もう観ていてホントに笑えるのよ


ポスターを見ただけで”良いキャスティングだ”、、とピンと来る



プロットは、5年前に大喧嘩の果てに離婚したアマンダとエリオットが、各々再婚する事になり、お互いその新婚旅行一日目にして同じホテルの隣り合わせのバルコニーで鉢合わせしてしまうという出だし。ハネムーン初日なのに、エリオットの再婚相手のシビルはさりげなく彼の前妻=アマンダの事をいろいろ聞いてしまい、ちょっとエリオットは苛ついている。エリオットとアマンダは数年間の結婚生活の間も何度も衝突を繰り返し、大喧嘩の果てに離婚して以来5年が経っている。話題を変えようするエリオットだが、若いシビルは好奇心からついアマンダの事を聞きたがってしまうのだ。(というより、最終的には「あんな女より今は君をずっと愛しているよ」という言葉が欲しい??)次に彼等の隣の部屋のバルコニーに今度はアマンダと再婚相手のヴィクターが現れ、同じようにヴィクターが彼女に前夫のエリオットの事を聞いている。このシーンの掛け合いが前シーンの台詞とかなり被って笑える。
避けようもなく、ハネムーン初日に別れた相手と再会してしまい仰天する2人




駆け落ちしてきたパリのアパートで2人はお互いの愛情を確認し合う一方、ともすると激しい言い争いになっては2人の間で決めた合い言葉(これを言ったらすぐに2分間は沈黙して冷静になるという取り決め)でなんとか収めるという場を繰り返す。そしてとうとう収まりがつかずに取っ組み合いになった所へシビルとヴィクターが揃ってやってきて・・・

何と言っても主役2人のケミストリーが素晴らしい


長続きしているカップルは、似た者同士でほとんど喧嘩もせずに穏やかに暮らしているパターンと、性格や趣味は正反対で回りから見ると「なんで、、?」っと思われながらもお互いを補い合ってうまくやっていくタイプ、そして誰よりもお互いを理解して愛し合っているのに事ある毎にぶつかり合う、愛憎劇場タイプがある。エリオットとアマンダは最後者だ。1幕で昔の妻/夫の話をしている場面でも、2人の中に愛憎の火が燻っているのが観客に解ってしまう

かくいう我が家もしょっちゅう大喧嘩になる。これは実はとても疲れるのだ

2人とも、愛し合うからこそヘトヘトになるような激情の応酬が必要なのだ。取っ組み合って殴り合っていても憎み合っているのではない・・・・ノエル・カワードという作家は男と女のそんな微妙な関係を実に巧みに台詞にしている。ちなみにこの芝居の初演ではカワード自身がエリオットを演じている。

ラブラブかと思うと物を壊し、叩き合うような関係の2人はそれでも愛し合っている


男と女の微妙な食い違い、、、これは永遠に縮まらない。深くて暗い川がある、、とまでは言わないけど、噛み合わなくてイライラするのにやっぱり相手が必要であり、求めてしまうのだ。人間のいじらしさを巧みな台詞とテンポで書き上げたカワードの傑作

ちなみにトビー・スティーヴンスの両親は2人とも名の知られた役者だ。マギー・スミスとリチャード・スティーヴンス。そして両親2人のアマンダとエリオットで過去にこの芝居を演じている。さらに今回シビルを演じているのがトビーの実際の夫人であるアナ・ルイーズ・プロウマンだ
