見つけもの @ そこかしこ

ちょっと見つけて嬉しい事、そこら辺にあって感動したもの、大好きなもの、沢山あるよね。

April 2013


今年は春にならないまま4月も後半、もうすぐ5月になるというここ数日で、やっと気温が17~18度まで上がりはじめた。もっともこれは一日の最高気温で、朝晩は12~3度かな。それでも日中は外にいても心地よいというのは嬉しい。驚いているのは桜の木のようで、いつもなら4月頭から種類毎に少しずつ咲いて、最期はボンボンの八重桜、、というのがパターンなのに、この数日でどの桜も一気に満開になってる。焦って咲いたという感じ。咲いたと思ったら数日で散り始めてるのもあるし、山桜と八重桜が一緒に満開になってるのは華やかだ。

で、今年もやってまいりました、BGT=Britain's Got Talent!

去年からジャッジにデヴィッド・ウォーリアム氏が加わって俄然新しい風を巻き込んだBGT、今年も同様の顔ぶれです。なんだかここ2ー3年の傾向か、第一週目にファイナルに行きそうな人達が既にオンエアされちゃったかな、、、という感じがある。BGTのオーディションは1月から英国各地で行われていて、それを4月からのオンエアに向けて編集してあるわけだ。セミファイナルへ進むまでの数週間分を編集するには、もちろん毎回良かった人、ラビッシュな人、笑える人なんかをうまく散りばめて、それでいてファイナルのステージに進みそうな人達が漏れないように、という編集は大変だ・・・

結局後になって漏れがあるといけないからか、BGTの後には裏チャンネルでBritain's got more talentという続き番組がある。本番組に取り上げた人をもうちょっと深く追っていたり、番組では編集で入らなかった人達を紹介したり。でもね〜、わざわざ外国からこの番組に出るためにやって来るっていうのはどうかなあ〜〜、、?もちろんイギリスには外国人が沢山住んでいるわけだけれど、少なくともBritain's got talentなんだから、英国居住者に限定したほうがいいんじゃない?他の国でもその地で同様番組があったりするんだし・・・

第一週からレベル高かったけれど、週によって歌が多かったりダンスが集まってたりと編集が違うから、もう少し様子をみるか、、、個人的には既に目を付けた人達もいるけれど、彼等のアップはもう少ししてからにします。

最近見つけたチャイニーズのCash &carry store、日本では普通に買えるものを、こっちでは全く買っていなかった事に今更ながら気付く。まず、こっちのスーパーで売っている大根のようなもの、根元は直径7−8cmあっても先細りで太さが全く無い。そしてお茄子も日本のものより2倍以上も太くて中はぼんくら。わざわざ買って調理するという事がほとんど無かった。ところが今回の戦利品
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青々として新鮮な青梗菜は現地のスーパーで買うより半分のお値段 日本のみたいな細身のお茄子、デーンと太い大根、生の蓮根(これは現地ではまず見つからない)、青ネギもこっちのものより太くて新鮮。ついでに肉まんとナシゴレン用のペーストも購入。こんな買い物、今まで20年以上してなかったよ。嬉しい限り

やっと春らしくなったのは嬉しいけれど、去年から始めたパン作りには気温の変化は重要だ。先週焼いた最もイギリスらしいローフ、ブルーマー
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これは美味しかった。一次、二次発酵で4時間半近くかけたBloomerで、焼き上がりにはパチパチと「天使の拍手」が聞こえた逸品
これから暖かくなるとパン作りも楽になるかしら、、、


今週始めにマギー・サッチャー氏が亡くなって、にわかにイギリス中が賛否両論の嵐になっている。亡くなった事で、サッチャー政権当時の彼女を誉め讃える派忌み嫌う派に別れて世論が駆け巡っているのだ。来週には壮大なお葬式が行われる。デモやセキュリティーが気になる所だ

マーガレット・サッチャー女史は1979年に英国史上初の女性首相としてこの国の舵取りをする事になった。経済低迷、高い失業率、アイルランド問題のテロ、全国規模のストライキ、まさに「病める英国」だった時期に保守党の党首として選挙を勝ち取った。彼女の政治的な功績は今も英国で賛否両論だ。彼女の行った政治改革は確かに目に見えて大きな変化をもたらした。

内閣の初期にはあまりに経済が不振で相変わらずストライキや失業率に悩まされていて、内閣議員としての敬虔は浅かった女性党首による新政権を不安視する声も多かった。それでも82年のフォークランド紛争に勝利してからはサッチャー支持率は急上昇した。84年の保守党大会を狙ったブライトンのホテル爆破テロでは、議員や家族達に犠牲者を出しながらも本人は無事で、翌朝にはテロに対する痛烈な非難演説で拍手喝采を浴びた。私がイギリスに来たのはまさにそんなサッチャー政権のまっただ中だった

