こんな雪の日だったんですが、日曜マチネに行って来たMerrily We Roll Along
なんだが今年はミュージカルな年明けだな〜〜、この数年ミュージカルは滅多に観なくなったというのに・・・元々はミュージカル大好きだったし、劇団でもやってたし、イギリスに来た初めの頃は英語がよく解らなかったせいもあって、普通の芝居よりもミュージカルを中心に観ていた。なんでだろう、年と共にだろうか、最近は商業用のミュージカルよりも芝居劇のほうが観たい。言葉と身体で表現する役者の演技が観たいんだ。もちろん自分が歌うのも踊るのも今でも大好きだけど。
一昔、いやもう二昔くらい前と言った方がいいか、古き良き時代のブロードウェイミュージカルといえば、歌とダンスが華やかで「これぞエンターテイメント!」っといった勢いがあった。昔のミュージカルスターといえば踊れる人だった。歌と演技ももちろん必須なのだけれど、3要素のうちではダンサーとしての評価が一番多くの割合を占めていたよね。ミュージカルをやるには踊れなきゃ話にならなかったのだ。それを覆して踊れなくても歌える人がミュージカルスターになるという形態を確立したのが、70年代以降のロイド・ウェバー氏を初めとするオペラ形式のミュージカルの数々だ。
今回は久しぶりになんだか日常的でサラッとしたミュージカルを観た気がする。つまり、レ・ミゼラブルのような壮大なドラマというでもなく、あくまでも舞台の上の世界というでもなく、もっとシンプルで身近で誰の人生にでもありそうな話という意味だ。Merrily We Roll Alongというこのミュージカルの事は知らなかった。でもソーンダイム氏(Stephen Sondheim)の作品と言う事で観たいと思って数カ月前にチケットを取っておいた。
舞台は1976年、フランク(フランクリン)は有名な映画プロデューサーで作曲家でもある。最新映画の成功を祝ってアパートに関係者一同を集めてのパーティーに興じている。華やかでフラムボヤントなパーティーで、一人アルコール依存症で女性舞台評論家のメアリーはフランクを取り巻く「関係者」達を批判し、くだを巻いて回りの人達をしらけさせている。彼女はフランクとは20年来の友人/仲間であり、彼が心底音楽を愛して作曲家になろうとしていたのに、次第に音楽よりも成功する事にばかり欲を出して、一見華やかでも初心とはズレてしまった今の状況を受け入れ難く思っているのだ。酔っぱらってパーティーから追い払われたメアリーだったが、彼女の言葉にフランクは真実の痛みを感じている。結局パーティーは散々な終わりになってしまう。彼の妻で、元スター女優だったグッシーは、今回の映画で新人として抜擢された若手女優(フランクにちょっかいを出している)につかみかかって怪我をさせ、フランクに別れを切り出すのだ。
ストーリーはどんどん遡って行く。フランクには長年の共作者=チャーリーがいた。チャーリーとフランクのコンビでショウを作り、メアリーはその劇評を書いては宣伝し、3人はいつもコンビで夢を追って次々とミュージカルを作る。ところがだんだんフランクは音楽よりも「成功」というものに捕われて、チャーリーとの方向性がズレはじめる。数年前、二人はラジオのインタビュー中に大喧嘩となりコンビは解消となってしまったのだ。
フランクの最初の妻は彼等の初期のショウでオーディションにきたエリザベス=ベスだ。すぐに恋に落ちて結婚する二人。だがフランクは彼等のショウのプロデューサーの妻でスター女優でもあるグッシーとやがて関係を持ってしまう。ベスと別れたフランクはやがて同じく離婚したグッシーと再婚する・・・この遡って行く過程の時間の中で、メアリーは元々はお酒を飲まなかったのだという事も解る。結婚する初々しい二人が歌う歌と、泣きながら別れて行く時にベスが歌う曲が同じだというのも悲しい。
成功したように見える人生半ばに始まったストーリーは場面毎に時間が戻って行き、実はその間に手に入れたもの、無くしたもの、生きて行く上での真実と嘘が走馬灯のように現れる。最期の場面は3人が初めて同じアパートの屋上で世界初の人工衛星=スプートニクを観た朝。フランクとチャーリーは音楽で成功したいと夢溢れ、メアリーは作家になりたいとあれこれ書き貯めて未来の道を探している。フランクは言う、「音楽の道で行きて行けないくらいなら死んだほうがマシだ」若い彼等にとってはどんな事も可能なこれからの人生が待っているのだ。
