里帰りホリデーもあっとういう間に半分が過ぎてしまった・・・! この時期になるといつも焦るのよね、、今回は前半がスローペースだったから余計に・・・
とはいっても友人達とも順調に会えてるし、「三文オペラ」も2回目に行かれたし。もう一度観たかったのは、前回の時にひとつ納得できないものがあったから・・・ それは舞台じゃなくて観客のほうだった。まあ、「三文オペラ」自体が日本人の感性にぴったりくるっていう本じゃないし、(むしろ逆?)ユーモアのセンスが備わってない国民だから難しいのは分かるけど。
エンターテイメントの部類として、英米では大きな部分を占めるのに日本には無いもの、、、それはStand-up comedyと呼ばれるコメディアンだ。舞台に一人でマイクをもって立ち、ウィットに飛んだショートストーリーや最後にパンチラインの効いたジョーク等を観客に向かって語り続ける、モノローグ形式の喋り屋だ。一番近いところでいうと落語のようなものだけど、ちょっと性質が違う。
まず落語は座って話すけど、こちらはStand-upという通り、立って舞台を歩きながらしゃべる。内容は小噺というよりも、時事を扱った痛烈な皮肉だったりちょっと下品なジョークだったりで、たとえ女王様はじめロイヤルファミリーの前であろうと放送禁止用語がバンバン飛び出すことも多々ある。人によってスタイルがあるので、もちろん聴衆の好き嫌いは分かれたりするけれど、スタンドアップ・コメディーはいつもポピュラーで、観客はドギツイジョークに手を叩いて大笑いする。その観客の反応で瞬時にアドリヴでやり取りをしたりする。
日本でお笑い番組やバラエティーを観ていても、なんだか内輪受けみたいな物が多くて主張が全くない。それはきっと主張すると嫌われるという傾向があるからだ。たまに日本に来て「ちょっとくだらない番組でも観て笑いたいなあ」と思っても可笑しくもなんともない・・・・ まあ、テンポのよさ(ボケとツッコミ)とか掛け合いの可笑しさなんかで笑わせてくれる芸人さん達ももちろんいるけれど、「それって、何が言いたいの?」ということになると主張はまったく無い。観客との受け答えがないから、勝手にやってるように感じてしまって、こちらが聞いていてもいなくても変わらないんじゃないだろうかって思ってしまう。
つまり何が言いたいかというと、「三文オペラ」を観たときに、客席の反応のほうに戸惑った。客席にリラックスした空気があんまり感じられない事のほうに。開演前からして場内が静かだし・・・いつもなら(ロンドンでは)劇場に入ったときからすごくリラックスしてわくわくして、場内はいろんなおしゃべりの声でざわついていて、それが開幕と同時にス〜っと静かになって舞台と一体化していくあの感じがすごく楽しくて好きなんだけどね〜
2度目に観た28日は客席の空気がよかった。もしかしたら楽日に近かったからリピーターの人も多かったのかもしれないね。こういう時は舞台のテンションも変わってくる。もちろん演じているほうは毎回同じように必死でやっているはずだ。でもやっぱり劇場内の空気っていうのは、舞台と客席と両方で創っていくものなんだよね。
そういえばこの日は一幕でフィルチが最前列のお客さんにビッグ・イシューを突きつけたとき、その人が本当にお金を払うという展開になった。「これはあげな〜い、あとで受付でもらって」と返していたっけ。私だったら、「金城武さんが表紙のやつ」って言いたいところだけど・・・・
三文オペラだからね〜。日本では3文、原作地ドイツで3グロッシェン、イギリスで3ペンスで観られるっていう代物ですから、そんなにおしゃれな気分で見なくたって・・・って思うのよ。でも、もう一度観ることができてよかった。この上演台本や歌詞は残らないのかな、、、残念だね。三上さんの歌詞はうまくはまってたから日本語ヴァージョンとしてもっと聞きたいのに。
余談ですが、この芝居の英語題は「The Threepenny Opera」。ペニー(penny)は単数で2以上だと普通はペンス(pence)=3 penceになるのに、どうしてTreepennyなのかというと、これは3ペンスの価値があるthreepenny硬貨一枚ということ。発音も、ロンドン風に言うとスリー・ペニーと2音ではなくて、あえてカタカナで書くとするならスルペニーと1語で発音する。3ペンス硬貨=Threepenyはちょっと変わった形で可愛い。うちの彼がとっておいた昔のコイン箱で見つけた。
裏の上と下でThree, penceと書いてある。1966年のコインでエリザベス女王が若い・・・もちろん今はありません。
東京が終わって来週からは大阪公演。むしろ関西の人のほうが、良いも悪くも反応があるかもね。面白かったら笑って手をたたいて、面白くなかったらブーイングしてもいいんじゃない? ・・・・私は立ち上がって拍手してきたけど。