実際にイギリスに来て、テロがどんなに身近なものかを痛感させられた。大通りのゴミ箱に爆発物らしいものがあるとあっという間にエリア一帯が封鎖されてしまう。デパートの爆弾予告電話があると即非難。そんな事は暢気で平和な日本ではありえなかった。サッチャー氏は国営だった電気、ガス、水道、電話等を次々と民営化して株を解放した。所得税が大幅に引き下げられ、代わりにいわゆる消費税が大幅に15%に跳ね上がった。(今は20%)人頭税とも呼ばれる新しい税金が課せられて、この反対運動も当時は大変だった。これらの変化は私にとっても直接生活に関わってくるので、「イギリスではこんなにも政治が生活を左右するのか・・!」と焦ったくらいだ。(当時の日本は戦後からずう〜っと自民党の一党政治で、誰がいつ首相になってもね、、、という感じだった)

EUが拡大され、フランスとの間にユーロトンネルが開通し、大陸ではユーロが導入された。今となって彼女の政策で最も懸命だったのは、イギリスがユーロに加入しなかった事だろう。世界中に「鉄の女=Iron Lady」の名を知らしめ、当時の米レーガン首相と共に旧ソ連の解体に貢献した。国際的にも彼女が行った事は大きい。この国を変え、この国を良くしたいという思いは確かに間違ってはいなかったはずだ。

もちろん政治家が国民全部から支持される事はあり得ない。こっちを助ければあっちが沈み、あっちを先にすればこっちが総崩れ・・というのはどうしても避けられない。変わりつつあるイギリスだったが確かに失業率は一時は8%なんて時もあったし、元々あったクラス(階級)社会がますます顕著になり、貧富の差が大きくなったといわれた。一部の優秀なエリートだけが入学できた「大学」の幅を広げ、それまではポリテクニックと呼ばれていた高等教育機関においても大学と同じ学位が貰えるようにしたため、それまで特権階級だった大学卒業生のレベルが下がったという声も

でも政治家としても彼女のやり方が正しかったのかどうかはきっとあと2〜300年経ってから歴史が決めてくれるのだと思う。今はただ、初めて女性として様々な政策を施して11年間も首相を勤めた政治家が亡くなったと言う事なのだ。それでもサッチャリズムが引き起こした賛否両論は少なくとも来週のお葬式が済むまでは止みそうもない。いかにもイギリスらしいの現象で、今週のイギリスのヒットチャートがちょっとヘンな事になっている

反サッチャー派は彼女が亡くなってからすぐに「ざま〜みろ」といった声を張り上げて、それに賛同する人達でアンチ・サッチャームードが広がった。「Iron Lady rust in peace」なんてグラフィティが大きく新聞の一面を飾る。(私個人としてはこれは巧いから座布団一枚!?)それに対して「死者鞭打つなんて英国人の恥だ」という声があがり、今度は彼女の貢献を讃える人達が反論。それがとうとうヒットチャートにまで及んでしまった。

前にも書いたけれど、イギリスの面白い所は人々が遠慮なく声を挙げるという事。そしてそれに賛同/反対する人達がどんどん付いて行く。今回は反サッチャー派が昔の映画「オズの魔法使い」で東の悪い魔女が死んだ後、マンチキン達がそれを喜び合う「Ding Dong The witch is dead=鐘をならせ、悪い魔女は死んだ」という歌を、チャートの1位にしようぜ!と呼びかけ運動を開始したのだ。あっという間に話は伝わり、あれよあれよと言う間にダウンロード数の1位になってしまった。この分では日曜日に集計されるオフィシャルチャートでも上位に入ってしまいそうな気配なのだ。そして保守派もこれに対抗して、昔のパンクソング「I'm in love with Margaret Thatcher」をチャートに入れようと呼びかけて、こちらのダウンロード数も急上昇という状態

来週のお葬式はサッチャー派、反サッチャー派、ニュートラル派に別れて見守る事になりそうだ。国葬ではないけれど、ダイアナ妃やエリザベス皇太后と同等の儀式的なものになるようで、プロテストは必須だ。彼女はウェストミンスターに葬られるそう。初の女性首相として、歴代の著名人と共に英国の歴史に残る人物として眠る事になる。



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去年からチケットを取ってあった「Peter and Alice」。ジュディ・デンチ(Judi Dench)とベン・ウィショウ(Ben Wishaw)という世代を越えた実力派コンビとあって楽しみにしていた。実は、脚本のジョン・ローガン氏とこの二人は007シリーズの最新作ーSkyfallでも組んでいたようで、早く観なくては・・・と思う次第

