死さが強調されて説得力が無くなっているようにも思える

まあ、あと10日はイギリスの夜テレビはユーロ杯とEU投票の話題で続くのだわ、、、、、

 

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