平凡なストーリーには現実味がある分説得力がある。そして役者達も素晴らしい。前にも何度も書いたけれど、ソーンダイム氏の曲はそれは難しいのだ。役者達の歌唱力は抜群で、客席180程のこのスタジオスタイルの空間一杯にエネルギーが満ちている。このMenier Chocolate Factoryは、前回は「ピピン」を観た所で、昔の工場を改造してスタジオ空間にした小劇場だ。この劇場のプロデューサーは女性なのだけれど、ウエストエンドに移行したヒット作もいくつもあるし、Donmar Warehouse, Trafalgar Studio, Hampstead Theatre等と並んで私はお気に入りの場所だ。
この芝居の初演は81年だったそうで、ニューヨークでの初演はあまり評判が良く無かったらしい。2ヶ月近いプレビューの末に幕を明けたものの、たったの16日でクローズしてしまったそうだ。ロンドンでは2000年にDonmar Warehouseで上演され、その年のベストミュージカルだったそうだけど、はて、、記憶にないなあ〜〜 あの頃はウェストエンドもかなり下火な時期だったし・・?確かに最近のミュージカルと比べると、ちょっとスタイルが古く感じる。でもそうだよね、ミュージカルってこんな感じだったよね、、、って思うような懐かしさもある。
誰の人生でも振り返るとちょっと心が痛くなるようなそんなストーリーにソーンダイム氏の曲がスルッと入り込んで、それがさっき書いたサラッとしたミュージカル、という印象なのだ。でも役者達のレベルは相変わらず高いよね。小さい空間でのミュージカルは大舞台のショウとは全く違うエネルギーがある。これが楽しくてわざわざ小空間の芝居を選んじゃうのよ・・・・確かにこの芝居は大舞台じゃないほうが合ってるんだろう。演出はミュージカル女優として定評のあるマリア・フリードマンの初演出。演出家としても新たな評価を受ける事間違い無し。雪の中、バスで2時間近くかけて行ったけど、こんな日曜日の過ごし方もいいんだよね。
なんだが今年はミュージカルな年明けだな〜〜、この数年ミュージカルは滅多に観なくなったというのに・・・元々はミュージカル大好きだったし、劇団でもやってたし、イギリスに来た初めの頃は英語がよく解らなかったせいもあって、普通の芝居よりもミュージカルを中心に観ていた。なんでだろう、年と共にだろうか、最近は商業用のミュージカルよりも芝居劇のほうが観たい。言葉と身体で表現する役者の演技が観たいんだ。もちろん自分が歌うのも踊るのも今でも大好きだけど。
一昔、いやもう二昔くらい前と言った方がいいか、古き良き時代のブロードウェイミュージカルといえば、歌とダンスが華やかで「これぞエンターテイメント!」っといった勢いがあった。昔のミュージカルスターといえば踊れる人だった。歌と演技ももちろん必須なのだけれど、3要素のうちではダンサーとしての評価が一番多くの割合を占めていたよね。ミュージカルをやるには踊れなきゃ話にならなかったのだ。それを覆して踊れなくても歌える人がミュージカルスターになるという形態を確立したのが、70年代以降のロイド・ウェバー氏を初めとするオペラ形式のミュージカルの数々だ。
今回は久しぶりになんだか日常的でサラッとしたミュージカルを観た気がする。つまり、レ・ミゼラブルのような壮大なドラマというでもなく、あくまでも舞台の上の世界というでもなく、もっとシンプルで身近で誰の人生にでもありそうな話という意味だ。Merrily We Roll Alongというこのミュージカルの事は知らなかった。でもソーンダイム氏(Stephen Sondheim)の作品と言う事で観たいと思って数カ月前にチケットを取っておいた。