世界的に不滅とも言える児童文学の定番、アリスとピーター・パンには両方ともモデルがいたというのはよく知られている。アリスは作者のルイス・キャロルの友人の娘、当時10歳のアリス・リッデル(結婚してからはハーグリーヴス)。ピーターのほうはジェイムス・バリーが後見人となって引き取った友人の息子達をモデルに書いたものだ。5人兄弟の少年達のうち、3男のピーターが名前の為に世間的にはピーター・パンのモデルとしてのラベルを貼られていた。この芝居は1932年のルイス・キャロルのエキシビションの際に当時80歳になっていたアリス・ハーグリーヴスと35歳で出版社を経営していたピーター・ルウェイン デイヴィスが初めて実際に会った日のひと時を、現実とファンタジーを交錯させながら描いている

実際に二人がどんな会話をしたのかは解らない。でもこの芝居の中で、ピーターは自分がピーター・パンとして事ある毎に話題にされる人生に疲れている。ピーターのモデルとはいっても実際に「ジムおじさん=バリー」が一番可愛がっていたのは弟のマイケルだったし、ピーター・パンのインスピレーションは兄のジョージに寄るところが大きかったのだという事を知っている。大人にならない=永遠の子供として夢と冒険の世界を飛び回ったピーターとは違って、大人にならなくてはならなかった自分の人生は、今や幸せや希望に溢れたものではなくなっていた。情緒不安げなやつれた顔は悲しみと痛みをにじませている。

金髪でエプロンドレスの10歳のアリスは遠い昔の陽だまりの中の思い出から生まれた姿で、実際には今や80歳になっているアリス。彼女もまた無垢な少女時代を遠くに置いて大人にならなければならなかった。編集者としてピーターはアリスに自伝に興味はないかと話し始め、そこから二人の子供時代とこれまでの残酷な人生とが交錯する。作者のキャロル(芝居では本名のチャールズ・ドジソン)とバリー、そして物語の中のピーター・パンとアリスも登場して、遠い陽だまりの中の記憶が必ずしも純粋ではなかったかもしれない事や、今の現実の残酷さをつきつける

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早くに両親を亡くして後見人のバリーに面倒を見てもらっていた少年達のうち、一番ピーター・パンらしいモデルになったジョージは一次大戦で戦死。そしてバリーの一番のお気に入りで、家を出てからも毎日のように手紙のやりとりをしていたマイケルも、大学の友人と一緒に川で溺れてしまう。(同性愛心中だったとも言われている)。自身も戦争に行ってドイツ兵を殺してしまったピーターは、それ以後も精神的に安定を欠いて酒に溺れていく。

昔、とても可愛がってくれたチャールズおじさんの事は子供時代の金色に輝く思い出としてきたアリスだったが、今になって考えると彼の自分に対する態度は大人として健全ではなかったかもしれないと思い当たる。(ルイス・キャロルはロリータ趣味と言われている)ある時から急におじさんとは疎遠になって、お母さんはチャールズおじさんからの手紙を燃やしてしまった・・・裕福な結婚をしたものの、二人の息子は戦争で亡くなり、夫の死後は家財産を維持していくのに窮してルイス・キャロルから送られた「不思議の国のアリス」の原本を売らなければならなくなった

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ファンタジーの世界から顔を出しては「嘘つき!」「ふしだら!」「酔っぱらい!」 と今の二人を責める物語の中のピーター・パンとアリス。子供への執拗な愛情という意味で、どちらもちょっと不健康なキャロルとバリー。大人になったピーターは叫ぶ
子供時代が楽しいのは、大人になってから辛い人生の折々に思い出せるようになんだ
大人にならない子供なんていないんだよ。それができるのは大人になる前に死ぬっていう事さ!

ファンタジー童話のモデルと言われ続けた二人の人生も、違った形で幕を閉じる。二人が会ったというエキシビションから2年後、アリス・ハーグリーヴスは就寝中に眠ったまま静かに息を引き取り、ピーター・ルウェイン デイヴィスは1960年にロンドンの地下鉄に飛び来んで自殺してしまう・・・・

脚本のローガン氏は舞台劇だけでなく、映画のグラディエイターや、ヒューゴラルゴスウィニー・トッド等の脚本も手がけている。この舞台は新作でこれがプレミア公演だけれど、これも映画化できそうな作りで台詞のセンスもすごく良い。主役二人の魅力は言うに及ばず。ジュディ・デンチは舞台で観たのは2度目だけれど、やっぱり台詞一つ、表情一つで空気を変えてしまう力がある。ベンは23歳の時に演じたハムレットで一躍「若手実力派」として注目されてからもう9年も経っちゃったのね・・・身体は細いのに凛とした声で、繊細な演技が素晴らしい

人生はファンタジーではないけれど、子供時代の楽しい思い出を辛い時の糧にするなら、子供時代が不幸だった人は何を思い出せばいいのだろう、、、? ピーター・パンもアリスも、大人が必死で創り上げた妄想に過ぎないのかもしれない・・・。そんな事を考えながら駆け抜けるような1時間半だった。




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