舞台は1976年、フランク(フランクリン)は有名な映画プロデューサーで作曲家でもある。最新映画の成功を祝ってアパートに関係者一同を集めてのパーティーに興じている。華やかでフラムボヤントなパーティーで、一人アルコール依存症で女性舞台評論家のメアリーはフランクを取り巻く「関係者」達を批判し、くだを巻いて回りの人達をしらけさせている。彼女はフランクとは20年来の友人/仲間であり、彼が心底音楽を愛して作曲家になろうとしていたのに、次第に音楽よりも成功する事にばかり欲を出して、一見華やかでも初心とはズレてしまった今の状況を受け入れ難く思っているのだ。酔っぱらってパーティーから追い払われたメアリーだったが、彼女の言葉にフランクは真実の痛みを感じている。結局パーティーは散々な終わりになってしまう。彼の妻で、元スター女優だったグッシーは、今回の映画で新人として抜擢された若手女優(フランクにちょっかいを出している)につかみかかって怪我をさせ、フランクに別れを切り出すのだ。
ストーリーはどんどん遡って行く。フランクには長年の共作者=チャーリーがいた。チャーリーとフランクのコンビでショウを作り、メアリーはその劇評を書いては宣伝し、3人はいつもコンビで夢を追って次々とミュージカルを作る。ところがだんだんフランクは音楽よりも「成功」というものに捕われて、チャーリーとの方向性がズレはじめる。数年前、二人はラジオのインタビュー中に大喧嘩となりコンビは解消となってしまったのだ。
フランクの最初の妻は彼等の初期のショウでオーディションにきたエリザベス=ベスだ。すぐに恋に落ちて結婚する二人。だがフランクは彼等のショウのプロデューサーの妻でスター女優でもあるグッシーとやがて関係を持ってしまう。ベスと別れたフランクはやがて同じく離婚したグッシーと再婚する・・・この遡って行く過程の時間の中で、メアリーは元々はお酒を飲まなかったのだという事も解る。結婚する初々しい二人が歌う歌と、泣きながら別れて行く時にベスが歌う曲が同じだというのも悲しい。
成功したように見える人生半ばに始まったストーリーは場面毎に時間が戻って行き、実はその間に手に入れたもの、無くしたもの、生きて行く上での真実と嘘が走馬灯のように現れる。最期の場面は3人が初めて同じアパートの屋上で世界初の人工衛星=スプートニクを観た朝。フランクとチャーリーは音楽で成功したいと夢溢れ、メアリーは作家になりたいとあれこれ書き貯めて未来の道を探している。フランクは言う、「音楽の道で行きて行けないくらいなら死んだほうがマシだ」若い彼等にとってはどんな事も可能なこれからの人生が待っているのだ。
平凡なストーリーには現実味がある分説得力がある。そして役者達も素晴らしい。前にも何度も書いたけれど、ソーンダイム氏の曲はそれは難しいのだ。役者達の歌唱力は抜群で、客席180程のこのスタジオスタイルの空間一杯にエネルギーが満ちている。このMenier Chocolate Factoryは、前回は「ピピン」を観た所で、昔の工場を改造してスタジオ空間にした小劇場だ。この劇場のプロデューサーは女性なのだけれど、ウエストエンドに移行したヒット作もいくつもあるし、Donmar Warehouse, Trafalgar Studio, Hampstead Theatre等と並んで私はお気に入りの場所だ。
この芝居の初演は81年だったそうで、ニューヨークでの初演はあまり評判が良く無かったらしい。2ヶ月近いプレビューの末に幕を明けたものの、たったの16日でクローズしてしまったそうだ。ロンドンでは2000年にDonmar Warehouseで上演され、その年のベストミュージカルだったそうだけど、はて、、記憶にないなあ〜〜 あの頃はウェストエンドもかなり下火な時期だったし・・?確かに最近のミュージカルと比べると、ちょっとスタイルが古く感じる。でもそうだよね、ミュージカルってこんな感じだったよね、、、って思うような懐かしさもある。
誰の人生でも振り返るとちょっと心が痛くなるようなそんなストーリーにソーンダイム氏の曲がスルッと入り込んで、それがさっき書いたサラッとしたミュージカル、という印象なのだ。でも役者達のレベルは相変わらず高いよね。小さい空間でのミュージカルは大舞台のショウとは全く違うエネルギーがある。これが楽しくてわざわざ小空間の芝居を選んじゃうのよ・・・・確かにこの芝居は大舞台じゃないほうが合ってるんだろう。演出はミュージカル女優として定評のあるマリア・フリードマンの初演出。演出家としても新たな評価を受ける事間違い無し。雪の中、バスで2時間近くかけて行ったけど、こんな日曜日の過ごし方もいいんだよね。